テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、30日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第13話「お江戸揺るがす座頭金」の視聴分析をまとめた。
意次の屋敷では田沼の一派が集結
最も注目されたのは20時29~31分で、注目度73.8%。田沼意次(渡辺謙)が率いる田沼一派に長谷川平蔵(中村隼人)が合流するシーンだ。
意次の屋敷では田沼の一派が集まり、松本秀持(吉沢悠)が検校や当道座の財についての報告を精査していた。秀持の調べによると検校はすさまじい蓄財をしており、その額はまともな方法で得られるものではなかった。続いて西の丸について、長谷川平蔵宣以の報告書を確認しようとしたところで、平蔵本人が急ぎの知らせを持ってやってきた。
平蔵の知らせとは、西の丸小姓組の森忠右衛門(日野陽仁)が逐電した恐れがあるというものだった。忠右衛門は勤勉で西の丸にも目をかけられている人物だという。意次はただちに忠右衛門の捜索を秀持に依頼すると、秀持は平蔵に助力を求め2人は即座に捜索に向かった。
後日、第十代将軍・徳川家治(眞島秀和)のもとへ、長男・徳川家基(奥智哉)が呼び出された。家基は意次が同席していることを不快に感じたが、家治は意次から家基へ進言したい儀があると告げた。渋々承諾する家基に意次は頭を下げると、意次は2人の人物を部屋へ招き入れた。その内の1人はなんと、僧形となった森忠右衛門であった。
「田沼意次の密偵っていうのが熱い」
注目された理由は、意次と平蔵という人気キャラクターの共闘に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
秀持の調査した検校の蓄えた財は想像をはるかに超える額だった。また、家督の乗っ取りというとんでもない手段で利益を得ていることが明るみに出た。さらに、家基の信任も厚い忠右衛門が、借金が原因で逐電(※逃げて行方をくらます)するという問題まで浮上。座頭金の毒牙はすでに将軍家の身近なところに迫っていた。
SNSでは、「平蔵、いい仕事したね。田沼意次の密偵っていうのが熱い」「当道座という、不可侵の領域に触れる意次。ほんとに大博打に出たな」「追いつめられている田沼派だけど、人材は優秀!」と、意次と平蔵がタッグを組んで巨大な既得権益にメスを入れる胸アツ展開にコメントが集まった。今後の2人の活躍が楽しみだ。
今回その実態がクローズアップされた盲人だが、江戸幕府の開祖・徳川家康の意向によって保護されてきた。家康が盲人を保護したのは、土屋円都や、側室・西郷局が深く関わっている。家康は幼少期に駿河・今川義元のもとで人質生活を送っていた際、円都と出会い親交を結んだ。円都は幼少時に眼病で失明している。1541(天文10)年の生まれで、1542(天文11)年生まれの家康とは同年代。のちに検校のトップである惣検校を務めた。西郷局は極度の近眼ということもあり、盲目の人々に同情し、衣服や飲食を施し生活を援助する。二代将軍・徳川秀忠と松平忠吉の生母として、徳川家の発展に尽くした。
そして当道座は幕府から盲人の生活を支えるための経済的な手段として金融業が認められていた。それが座頭金だ。幕府公認の制度であったため信頼性があり、庶民だけでなく旗本や大名など幅広い層が利用した。しかし非常に取り立てが厳しく、しかも返済期限が短く高利だった。
森忠右衛門は実在の人物。作中では座頭金に手を出してしまった様子が描かれたが、史実では、他からも金を借り多重債務に陥っていたようだ。家族とともに逐電すると、従兄弟が住職を務める唯念寺に逃れ、出家して医者に身分をあらためる。当時、医者には現代のような医師免許制度は存在せず、誰でも医師を名乗ることができたのだ。しかし、幕医・須磨良川が盗賊騒ぎを起こして捕らえられるという事件が発生し、その一味ではと疑われることを懸念して、上役だった小姓組番頭・森川俊清の元へ出頭した。その後の町奉行の捜査で逐電の理由が明らかとなり、座頭金の実態が注目された。忠右衛門は出頭後、牢でほどなく病死する。
学問に明るく、達筆でもあった忠右衛門だったが、その最期を知った人々は「学問も役に立たないものだ」とうわさしたそうだ。息子の森震太郎(永澤洋)も逐電の罪に問われ、改易の上、追放となった。いつの時代も借金は恐ろしいものだ。