南海電気鉄道は、2000系の内外装を装飾した「はじまりの『めでたいでんしゃ』」を7月13日から運行開始する。これに先立ち、7月11日に加太駅でお披露目会を実施した。お披露目会の後、加太駅から和歌山市駅まで試乗会も行われた。

  • 南海電鉄が2000系「はじまりの『めでたいでんしゃ』」を披露。前面のさわやかな緑色が印象的

「めでたいでんしゃ」は加太線を中心に運行する観光列車であり、現在は4列車を運行している。もともと南海電鉄と加太観光協会、磯の浦観光協会が共同で行っている「加太さかな線プロジェクト」の一環として、2016年に運行開始したのが始まりだった。

南海電鉄は「めでたいでんしゃ」の4列車を家族関係に見立てており、車内外のデザインは列車ごとに異なる。これまでの4列車はいずれも7100系からの改造車だったが、新たに登場した「はじまりの『めでたいでんしゃ』」は2000系からの改造車となる。「はじまりの『めでたいでんしゃ』」の関係性は「とお~い祖先」とのこと。

  • 「はじまりの『めでたいでんしゃ』」の外観。車体側面の塗装は「太古といまと未来を結ぶ、かけ橋」を虹色で表現。方向幕は「和歌山市-加太」となっていた

「はじまりの『めでたいでんしゃ』」になった2000系は、高野線の急勾配曲線区間を走る車両として、1990年に登場した。平坦区間は最高速度100km/hで走行し、かつ50パーミルの急勾配にも対応することから、カメラのズームにたとえて「ズームカー」と呼ばれている。もともとは高野線の専用車両だったが、後に一部車両が南海線に転属。現在、ワンマン改造を施した上で、支線区で活躍する老朽車両の置換えが進められている。

2000系を使用した「はじまりの『めでたいでんしゃ』」は2両編成。加太寄り車両は「未来への想いとSDGs」、和歌山市寄り車両は「太古の記憶」をコンセプトとしている。

  • 和歌山市寄り車両の車内。コンセプトは「太古の記憶」

「未来への想いとSDGs」がコンセプトの加太寄り車両では、廃材やダンボールなどで作られたアート作品を車内に展示している。その中でも、鉄道ファンなら中吊りに展示された石田真也氏の「沿線のみる夢」に注目したいところ。20000系「こうや」を筆頭に懐かしい昭和の南海電車の写真が並び、ダイヤグラムや種別板も見られる。

ところで、2000系は従来の「めでたいでんしゃ」に使用される7100系と異なり、VVVFインバータ制御や回生ブレーキを兼ね備えた省エネ車両とされる。南海電鉄によれば、2000系の車両性能もSDGsのコンセプトに加味されているとのことだった。

  • 「太古の記憶」の目玉はワカヤマソウリュウ。2000系の車端部にはボックスシートがある

  • 「未来への想いとSDGs」の車内

  • 「未来への想いとSDGs」では乗務員室の扉付近もレインボー ストライプだ

  • 2両とも吊り革は魚やクラゲなどの形をしている

「太古の記憶」がコンセプトの和歌山市寄り車両において、目玉は「ワカヤマソウリュウ」という新種の大型爬虫類。2006年に和歌山県内で化石が発見され、近年になって新種であることが判明した。そんな「ワカヤマソウリュウ」のイラストが車内床面に大きく描かれている。

お披露目会の後、加太駅から和歌山市駅までの試乗会にも参加した。「はじまりの『めでたいでんしゃ』」になった2000系2036編成は1995年に製造された車両。これまで7100系「めでたいでんしゃ」を中心に運行されてきた加太線の沿線に、1990年代のVVVFインバータ制御の音が鳴り響く。南海電鉄の支線区においても、車両の近代化が確実に進んでいることを強く実感した。

  • 扉もポップな雰囲気になった。石田真也氏の「沿線のみる夢」には、昭和の南海電車の写真が並んでいる

2000系「はじまりの『めでたいでんしゃ』」が運行開始する7月13日、和歌山市駅と加太駅で運行開始セレモニーが行われ、この中で同列車の名称が発表される。なお、2000系「はじめての『めでたいでんしゃ』」のダイヤは、他の「めでたいでんしゃ」と同様、南海電鉄の専用サイトで公表されるとのことだった。