まひろが参籠に訪れる、近江国の霊験あらたかな大本山の石山寺も登場。この寺には、紫式部が石山寺参籠中に『源氏物語』を起筆したという伝説がある。美術チームは実際に現地を取材し、さらに鎌倉期以降に描かれた『石山寺縁起絵巻』を見て、朱塗りの本堂、宿坊、巨岩、月見亭、紅葉など、そこから得られたエッセンスを取り入れて番組オリジナルの石山寺をスタジオ内に作り上げた。

山内氏は「番組が始まる前に取材で訪れましたが、本当に岩の上に建物が建っているというのを目の当たりにしました。実際にそれをそのままのスケールで表現することはできなかったのですが、岩の印象や月見亭という高台の場所を参考にして作りました」と解説。

羽鳥氏は「まずは絵巻を読み取るところから始めました。今回、いろいろと中国様式の建築を取り入れていますが、当時は格式の高いお寺が朱塗りの建築物となっていたようで、それをヒントにしつつ、石山寺の広い境内には山や谷、川といったすごく楽しめる自然の要素があるので、そういうものもセットの中に散りばめたいなと思いました。また、月見亭からのインスピレーションで、まひろが月を見て物思いにふけるとか、『蜻蛉日記』を書いた道綱の母との出会いなどもこういう風光明媚な場所でやりたいという狙いで、セットをデザインにしました」と風情ある佇まいの石山寺のコンセプトについて語った。

また、石山寺の取材時には、ある高齢の女性と出会い、とても感銘を受けたという。

「紫式部が『源氏物語』を書いたと言われる伝説のある場所で、紫式部像でそのシーンを再現した展示がされておりました。僕たちが行った時に、お参りされていた女性が居られて、その像に向かって『あなたのおかげで90年も元気でここに来られました』と声をかけていたところを拝見しました。たまたまその様子を目にして非常に感動しましたし、この方にもぜひドラマを最後まで見届けてほしいなと思いました」

物語は5月から「越前編」に突入する。まひろは、越前国司に任命された父・藤原為時(岸谷五朗)に同行し、京から越前国府(現在の福井県越前市)に移ることに。そこでまひろは、どんな出会いを果たし、道長との仲はどのように変化していくのか。吉高たちキャストの熱演とともに、スタッフ陣がこだわり抜いた美術セットにも注目したい。

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