煌びやかなSNSの世界では、年収1,000万円以上稼いでいるようなパワーワーキングマザーがごろごろいるように感じます。仕事に家庭に子育てに、毎日奔走しながらも憧れるような生活を送っている彼女たちは、実際はどのくらいいるのでしょうか。各種データから、その実態を探ってみたいと思います。
年収1,000万円以上のワーキングマザーの数
総務省の「労働力調査」から子どもがいる夫婦の夫と妻の年収の分布をみてみましょう。
総務省の労働力調査から、「夫婦と子どもから成る世帯」と「夫婦、子どもと親から成る世帯」を合計した数値です。
妻の年収が1,000万円の世帯数は8万世帯(8万人)となっています。子どもがいる世帯全体に占める割合は約0.8%です。
ただしこのデータには、母子世帯のデータが入っていません。母子世帯の年収別のデータがないため、別の調査を参照したいと思います。
大阪市ひとり親家庭等実態調査によると、母子家庭で自身の年間就労収入が1,000万円以上の割合は0.6%となっています。平均額は 229.2 万円です。
これをもとに母子世帯(就業者)54万世帯の0.6%が年収1,000万円以上とすると3,240世帯になります。
先ほどの8万世帯と合わせて、割合を求めると約0.79%となり、結果はほとんど変わりません。
以上のことから、ワーキングマザーの中で年収1,000万円以上稼ぐワーキングマザーは全体の約0.8%ということがわかりました。
年収1,000万円以上稼ぐ女性はどのくらいいる?
上記の結果は、働いている母親(ワーキングマザー)に限定しましたが、範囲を広げて給与所得者の女性で1,000万円以上稼いでいる人の割合もみてみましょう。
女性の給与所得者で年収1,000万円以上の給与を受け取っている人の割合は1.36%です。一番割合が多いのが年収100万円超~200万円以下(20.53%)、その次が年収200万円超~300万円以下(19.63%)となっており、年収400万円以下の人が約7割です。
女性全体で見ても1,000万円以上稼ぐ人は2%にも満たないことがわかりました。
参考として、男性のグラフも見てみましょう。
男性の給与所得者で年収1,000万円以上の給与を受け取っている人の割合は8.63%です。
一番割合が多いのが年収400万円超~500万円以下(17.47%)であり、そこを頂点として山型になっていることがわかります。ただ、男性でも年収1,000万円を超える人の割合は1割に満たないということです。
年収1,000万円以上のワーママは極めて少ない
SNSでの印象とは裏腹に、現実は年収1,000万円以上稼ぐワーキングマザーは極めて少ないことがわかりました。その理由として、次のようなものが挙げられます。
1.出産・育児によるキャリアの中断
出産・育児によって、退職や時短勤務を選択する女性が多い。また、仕事を続ける場合も昇進や昇給のチャンスから外れるケースが多い。
2.高収入の職種に就いている女性が少ない
弁護士や医師、役員、管理職など高収入の職種は男性比率が高い現状がある。
3.パートナーとの役割分担が偏っている
家庭内での育児や家事の負担が女性側に偏っている現状がある。これによって仕事と育児の両立が難しくなり、女性のキャリアの中断につながる。
4.長時間労働が当たり前とされる職場環境
高収入を得るためには、長時間労働を求められる職場が未だに多く、子育て中の女性は受け入れにくい。
それぞれ独立した問題ではなく、つながっている問題だということがわかります。
年収1,000万円を実現するために必要なこと
子育て中でも年収1,000万円を実現するためには、自分たちの努力のほかに、社会も変わっていかなければなりません。
企業は、リモートワークやフレックス制の導入によって子育て中でも働きやすい環境を整えたり、女性管理職の登用を進めるなど、働き方の改革に取り組むことが求められます。また、男性の育児休暇の取得率を上げる取り組みも重要です。
待機児童ゼロや学童保育の充実など、社会制度として育児環境を整えることも女性が収入を上げるために必要です。
さらに、女性自身のマインドセットの変革もしなければならないでしょう。出産や育児を理由に「管理職はどうせ無理」と諦めずに、働き方の工夫や周囲の協力を得ながら挑戦する意識を持つことが大切です。職場にロールモデルとなる女性がいれば目標にしやすいでしょう。
職場にロールモデルがいない場合は、それこそSNSの世界で見つけられるかもしれません。仕事と育児を両立して活躍している女性を探して真似してみるのもいいと思います。