2番目に注目されたのは20時42分で、注目度73.4%。鳥山検校(市原隼人)が刀を持ち出し、お瀬以(小芝風花)と蔦重を引き離そうとするシーンだ。
鳥山検校の頭から、蔦重と話すお瀬以の明るく弾んだ声が離れない。嫉妬に駆られる鳥山検校はついにお瀬以を書庫に監禁。使いを出して蔦重を自邸に呼び出す。鳥山検校は刀を用意して、なりゆき次第ではお瀬以と蔦重を不義の罪で刺し殺すつもりだった。
鳥山検校から執拗に蔦重との関係を追及されたお瀬以は、「そう。仰せのとおりでござりんす。重三は、わっちにとって光でありんした」と、蔦重への想いを白状しつつも、同時に自分を誰よりも大事にしてくれる鳥山検校への気持ちも伝える。「けんど、この世にないのは四角の卵と女郎のまこと。信じられぬというなら、どうぞ…ほんにわっちの心の臓を奪っていきなんし!」鳥山検校を苦しめてしまうばかりの自分が許せないお瀬以は、そう叫びながら鳥山検校に抜いた刀を持たせ、その刃を自分に向けさせた。
「小芝風花さんの演技にもらい泣き」
このシーンは、小芝風花の鬼気迫る演技に視聴者が惹きつけられたと考えられる。
鳥山検校の蔦重への嫉妬心は、刃傷沙汰も辞さないところまで燃え上がっている。お瀬以への愛情が強すぎるがゆえにここまでの事態に発展した。渦中のお瀬以は自分の本心を取り繕うことなくさらけ出す。そこにいたのは、お瀬以ではなく、花魁・瀬川だった。泣きながら、蔦重と鳥山検校への想いを訴えるシーンは強く視聴者の目に焼きついた。
SNSは「小芝風花さん演じる瀬川、鳥山検校に対しての毅然とした態度、かっこよかった!」「魅力的な登場人物が多いけど、小芝風花さん演じる瀬川が1番! 登場するたびに圧倒される」「小芝風花さんの演技にもらい泣きしちゃった」といった小芝風花の演技力を絶賛する声であふれた。すでに小芝はクランクアップしているそうだ。お瀬以がどのように退場するのか、最後まで見逃せない。
不義とは、男女の道義に外れた関係を指し、密通とは、既婚・未婚を問わず、男女がひそかに通じ合うことを意味する。つまり不義密通とは、夫のある女性が他の男性と性的関係を持つことを指す。
江戸時代の不義密通は、現代の不倫よりもさらに、重い罪として扱われていた。江戸時代は家父長制が強く、家の存続が重視されたため、家の存続を脅かす重大な罪とされた。妻の不貞が発覚した場合、夫は妻と相手の男性を殺害しても罪に問われなかった。同様に娘の不貞を父親が発見した場合には相手だけではなく、娘の殺害も認められており、これは親権の侵害と侮辱行為にもあたると考えられたからだ。
しかし実際には死罪はあまりにも重すぎるため、離縁や金銭による解決が一般的だった。罰金は首代(くびしろ)と呼ばれ、江戸では約7両2分が相場だった。現代の貨幣価値になおすと約72万5千円になる。現代の不倫の慰謝料の相場が50万~300万ほどだから、かなり近い金額だ。
作中では幕府が札差の高利貸しを禁じ、そのために座頭金に手を出したという経緯が説明された。札差とは、江戸時代の武士、特に御家人や下級武士に対して、俸禄である蔵米の受け取りと換金、さらに高利貸しなどを行っていた金融業者で身分は商人。武士が給料としてもらえる米の量は変わらず、米の値段自体が下がれば、結果的に手にできる金額は減る。現代の日本も給料の額は変わらず、円そのものの価値が下がっているから同じ状況だと言える。