本作では戦争についてもしっかり描くそうで、やなせさんを描くには戦争は切っても切り離せないものだと中園氏は語る。

「ここは、しっかり時間をかけて描きます。反対意見もありましたが、やなせさんを描くということは戦争を描くということですから。やなせさんは激しい戦闘には巻き込まれていませんが、飢えることがどんなにつらいことかというのは、いろんな本に書き残していて、それがアンパンマンを生むのです。だから、会うたびに私に『お腹すいてない?』と聞いてくださったのだと思います。戦争は嫌だ、大嫌いだと言い続けた方なので、そこは逃げずに本当に気合を入れて書いています」

戦争をはじめ、つらい出来事もしっかりと描きつつ、それをエンターテインメントとして届ける。中園氏は「そこに一番力を入れている」と明かす。

「暢さんとやなせさんの人生には、いろんなつらい別れがあります。やなせさんは愚痴っぽかったけれど、すごく明るい方で、何度も深い悲しみを乗り越えてきたからこそ、人生には楽しい物語や音楽が必要と信じていた方だと私は思います。深い悲しみを味わわなければ、喜びも幸せもわからない。私もそんな気持ちを大切に書いています。それがやなせさんの作風であり、人生だと思います」

楽しさや明るさの部分を最も託しているのが屋村役の阿部だ。

「前半はつらいことが続きますが、それをどうやって楽しく面白く届けられるかと思って書いています。出演者の顔合わせでも、『つらいことが続きますが、毎朝元気になれるドラマにしたいので、とにかく楽しく明るくやってください』とお願いしました。阿部さんをはじめ、皆がそれに応えて楽しいドラマにしてくださっています」

そして、本作を通してやなせさんの精神そのものを多くの人に知ってもらいたいと熱い思いを語る。

「伝えたいことがいっぱいありすぎて。『なんのために生まれて なにをして生きるのか』という歌詞も伝えたいですし、戦争の果てにどうして『アンパンマン』が生まれたのかなど、やなせさんの精神全部を伝えたいです」

占い師としても活動している中園氏。『花子とアン』を執筆していた頃、自身の占いでは、運気が最も低迷する「空亡期」で、今もその時期だという。

「今月は空亡期の空亡月という、占い的には最悪のタイミングで、どん底のどん底なんですが、この時期は人のために頑張れば必ず乗り越えられる。そして、乗り越えた後には強運をつかむ人生の足腰が強くなっていると師匠に教わったので、まさに正しい空亡期を過ごしていると思っています。本当に24時間頑張って書いていますので(笑)」

やなせさんに救われ、やなせさんの詩や言葉が心の中に生きている中園氏が、全身全霊をかけてやなせさんの精神を届ける。

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