テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、1日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第34話「目覚め」の視聴者分析をまとめた。

  • 『光る君へ』第34話より (C)NHK

    『光る君へ』第34話より (C)NHK

伊周、憎々しげな顔を道長に向ける

最も注目されたのは20時38分で、注目度83.1%。藤原伊周(三浦翔平)がどす黒い感情に覆われるシーンだ。

「ごほっごほっ!」「敦康様…」病に苦しむ敦康親王(渡邉櫂)の背中を、中宮・藤原彰子(見上愛)は不安そうな面持ちで懸命にさする。彰子が献身的に敦康親王の看病をしていると、1人の公卿がやってきた。「親王様。伯父上がお見舞いに参られました」藤原伊周だった。「思ったよりお元気そうで安堵いたしました。これは源為憲の著した『口遊(くちずさみ)』にございます。もう少しご回復が進みましたら、ぜひお読みください」伊周は敦康親王に見舞いの品を差し出した。

しかし、敦康親王は「要らぬ」と、強い口調で拒絶する。その態度に伊周はもちろん、彰子も驚きを隠せず目を見張った。辺りを重苦しい空気が漂う。

そこに、宮の宣旨(小林きな子)が新たな来客を告げた。「左大臣様のお越しにございます」すると、敦康親王は自ら廊下へと出て、訪れた左大臣・藤原道長(柄本佑)のもとへ駆け寄った。敦康親王の思いがけない行動に、伊周は驚がくの表情を見せる。「いかがされました?」道長に優しく声をかけられた敦康親王は、再びせき込んだ。「あっ…」道長はとっさに敦康親王の背をさすりつつ、ふところから手布を出して口に当てる。その光景を見て伊周は、憎々しげな顔を道長に向けた。

  • 『光る君へ』第34話の毎分注視データ

辛辣コメント続々「顔しかいいところないじゃん」

注目された理由は、またもや不穏な雰囲気をかもし出している伊周に視聴者の注目が集まったと考えられる。

一条天皇(塩野瑛久)のおかげで、徐々に復権を果たしている伊周だが、道長に比べるとその権力基盤には大きな差が依然として存在する。それでも、息子である藤原道雅(福崎那由他)が蔵人に任官されるなど、少しずつではあるが伊周の足元も固まりつつある。

しかし、道長に対する私怨を募らせる伊周は、以前にも増して人望が失墜しており、甥にあたる敦康親王は伊周よりも道長に懐き、実の息子・道雅からは「父上の復讐の道具にはなりませんから」と、見放されている。

相変わらず人心掌握が下手くそ過ぎる伊周に、X(Twitter)では、「伊周ってやつはいつまでたっても…」「道雅くんが伊周にどえらい反抗心を見せる気持ちも分かる」「伊周はあんなに道長を呪詛していたのに、効果はなかったの?」「伊周、コミュ障すぎる」「本当に顔しかいいところないじゃん」といった辛辣なコメントが多く寄せられた。

今回の火事騒動も黒幕は伊周っぽい描かれ方をしていたが、何をやっても空回りする伊周が、今後どのように行動をエスカレートさせていくのか、彼の悪あがきに注目だ。

一方、物語では道長と敦康親王が今のところ良好な関係を築いている。しかし、史実では彰子が敦成親王(のちの後一条天皇)を出産するとその関係も大きく変わる。皇位継承をめぐって強引なやり方を進める道長に彰子も強く反発する。道長と敦康親王、そして彰子の人間関係が今後どのように描かれるのかに注目だ。

今回、伊周が敦康親王に見舞いの品として持参した『口遊』は、花山天皇(本郷奏多)に仕えていた源為憲が970年に、藤原為光(阪田マサノブ)の子・松雄君(のちの藤原誠信)のために編さんした学習教養書だ。当時の貴族社会で身につけるべき基礎知識を、暗唱しやすい文でまとめられている。子どもたちが遊び感覚で知識を身につけられるという目的で作られた。当時広く流行し、後の「二中歴」や『拾芥抄(しゅうがいしょう)』にも大きな影響を与えている。伊周が敦康親王に期待を込めて『口遊』を用意した気持ちはよく分かるが、相手の気持ちを考慮できない伊周に明るい未来はなさそうだ。