京都線の新型特急車両2300系は、伝統的な「阪急電車」のイメージを継承しつつ、より安心かつ快適な移動空間を提供するため、座席指定サービス「PRiVACE」に加え、一般車両においても快適性を高めるとともに、バリアフリー設備のさらなる充実を図った。異常時の対応力や省エネルギー性能の向上もめざした車両だという。

2300系の外観はマルーンとアイボリーの車体色と直線的なデザインを継承した上で、前面の窓ガラスに曲線を取り入れ、時代の先端を行くイメージにふさわしい「疾走感」を表現。一般車両の車内はドア間に転換クロスシート、車端部にロングシートを配置したセミクロスシート仕様で、木目調の化粧板やゴールデンオリーブ色の座席といった伝統も踏襲しつつ、落ち着いた車内環境を提供する。ロングシート端部の袖仕切りに半透明の素材を使用し、開放的な空間としている。

  • 2300系の一般車両はドア間に転換クロスシート、車端部にロングシートを配置

省エネルギー性能と静音性に優れたインバータ式空調装置を採用し、花粉・細菌・ウイルスの除去機能やカビ・臭気の抑制効果を持つ空気清浄機を設置。車いすスペースは壁面の手すりを2段とし、車いす固定具を新設したほか、非常通話装置の位置を従来の連結部ドア横から乗降ドア横に変更している。先頭車両の車いすスペースが拡大され、車いす・ベビーカー利用者に加え、スーツケースなど大型の荷物を持った利用者も使いやすくなった。

車いすスペース・優先座席付近の吊り手は従来より低く設定。配色を変更し、車内の離れた場所からも車いすスペース・優先座席の場所が認識できるようにした。優先座席の中間部に握り棒も設置。一般車両にも防犯カメラを搭載し、犯罪・迷惑行為の抑止に加え、事故発生時の状況確認も行う。

  • 先頭車両の車いすスペースを拡大。壁面の手すりを2段とし、車いす固定具を新設した

  • 車いすスペース・優先座席付近の吊り手は一般座席と異なる配色に

  • 乗降ドアの上部に防犯カメラが設置されている

  • 2300系の運転台

省エネルギー性能の向上を図るため、VVVFインバータ制御装置に高効率な半導体素子を採用しており、既存車両との比較で消費電力量を約60%削減。車体側面に設置された行先表示器のLEDは、走行中に消灯することで消費電力量のさらなる低減を図る。

阪急電鉄における車両のモデルチェンジは2013年以来、11年ぶりとのこと。京都本線では現在、9300系や1300系などの車両が活躍中だが、座席指定サービス「PRiVACE」を提供する新型特急車両2300系が新たな「顔」になることは間違いない。京都本線の特急といえば、現行の9300系も含めて転換クロスシートを特徴としていたが、車内が混雑し、とくに途中駅から乗った場合は座れないことも多かった。それだけに、「どの駅からでも確実に座れる」「目的地の駅まで快適に過ごせる」サービスとなりそうな「PRiVACE」への期待は大きい。

  • 新型特急車両2300系の運転台

  • 一般車両の車内

  • 座席指定サービス「PRiVACE」の車内

  • 「PRiVACE」車両を連結した新型特急車両2300系の外観