第10期叡王戦(主催:株式会社不二家)は段位別予選が進行中。9月27日(金)には八段戦の佐々木勇気八段ー千田翔太八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、角換わり腰掛け銀の研究勝負から抜け出した佐々木八段が142手で勝利。難敵を下して予選突破まであと1勝としました。
12局目のライバル対決
ともに1994年生まれで同学年の両者、これまでに11戦して千田八段の6勝5敗と戦績は拮抗しています。振り駒が行われた本局は先手となった千田八段が得意の角換わり腰掛け銀を採用、持ち時間各1時間の早指し戦らしく両者かなりのペースで指し手を進めます。先手が単騎で右桂を跳ねるのは現代では常識ともいえる仕掛けです。
盤上はこの2週間ほど前に指された藤井聡太王座―永瀬拓矢九段の王座戦をなぞるように進みます。この将棋で新聞解説を務めていた千田八段、10月から始まる竜王戦七番勝負で藤井竜王・名人に挑戦する佐々木八段のどちらも事前準備は万端、局面がこの前例を離れたのは手数にして79手目のことでした。
佐々木八段が快勝
千田八段の工夫は取られそうな銀を逃げることで駒損を回避する自然な着手。前述の実戦でも有力な手として触れられていました。手番を得た後手が桂頭に歩を打って攻め合いを求めたとき、歩成から後手の要所の金を取るといういかにも自然な千田八段の一手が結果的に佐々木八段の攻めに勢いをつけることになりました。
千田八段が成香を作って敵玉に迫ったときにじっと5筋への自陣角を打って攻防に利かせたのが大局を制する佐々木八段の決め手。手にした香を7筋に打って途切れない攻めが実現しました。終局時刻は16時30分、最後は敵玉への詰みなしを認めた千田八段が投了。正確な読みで一手勝ちを実現した佐々木八段の快勝譜となりました。
勝った佐々木八段は予選突破まであと1勝に迫っています。
水留啓(将棋情報局)