お笑い芸人の鉄拳が、1月26日に放送される『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第4回「『雛形若菜』の甘い罠(わな)」で大河ドラマ初出演を果たす。パラパラ漫画で知られる鉄拳が本作で演じるのは、蔦重初期の錦絵「雛形若菜初模様」を手掛けた浮世絵師・礒田湖龍斎。鉄拳にインタビューし、本作出演の心境や浮世絵の特訓など話を聞いた。
本作は、江戸時代中期の吉原で、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波乱万丈の生涯を描く物語。横浜流星が蔦重を演じ、脚本は『おんな城主 直虎』(17)以来8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。
戦国ものが好きで大河ドラマをよく見ているという鉄拳は、本作のオファーに「こんな名誉な事はもうないだろう」と思い、出演を決意。お笑い芸人になる前に劇団東俳に入団していた時期もあり、当時の自分にとっては夢のような大河ドラマへの出演が叶った。
「俳優にもなってみたいと思っていたので、劇団東俳に合格して入ったんですけど、先生に『君は滑舌が悪いから俳優には向いてない』と言われて。その時に初めて滑舌が悪いというのがわかって、俳優には向いてないんだなと思って諦めました。あの時の先生に『大河ドラマに出るんだよ』って言いたいです(笑)」
白塗りメイクでおなじみの鉄拳だが、本作では素顔で礒田湖龍斎を演じている。劇中カットが公開されると、「鉄拳の素顔を初めて見た」という声が続出。鉄拳自身は素顔を見せることに若干抵抗はあったものの、それよりも出演したいという思いが勝ったという。
「『情熱大陸』や月9ドラマでも素顔を出していたので、特に問題はなかったです。もうおっさんだし、あまり見せたくないとは思いましたが、大河ドラマにめちゃくちゃ出たかったので、これチャンスだなと。出たい方が勝ちました」
素顔で出演する必要がある場合は、意外とすんなりOKするそうだ。
「鉄拳でいいんだったら鉄拳でいいんですけど、『素顔を出してください』って言われたら意外と出しますから(笑)。もともとは父に(芸人をやっていることを)バレないためにメイクしたんです。父がお笑い芸人が大嫌いだったので、隠すためにメイクをして始めたのがきっかけで、父にはもうバレていますし、近所の人にもみんなバレているので、問題はないです」
本作への出演は父親にも報告。「照れていましたね。ちょっと半信半疑でしたが、本当は喜んでいると思います」と反応を明かし、「僕の周りの人はみんな驚いています」と話した。
素顔での大河ドラマ出演に、SNSでは「イケメン」「かっこいい」という声も。好反響に安堵したという。
「『そこまでして出たいのか』みたいな否定的な声もあるかなと思っていましたが、それがなかったのでよかったです。皆さんけっこういいことを書いてくれていましたね。『渋い』とか。うれしくて、普段しないんですけどリプライしちゃいました(笑)」
ベテラン俳優のような雰囲気が出ているが、鉄拳自身も「渋くてベテランな感じがありましたね。自分でもびっくりしました」と自画自賛。「(撮影中は)ブルブルでしたけど」と笑った。
鉄拳の素顔はあまり知られていないため、現場では共演者にもスタッフにも鉄拳だとなかなか気づいてもらえなかったという。
「みんな半信半疑な顔をしていました。ずっと反応なくて。最初に絵を描くシーンがあって、次にセリフを言うシーンがあったんですけど、その時にセリフを言ったら笑いが起きました。『あ、鉄拳だったんだ!』『本物だ!』って、たぶんその時に初めてわかったんじゃないですかね(笑)。安心しました。声も特徴があると言われるので、声で認識したんだなと思います」