3番目に注目されたシーンは20時33分で、注目度75.5%。松前廣年(ひょうろく)が兄・松前道廣に鉄砲を向けられ、絶叫した挙げ句に失神するシーンだ。

「ぬっぺっぽうを思わせる、あの方ですかな?」「恐らくぬっぺっぽうであろう」「では…」田沼意次と三浦庄司(原田泰造)は廣年を見やり、意味不明な言葉を交わしている。2人はなにかをたくらんでいるようだ。

「ええっ!」庄司は突然大声を上げると、その場にいる全員の視線を集めることに成功した。「何だ? 何がやはりなのだ?」「あ、まことに大したことはありませんので」意次と庄司が白々しい問答を続けていると、「おお、ハハハハハハ! 何だ? 申してみよ」と、道廣が近づいてくる。標的をうまく釣れたようだ。なおも遠慮する庄司にじれた道廣は、「大したことでないのなら、申せ!」と声を荒げた。意次に促された庄司は「それがし先日、あの方を吉原でお見かけし」と廣年を指した。「あやつを? 吉原で?」驚いた道廣は弟である廣年を庭へ引きずり出し、「お前! 家老の分際で吉原で湯水のごとく、金を使って折るのか!」と、廣年を激しく糾弾し鉄砲を手にした。

こうなるといつもの展開である。「お、お家のお金には手をつけておりませぬ!」廣年は必死に弁解するが道廣には届かない。「女、女郎にそそのかされまして!」鉄砲を向けられた廣年はそう言い残し、気を失って仰向けに卒倒した。

哀れな廣年が大きな話題に

ここは、吉原通いを唐突に兄にばらされた廣年に視聴者の注目が集まったと考えられる。

廣年は有能な家老であり、藩の金で遊んでいたわけではないのだが、意次と庄司の姑息な戦法によっていきなり窮地に立たされた。SNSでは「世間知らずのボンボンをホステスと役人がはめる構図だな」「あのおっとりした性格じゃしたたかな誰袖や鬼のような道廣に振り回されても仕方ないか」「こんな兄がいたら気弱な弟にもなるのも分かるな」と、哀れな廣年が大きな話題となっている。

意次や庄司が廣年の容姿を例えた「ぬっぺっぽう」とは妖怪の一種。鳥山石燕の『画図百鬼夜行』にも描かれており、別名「ぬっぺふほふ」とも呼ばれている。顔と体の区別がなく、しわだらけの肉の塊のような姿をしており、短い手足が生えている。目や鼻、口といった顔のパーツがはっきりしないため、「のっぺらぼう」の一種と見られることもある。その肉は口にすると超人的な力を得られるという言い伝えもある。

誰袖が廣年に抜け荷を持ちかけている琥珀だが、ダイヤモンドやルビーなど鉱とは違って、古代の樹脂が数千万年~数億年の時を経て化石化したものであり、宝石の中で唯一の有機物由来であるという特徴を持っている。ヨーロッパからロシアにかけて広がるバルト海沿岸は世界の琥珀の約85%が眠る世界最大の琥珀の産地といわれている。それにしても、誰袖(福原遥)が全く関心を示さなかった廣年の絵だが、今ではどのくらいの価値があるのか非常に気になるところだ。