暴力団員、殺人犯など、それぞれ100を超える作品で悪役を演じてきたという俳優の阿部亮平と山根和馬。2019年に自分たちの意外な一面を見せたいとの思いで悪役俳優ユニット「純悪」を結成。ヘルプマークの役割を伝える動画など、強面な見た目とのギャップが話題となり、SNSフォロワーとYouTube登録者の合計は140万人を超える。さらに純悪の活動がきっかけで、現在放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に2人そろって出演を果たした。6日放送のNHK Eテレのトーク番組『超越ハピネス』(毎週金曜22:30~)に出演する2人にインタビューし、SNSが多くの人の心をつかんだ鍵をどのように感じているのか、また、メッセージ性の強い動画を投稿する思いを聞いた。
「新しかった」「変なプライドがなかったのがよかった」
――TikTokのフォロワー71.9万人、YouTubeの登録者数48.7万人と大人気ですが、多くの人の心をつかんだ鍵をどのように捉えていますか?
阿部:たぶん新しかったのだと思います。斎藤工くんと現場が一緒になった時に、「SNSでショートドラマをやったのって純悪が先駆者だよね」と言われたときに、「あ、そうか!」って気づいたんです。僕らが始めた頃のTikTokは踊っている動画ばかりで、僕らはそれをやらずにお芝居をしたというのが、見る人には新しかったというか、それで気になって見てもらえたのかなと思います。
山根:変なプライドがなかったのがよかったと思います。「芝居していればどこでも良くない?」というのを大切にしていて、TikTokでもYouTubeでも、芝居というのは自分たちがやってきたことだからと。始めた時に「お前らTikTokやってんの?」みたいな声もありましたが、「いつも通り芝居しているだけだけど」というスタンスを取れたのは大きいと思います。根本的なことさえブレなければ何でもやっていこうと。それが誰もあまりやってなかった挑戦で、自分たちは10何年か役者としてやってきたものがあったので、役者としての力を使って背伸びすることなく新しいことができた。それに尽きると思います。
――ヘルプマークの役割を伝える動画や、ポイ捨ても犯罪行為だと伝える動画など、社会に有益な動画も大きな反響を得ていますが、そういったメッセージ性の強い動画をアップしようと思ったきっかけを教えてください。
山根:僕が日頃から世間や人や物事に思うことが多いので、それを作品にしていたら、意外とみんなも同じようなこと思っているというのがわかって、味を占めたという感じです(笑)
――例えばポイ捨ての動画は、ポイ捨てが減るといいなという思いから作られたのでしょうか。
山根:別に悪い人を正したいとかではなく、みんなで1つの問題について考えたいんです。言葉でXなどでつぶやくと、トゲとなって人に届きますが、僕たちが作品にすると良い形で議論になる。「みんなヘルプマークのことをちゃんと知ろうね」って偽善者っぽく言うと響かないですが、僕たちみたいな格好の人たちが動画作品として提示することで、いい風に受け止められるということがわかったので、そのいい部分を利用して、誰も批判しないような形で作るというのを大事にしています。
――批判する形ではなく、問題を提起するということですね。
山根:「なんかこれっておかしくない?」みたいな。僕たちが2人で言い合っていれば、2人の言い合いになるので、どっちが悪いという風にはならないんです。なので、こっちの意見は阿部ちゃん、こっちの意見は僕という風に、動画の中でも世の中の両方の意見を入れるようにしていて、それは2人だからこその強みかなと。そして、動画をきっかけに第三者が意見を言い合ってくれたらいいなと思っています。
――阿部さんも世の中に問いかけたいという思いはありますか?
阿部:僕は少ないです。和馬が思っていることに賛同してやっているという感じです。
山根:子供や奥さんに関する動画など、人それぞれの立場で考えると面白いので、阿部ちゃんじゃなかったら考えつかなかった作品はけっこうあります。
――『超越ハピネス』を通じて視聴者に伝えたいこともお聞かせください。
山根:僕は物事の価値観は自分で決めるというのを大切にしていて、周囲やSNSの評価に流されず、自分が本当にいいと思うものをちゃんと自分が認めてあげるという、そこは自分で決めたらいいんじゃないかなと。なかなか難しいですけど、それを意識することによってちゃんと自分のラインを見定められるというのは、自分がいつも思っていることです。
阿部:僕は役者になった時に、人からいらないと言われるまでは続けようと思ったんです。野球をやっていた時に自分で限界を作って自分からプロになるという夢を諦めてしまって、今でもすごく後悔しているので、自分で自分の限界を作らずやってほしいなと。続けるというのはめちゃくちゃ難しいことですが、自分はこれだと思ったことを一生懸命続けられるような環境作りも大切だと思いますし、自分から諦めてほしくないなと思います。
阿部亮平(1980年3月26日生まれ、愛知県出身)と山根和馬(1984年3月6日生まれ、神奈川県出身)による悪役俳優ユニット。2004年放送のフジテレビ系ドラマ『WATER BOYS2』での共演をきっかけに意気投合。それぞれ100を超える作品で悪役を演じてきた2人が1999年に純悪を結成し、TikTokやYouTubeで悪役とのギャップを生かした動画が話題に。TikTokのフォロワーは71.9万人、Instagramは20.1万、YouTubeチャンネルの登録者数は48.7万人を誇る(2025年6月6日時点)。
NHK Eテレで毎週金曜22:30~放送。MCは岩田剛典。NHKプラスで放送後1週間の見逃し配信あり。
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