大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第12回「 俄なる『明月余情』」が23日に放送され、第9回で足抜けに失敗し離れ離れになっていた小田新之助とうつせみが再会し、足抜けに成功するという展開が描かれた。新之助役の井之脇海とうつせみ役の小野花梨にインタビューし、同シーンへの思いや共演の感想を聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』小田新之助役の井之脇海(左)とうつせみ役の小野花梨

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。脚本は、『おんな城主 直虎』(17)以来、8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。

2日に放送された第9回「玉菊燈籠恋の地獄」で足抜けを試みるも失敗した新之助とうつせみ。新之助は暴行を受け、うつせみも連れ戻されて激しい折檻を受けた。あれから数年後、俄(にわか)祭りで賑わう吉原で、足抜け事件後初めて再会。祭りの喧噪に紛れて大門をくぐり、吉原から姿を消した。

『おんな城主 直虎』など森下作品の経験が豊富な井之脇は「9回までを読んで森下さんの本だなとすごく思ったのですが、12回を読んだときに、悪い意味ではなく『あれ!? 森下さんの本なのかな?』って。2人が希望の中に消えていくように描かれていたので、『これはまだ何かあるぞ!』『大丈夫かな?』と思いました」と台本を読んだときの率直な感想を明かしつつ、「純粋に『よかったな』『新之助よかったね』と思いました。きっと彼らが進んだ先は豊かな生活ではないと思いますが、一番大切な人と障壁なく一緒に暮らせるようになるってとても素敵なことだし、その時代ではたぶんあり得ないことだったと思うので、よかったなと思いました」と続けた。

そして、再会時の撮影を振り返って「数年ぶりの再会ですが、それまでも思い続けて、蔦重にうつせみの様子を聞くシーンもあって、それだけ一途に数年間思い続けていた人に祭りの中で会えた……会えないかもしれないのに会えたときの言葉にできない湧き上がる感情は、自分が感じたものを含めて丁寧に演じられたらと思いました。あれだけ人がいる中でもすぐに、見つけられるというか、気配とか第六感みたいなものが働く。そのときに湧いてくる感情を大切にしました」と語った。

小野は「うつせみはお客さんの名前を腕に彫られたり、見せしめのような罰を受けたり、花魁の中でも闇的な部分を担って演じさせていただいたと思っているのですが、あのシーンをいただいたことによって、すごくほっとしました」と第12回の台本を読んだときの心境を吐露。「私自身、うつせみの幸せを本当に心から望んでいたんだなと。そこでうつせみがしっかりと新様と再会できて、なんとなく光の先へ進めることによって、視聴者の方もほっとしてくれる人がきっとたくさんいるんだろうなと思って、それがとてもうれしかったです」と安堵の表情を見せる。

吉原から出るシーンは希望に満ちたうつせみを表現したそうで、「女郎は絶対に出られない門を新之助さんと出ていくことに対して、現実的に考えるとたくさんの恐怖とか、また見つかってしまったらどうしようとか、この先の生活どうしようとか、きっといろんな思いがあったと思いますが、監督とお話させていただいて『そういうネガティブなものは出さなくて大丈夫。幻想的であっていいし、豊かであっていいし、希望に満ちていていい』という風におっしゃっていただいて、そういう風に演じさせていただきました。そんな演出も込みでとてもうれしくて大好きなシーンです」と笑顔で話した。