人間の心の暗部を描くイヤミスの名手のひとり、真梨幸子原作のダーク・ミステリー『連続ドラマW 坂の上の赤い屋根』(WOWOWプライム全5話 毎週日曜 22:00~※WOWOWオンデマンドで第1話無料配信中)が、WOWOWで放送・配信中だ。

物語は、新人作家が18年前の"女子高生両親殺害事件"をモチーフにした小説の企画を、出版社の編集者に持ち込んだことから始まり、やがて登場人物たちが抱える過去など"黒い感情"の正体と事件の真実が明らかになっていく。

主人公の轟書房編集者・橋本涼を演じるのは、今からちょうど10年前にWOWOWで放送されたドラマ『埋もれる』でも主演を務め、その後も数々のドラマや映画、CMにおいて、俳優&歌手として幅広い活躍を見せている桐谷健太。橋本の役作りや本作の見どころと共に、自身の原点と10年前を踏まえた上で考える、"桐谷健太のいま"について聞いた。

『連続ドラマW 坂の上の赤い屋根』に主演している桐谷健太

桐谷健太
ヘアメイク:岩下倫之(Leinwand)スタイリング:岡井雄介

――企画書を読んでどんな印象を持たれましたか?

すごく魅力的で刺激的な企画だと感じました。自分が橋本役を生きるとどうなるのか、。すごく興味が湧きました。読んですぐマネージャーに電話して、「これやりたいね」って話をしたのを覚えています。見る人によって見え方が変わってくるストーリーとで、どこか「羅生門」や「藪の中」みたいなエッセンスも香るというか。一言に"心の闇"と言っても、人によって受け取り方は様々で。どこか懐かしい感覚というか、なかには親近感を覚える人もいると思うんです。残酷な描写もありますが、衝撃的なビジュアルで観客を惹きつけるだけではなく、そこにちゃんと心理描写や必然性があるから思わず見入ってしまうんです。

――具体的にどのように役作りをしていかれたのでしょうか?

台本から感じ取った"橋本の過去"に対する解像度を自分なりにどんどん上げていく中で、身体に染み込ませていった感じですね。橋本の本来の姿を、ある場面まで一切見せない方向性でいくか。それとも、見る人が見たらところどころ何かが引っかかる、微かな違和感を抱くかもしれないけど、気づかない人は気づかない…くらいのニュアンスで進めるか。僕は今回は後者のパターンで臨みたいなと思ったので、衣装合わせの際に監督に相談してみたところ、監督もそのプランに同意してくださって。今回はそこがカチッとハマったので、非常にやりやすかったですね。

――橋本は出版社の副編集長役ですが、職業的な意味で何か役作りをされた部分はありますか? 桐谷さんといえば、高校生の頃、ご自分の写真を表紙にして、「MEN'S NON-NO」ならぬ「KEN'S NON-NO」を作っていたという逸話も有名ですが(笑)。

一口に編集者といっても、いろんな方がいらっしゃるじゃないですか。 それより僕は「なぜ橋本は出版社という世界に入ることを選んだのか?」というところに着目して、台本から読みとれる彼の過去の出来事や、あったであろうことを想像しながら、自分なりに掘り下げていった感じですね。

――なるほど。クセの強いキャラクターが次々登場するのも、本作ならではですよね。

橋本からすると、日常生活で関わっていく人たちを、生身の人間としてではなく、ある種、小説の中の登場人物として見ているような気が僕はしたんです。「自分の人生を1つの物語にしてしまおう」といった思いが、彼の心の奥底にはあったのかもしれないな、と。もちろん人生において何が起きるかは誰であっても想定できないですが、きっと何が起こったとしても、彼はそれに順応していける人間だったんだろうなという印象があります。

――桐谷さんは「イヤミス」と呼ばれる本作の魅力をどんなところに感じましたか?

人間だけが、何事に対しても、「良い悪い」を決めてしまうところがある気がするんです。「心の闇」=「あってはいけないもの」といったように。でもこの作品の中では、そこを決めつけない。知らないうちに巨大な渦の中に巻き込まれてしまっている人たちの姿を、ドラマとして客観的に見られる、懐の深い作品になっているんじゃないかと思いますね。