首都圏の新築マンションの価格が高騰しています。中でも23区内の人気エリアのマンションは、購入時よりも大幅に価格が上がるケースがあり、投資物件として購入する人たちも多くいます。実際、買った値段よりも住宅価格が上がっていたら喜ばしい限りですが、固定資産税がどうなるかなどの気になる点もあります。そこで、住宅価格が上がった場合にデメリットがあるのか、マンションを例にして考えてみたいと思います。

マンション価格が高騰している

国土交通省が公表している「不動産価格指数 2024年2月分」によると、2010年を100とした場合に、マンションは 198.8と約2倍に価格が上昇しています。特に2020年以降の上昇は著しいといえます。

  • 不動産価格指数 2024年2月分 出所: 国土交通省「不動産価格指数 令和6年2月・第4四半期分」

現在の新築マンションの価格を不動産経済研究所が公表している「首都圏 新築分譲マンション市場動向2023年度」からみてみましょう。

  • 首都圏新築マンションの平均価格 出所: 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向2023 年度」をもとに筆者作成

首都圏の新築マンションの平均価格は7,566万円となっており、中でも東京23区は1億464万円と平均価格が1億円を超えています。一部の高額物件が平均を引き上げていると想像できますが、東京23区とそれ以外の価格の差が大きく、エリアによる住宅価格の格差が表れているといえるでしょう。

中古マンション価格も上がっている

中古マンションはどうでしょうか。東日本不動産流通機構「季報マーケットウォッチ サマリーレポート2024 年 1~3 月期」から、首都圏の中古マンションの成約・新規登録価格の推移をみてみましょう。

  • 首都圏 中古マンションの成約・新規登録価格の推移 出所: 東日本不動産流通機構「季報マーケットウォッチ サマリーレポート2024年 1~3月期」

成約価格とは、最終的に売主と買主が合意に至った取引価格のこと、新規登録価格とは、売り出し価格のことです。いずれも右肩上がりに価格が上昇していることがわかります。

一般的に、新築マンションの価格が上がると中古マンションの価格も同様に上がります。前出の不動産経済研究所の調べによると、首都圏の新築マンションの販売戸数は前期比6.4%減の 2 年連続の減少となっています。供給が減れば同エリアの中古マンションが代替として求められます。また、新築マンションの価格が高騰していれば、割安感のある中古マンションが注目され、需要が増えることで中古マンション価格も上昇します。このように基本的に新築マンション価格と中古マンション価格はリンクします。

マンション価格には立地とタイミングが特に影響します。新築マンションの価格が年々上がっていれば、中古マンションの価格も連動して上がるので、購入時よりも高く売れることがあります。中でも人気エリアの築浅物件は高値がつきやすい傾向があります。タワーマンションやブランドマンションなど、人気のマンションは新築時の価格よりも中古での売り出し価格の方が高いケースはよくあります。

住宅価格が上がった場合のデメリット

購入したマンションの価格が上がったら、単純にうれしいものですが、デメリットはないのか気になる人もいるでしょう。真っ先に思い浮かぶのは「固定資産税」でしょう。

住宅価格が上がれば固定資産税も上がる?

不動産を所有していれば、必ず固定資産税が課せられます。ここではマンションを所有していて、そのマンションの価格が上がった(査定で知ることができます)場合の固定資産税を考えてみたいと思います。

*固定資産税評価額とは
固定資産税の評価額は3年に1度見直されます。

土地(住宅地)の場合は地価公示価格の7割を目途に評価額を計算します。地価公示価格とは、国が法律に基づいて決める土地の評価額です。土地の適正な価格を判断するための目安となります。

家屋は再建築価格をもとに計算します。再建築価格とは、評価対象となる家屋と同一のものを、評価時点において、その場所に新築する場合に必要となる建築費です。この再建築価格に年数の経過に応じて生じる減価率を乗じて評価額を出します。

固定資産税評価額(課税標準)×1.4%=固定資産税

このように、地価が高い場所にあるマンション、専有面積が広いマンション、建築費が高いマンションなどは固定資産税が高くなります。そして建物は経年劣化によって評価額は下がっていくので、年数が経つほど固定資産税は安くなります。ただし、新築住宅には特例があり、木造などの一般住宅は3年間、マンションなど3階建以上で耐火構造の住宅は5年間(※)、固定資産税が1/2になります。そのため新築マンションなどは6年目に固定資産税が倍になることがあります。

※長期優良住宅の場合はさらに2年間延長されます。

ここまでを踏まえて、現在住んでいるマンションを査定してもらって、価格が1.5倍になっていた場合を考えてみましょう。ここでの価格が上昇した要因が、地価が上がったことであれば、3年に1度の評価替えによって地価公示価格が上がるので、連動して固定資産税も上がることになります。(ただし、地価が急激に上がるなど、土地の値動きそのままに固定資産税が連動すると、急激な税負担となるので、緩やかに変動していく「負担調整措置」が設けられています)

しかし、実際のマンションの価格はさまざまな要因が影響して決まります。それは物件が持つ要因だけでなく、社会や経済状況などマクロ的な要因も影響します。そのため、価格が1.5倍になったとしても、その要因は一つではないため、単純に固定資産税も1.5倍になるわけではありません。たとえば、同じマンションに同条件の部屋があって、一方はリフォーム済、もう一方はそのままだった場合、リフォーム済の部屋の方が価格は高くなりますが、固定資産税は変わりません。このように物件の取引価格と固定資産税評価額は直接的には関係していないのです。

ただし、マンション価格が上がる要因の中で、立地の要因は大きいので、大きな相関として固定資産税も上がると考えておくといいでしょう。

投資用に買われてしまうデメリットも

将来値上がりが期待できるマンションは、投資物件として人気が高くなります。人気エリアのマンション、魅力的なタワーマンションなどは円安の影響もあって外国人投資家による購入が増えています。そうなると、居住実態のない部屋が増えることにつながります。

将来値上がりすることを期待して、抽選倍率が高いマンションに申し込んで見事当選。しかし、いざ入居してみると、両隣誰も住んでいないマンションだったという話を聞くことがあります。このような状況がさらに進むと街全体がゴーストタウン化することもあります。

そこまでいかなくても、今住んでいるマンションが値上がりしていると、売却を考えたり、賃貸に出したりする人が増えるので、住民の移動が頻繁になる可能性があります。そのような結果、住み心地が悪くなる、コミュニティが作りづらいなど、そこで生活している人にとってはデメリットとなります。

人気エリアに建つマンションは、投資目的で買われる傾向があることは想定しておくといいでしょう。