近畿日本鉄道は20日、新型一般車両8A系の報道関係者向け内覧会を実施した。近鉄の一般車両としては、2000年に導入された「シリーズ21」車両以来、24年ぶりの新形式となる。8A系は10月7日にデビューし、奈良線、京都線、橿原線などで運行を予定している。
同社は2022年5月の時点で、「昭和40年代に製造した車両約450両について、お客さまのご利用状況を見極めたうえで、必要分を置き換える計画」と発表していた。あらゆる人々にとって使いやすく、利用者と地球環境に優しい車両をめざし、車内防犯対策、省エネルギー化、バリアフリー対応を進めるとともに、車内の快適性向上を図るとしている。
8A系のデザインに関して、車両形状を近畿車輛、外観カラーリングをGKインダストリアルデザイン、内装関係をイチバンセンの川西康之氏が担当。従来車両と異なる新たな取組みを多数盛り込んだ新時代の一般車両であることを表現するため、車両系式の付番を新たなものとし、近鉄で初めてアルファベットを採用した。
外観はツートンカラーの近鉄らしさを踏まえ、利用者にとって身近で親しみを持ってもらえるデザインをめざした。一般車両として日常に溶け込む品位のある赤色を盛り込み、八角形の先頭形状と象徴的な造形で新しいイメージも創出している。編成先頭部の転落防止幌は、ホームから編成連結部への転落を防止するため取り付けられた。
8A系は4両編成で、1両あたり片側4ドア。車内はドア間の座席をL/Cシートとし、混雑時に乗降しやすい横並びのロングシートと、進行方向に向かって着席できるクロスシートを切り替えて運用する。利用状況や混雑度に応じて最適なシート配置を提供し、1両の中でロングシート・クロスシートを混在して配置することも可能だという。座席と乗降扉の間に大型の仕切りを設置。車端部は優先座席(ロングシート)とする。座席表布に花柄を取り入れるなど、明るく優しい印象の内装に仕上げた。
車内設備で最大の特徴といえる「やさしば」(ベビーカー・大型荷物対応スペース)は、1両あたり2カ所、車両中央の乗降扉付近に設置。ベビーカーおよびキャリーバッグ・スーツケース等の大型荷物を持った乗客が、周囲に気兼ねなく着席して過ごせるスペースとしている。キャリーバッグ・スーツケース等のキャスター1つを掛けて荷物を動きにくくするストッパーも設置した。他にもバリアフリー対応として、車いすスペース(フリースペース)を各車両の車端部に1カ所設けている。
乗降扉は高さを下げてホームとの段差を低減し、従来車両より乗降しやすい構造に。扉の上部に大型の液晶ディスプレイを設置し、停車駅や駅構内設備、列車の運行情報など多言語で表示するとともに、広告も放映する。車内防犯カメラは1両あたり4カ所、乗務員と通話できる非常通話装置は1両あたり2カ所設置。非常通話装置が作動した際、乗務員と運転指令者が車内防犯カメラの映像をリアルタイムに確認し、車内の状況を迅速に把握できるようにする。
冷房能力を向上させた空調装置の採用、乗客が個別に扉を開閉できるスイッチの設置、扉の開閉に連動した空調制御の導入、車内温度センサーの増設等により、酷暑や寒さにも対応したきめ細かな車内温度の調整を図る。深紫外線LEDで車内空気を除菌する装置も設置した。車内照明や前照灯・尾灯にLEDを採用して省エネルギー化を進めるほか、新型のVVVFインバータ制御装置を搭載し、従来車両との比較で消費電力を約45%削減するという。