――対局中の食事はやまがそばのわかめうどんかほそ島やのかけうどんをいつも注文されていますね。
「そうですね。対局のときは食が細くなってしまいます」
――以前の将棋世界インタビューでは、お好み焼きの話をされていました。
「お好み焼きは好きです。対局終わりにいつも食べてます」
――対局後となると、会館近くの大阪のお好み焼きですか?
「いえ、広島まで帰ってから食べてます。大阪のお好み焼きって食べたことないかも。たしか、麺が入ってないんでしたっけ?」
――やっぱりお好み焼きといえば広島ということなんですね。
「郷土の特別なものという意識もなくて、当たり前にあるものなので食べているという感じですね」
――将棋に話を戻します。初めてのタイトル戦を控えてどのような心境ですか。
「期待も不安もあります。和服を着て対局するというのも、楽しみな部分はあるんですが、イベント以外では初めてなので、どうなるのかわからないところもあります。あとは、タイトル戦の空気のようなものもわからないですし」
――五番勝負では、どういうところをみてもらいたいですか。
「序盤の工夫と、中終盤の戦いを見てほしいです」
大島の新幹線の時間が近づき、インタビューを切り上げると、囲み取材のエピソードがX(旧twitter)で大きな反響を呼んでいた(ユーザー間での表示回数は150万にも達した)。好反応を伝えると「天然だねってよく言われるんですけど、自分では認めたくないです(笑)。真面目キャラでいきたいんですよ」。
何百冊と将棋の本を読み、朝から晩までひとり将棋に打ち込む大島の真面目さは疑いようもない。まっすぐに、ひたむきに、ひとつひとつの対局を大切にしながら力を伸ばしてきた。そんな風に真面目だからこそ、巧まざるユーモアがとても魅力的に映るのだけれど。
最後に、将棋は好きですか、と尋ねると、笑って「好きです。大変だなと思うこともあるけど、好きです」と答えた。将棋界で何番目に好きだと思いますか、と意地悪な質問を重ねると、今度は少しだけ迷って、言った。
「いちばん、ですかね?」
西山朋佳女王は、公式戦で年下の女流棋士に対してこの9年半負けがない。21歳の新星は、女流棋界の序列を揺るがす存在になれるか。 第17期マイナビ女子オープン五番勝負は、4月9日、神奈川県秦野市「元湯 陣屋」で開幕する。
(将棋世界2024年5月号 「まっすぐに、ひたむきに 大島綾華の進む道」より 記・写真/會場健大)