マイナビは9月13日、「2025年卒新卒採用の振り返り・インターンシップ定義改正による就職活動の変化」と題した報道関係者向けの説明会を開催した。

内々定率が8割を超える

第一部では、マイナビ キャリアリサーチラボ 主任研究員の井出翔子氏が「2025年卒新卒採用の振り返り・2026年卒の展望」と題してマイナビが独自に行った就活関係の調査結果をもとに解説した。

調査によると、2025年卒の学生の3月1日時点での内々定率は前年を大きく上回り、34.3%。また、6月時点における内々定率は現行の新卒採用スケジュールとなった2017年卒以降で初めて8割を超えた。

一方、就職サイト『マイナビ2025』における2024年3月1日時点の掲載社数は過去最高の約2万9,400社(前年比約104%)を記録。また、採用数を「増やす予定」と回答した企業は約3割となった。

また、94%の企業が5月以前に面接を開始しており採用活動が早期化している実態が明らかになった。

ただし、6月時点での採用充足率(採用予定数に対して採用が確定している割合)は、40%と前年から大きな改善は見られず、約半数の企業が今後の採用数確保に向けての感触を「予定数の確保は難しい」と回答した。

こうした状況を受け、採用活動終了時期が「想定より遅くなりそう」と回答した企業が35.5%にものぼった。

さらに、一般的に内定式が行われる10月以降も採用活動を予定している企業は増加しており、全体の過半数を占めた。

学生の「企業を選ぶポイント」を調査

一方、6月時点における25年卒の学生1人あたりの平均「内々定保有社数」は2.28社。「複数の内々定企業の中から入社企業を検討・選択する動きが定着している」(井出氏)と言う。

学生1人あたりのエントリー社数の平均は21.9社となり、3年連続で減少した。学生側の大手企業志向は53.7%(前年比4.8pt増)で、2022年卒以来3年ぶりに半数を超える結果となった。

学生の企業選択のポイントとして多かったのは、6年連続で「安定している会社(49.9%)」がトップ。次いで「給料の良い会社(23.6%)」が3年連続で増加した。

企業に対して安定性を感じるポイントでは、「福利厚生の充実」(55%)。「安心して働ける環境」(47.7%)の順で多かった。

井出氏は「25年卒の学生は、コロナ禍で入学し、その後は紛争や円安・物価高といった社会背景の中で学生生活を過ごした世代。堅実でシビアな価値観が特徴で、不安定な社会情勢の中で学生生活を過ごしてきたことが投資や副業に対しての関心の高さや、共働き志向の高さの背景として考えられる」と分析した。

就活が長期化する

売り手市場と言われる25年卒だが、31.6%の学生が先輩と比較して今年の就職活動は「厳しくなる」と回答し、前年よりも増加した。その理由として「採用選考が早期化しているから」(76.6%)が最も多かった。

実際、5月以前に面接を開始している企業が約2割を占め、8年連続で増加している。「就職活動期間が長い」と感じている学生は75.1%で前年を上回った。

2021年、経団連や大学関係団体の代表者などからなる産学協議会により、インターンシップの定義が改正され、2025年卒の学生から一定の要件を満たすことで、インターンシップ参加時の情報を採用選考に利用できるようになった。

2025年卒の学生のうち、2月時点でインターンシップ・仕事体験参加者限定の採用選考の案内を受けた参加学生は約4割。

さらに、9割を超える企業が5月以前から面接を開始しており、「長期化は企業によって面接時期に差があることが起因している。

就職活動は、十分な自己理解や企業理解がないと選択することすら難しいが、インターンシップ等のキャリア形成活動と就職活動を混同していることや、JOB型採用・コース別採用が活発化し、複線化していることも就職活動を困難にしている」と問題点を指摘した。

インターンシップに対する企業と学生の意識

第二部では、マイナビ キャリアリサーチラボ 研究員の長谷川洋介氏が「インターンシップ定義改正による就職活動の変化」と題して解説した。

前述のとおり、2025年卒からは一定の要件を満たしたインターンシッププログラムについては得られた学生の情報を利用できるようになった。

しかし、「採用広報に利用できるのは3月1日から、採用選考には6月1日からであるという定義改正の認知度がまだ浸透していない」と長谷川氏。

マイナビが行った調査では、「参加した学生の情報を企業が採用選考に用いるのは採用活動開始以降と決められている」ということを知る学生は1割程度、企業の側も36%に留まる。

長谷川氏は「"採用直結インターン"という誤解が生じ、就職活動の早期化を助長していると指摘されている。インターンシップと採用選考の接続に関心が集中した結果、インターンシップ本来の目的である"キャリア形成支援"という観点が見落とされている」と課題点を挙げた。

一方、学生側にインターンシップに参加することの位置づけを訊ねた回答では「適職を知るための機会」が24%で最も多かった。

低学年(大学1・2年次)にキャリア形成活動に参加したことがある学生は47.2%にのぼり、「将来のことを真剣に考えるようになった」「働くことに前向きになれた」「将来のために学業を頑張ろうと思えた」など、キャリア形成にプラスの影響を感じる声も多いことがわかった。

こうした調査結果を受け、「インターンシップの目的は学生の"キャリア形成"。学生の参加目的が内定を得るために参加するだけでなく、自身のキャリアの方向性を見つけるために参加する。企業の実施目的は自社の採用だけのためから人材育成の観点から学生とのよりよいマッチングのために実施するものへと変わり、入社後のミスマッチの防止や中長期的な定着・活躍につながる」とその意義を強調し、効果に期待を寄せた。