近畿日本鉄道の新型一般車両8A系が9月20日に報道公開された。10月7日にデビューし、奈良線、京都線、橿原線などで運行。老朽化した既存車両の更新を進めていく。当日配布された資料・パンフレット等をもとに、車両概要や主要諸元についてまとめた。
新型一般車両8A系は、近鉄奈良方からTc車(制御車)「ク8A1形」、M車(電動車)「モ8A2形」、T車(付随車)「サ8A3形」、Mc車(制御電動車)「モ8A4形」の4両固定編成。車両番号はTc車を「8A101」、M車を「8A201」、T車を「8A301」、Mc車を「8A401」からそれぞれ付番している。5桁ある車両番号に関して、万の位は所属線区(奈良線・京都線系統は「8」)、千の位はアルファベット順で編成両数・車両構造によりグループ分けを行う。百の位は近鉄奈良方からの順、編成番号を表す十の位と一の位は製造順に付番する。
先頭車の定員はTc車・Mc車ともに120名(ロングシート時)・110名(クロスシート時)。中間車の定員はM車・T車ともに130名(ロングシート時・クロスシート時共通)。1編成あたりの定員はロングシート時500名・クロスシート時480名と計算できる。
車体はアルミ合金製。ダブルスキン構造の押出型材を屋根・側・床に使用した構体とし、構造の簡素化を図るため、裾絞りを廃止して側構体をストレート構造とした。1両あたりの最大寸法は長さ20,720mm、幅2,800mm、高さ4,100mm(Tc車・T車)・4,150mm(M車・Mc車)。自重はTc車35.0トン、M車36.0トン、T車29.0トン、Mc車38.5トンとのこと。
車体前面は八角形をモチーフとした特徴的かつ斬新な形状に。他編成との併結を前提としており、正面中央部に貫通扉、窓下部の両端に転落防止幌を設けた。上部中央の種別・行先表示器は幅約1,350mm・高さ約190mmの大きなサイズで、フルカラーLEDで日本語・英語の固定併記とすることにより、表示を見やすくしている。上部の両端に後部標識灯(赤色)と列車種別灯(黄色)を一体化したLED灯を設置。窓下部の左右に設置した前照灯は、小型モジュール式の横長タイプLED灯を斜め配置として車体前面の八角形デザインに融合させ、視認性も考慮した。
車体側面は赤色と白色のツートンカラーで「近鉄らしさ」を残しつつ、新たな塗り分けパターンを採用。乗降扉は1両あたり片側4カ所、幅1,300mmの両引戸で左右対称の配置としている。側窓の大きさは縦940mm・横870mm。ドア間に配置した2連窓の片側と車端部のフリースペース部は固定窓、それ以外はフリーストップ式の一段下降窓を採用した。側面上部の表示器は幅約960mm・高さ約190mmのサイズで、従来の列車種別・行先など表示するほか、次駅案内や女性専用車両表示、ひらがな表示も新たに加えた。この表示器は速度60km/h以上で消灯する。
車内において、ドア間のL/C(デュアル)シートは各車16脚装備。1両すべてロングまたはクロス状態にするだけでなく、1両の中でロング・クロス・ロング(車両中央部のみクロス)またはクロス・ロング・クロス(車両中央部のみロング)といったアレンジができるパターン制御を新たに設定し、利用シーンによる使い分けを細分化できるようにした。座面幅は460mmで、従来のL/Cシートより10mm拡幅。座布団のクッションを厚くしてやわらかさを持たせ、背もたれ形状も見直すことで、座り心地が向上している。シート背面に荷物掛フックも装備した。
ベビーカー・大型荷物対応スペース「やさしば」は1両あたり2カ所、車両中央の扉付近に設置。座席は進行方向または通路向きなどどちらでも座れる形状とし、親子で一緒に座ることもできる。名称の「やさしば」は、誰でも気兼ねなく座れる「やさしさ」を共有する空間(やさしい場所)であることに加え、緑色のデザインで「芝生」とも掛け合わせた。
車端部の優先座席はロングシートだが、先頭車両のみL/Cシートの一部を優先座席として使用する。車内表示器は側扉鴨居部の4カ所に千鳥配置とし、幅約1,040mm・高さ約260mmの大型LCDディスプレイに。列車種別・行先・停車駅・乗換案内など4カ国語で表示を行うほか、画面の一部をデジタルサイネージ用の領域とするなど、1台の表示器で多彩なコンテンツに対応できるようにした。車内防犯カメラも側扉鴨居部の4カ所に千鳥配置としている。
側窓のカーテンは、フリーストップ式にロールアップ機能を付加することで操作性が向上。車両間の貫通扉は幅900mm(有効開口幅800mm)とし、強化合わせガラスによる引戸構造とした。ガラスに花びら模様をあしらい、ぶつかり防止を図るとともに、扉をより軽く開けられるようにアシストハンドルを採用している。