NHKが『紅白歌合戦』をはじめとする音楽番組のタッチポイントを増やそうと展開している公式YouTubeチャンネル「NHK MUSIC」。番組のライブカット動画や舞台裏動画などがラインナップされ、YOASOBIやK-POPガールズグループ・NewJeansの躍進の裏側に迫って反響を呼んだ『NHKスペシャル「世界に響く歌~日韓POPS新時代~」』(総合・1月7日放送)からは、番組で放送できなかった「ミン・ヒジン独占インタビュー完全版」が2月27日に追加されたところだ。

2022年11月のチャンネル開設から「NHK MUSIC」のYouTubeチャンネル編集長を務める羽村玄チーフ・プロデューサーに、これまでの挑戦の歩みを聞いた――。

  • 「NHK MUSIC」YouTubeチャンネルで配信してきたコンテンツ (C)NHK

    「NHK MUSIC」YouTubeチャンネルで配信してきたコンテンツ (C)NHK

NHK初のジャンル特化型YouTubeチャンネル

NHKの音楽番組は年に一度の『紅白歌合戦』だけではない。かまいたち・濱家隆一と生田絵梨花のダンスボーカルユニット「ハマいく」の企画を生んだ『Venue101』に、谷原章介が司会を務め、多彩なジャンルの音楽を生歌唱で届ける『うたコン』、大泉洋が番組責任者を務める『SONGS』、クラシックの視点から音楽の魅力をひも解く『クラシックTV』など、数多くの音楽番組が総合、Eテレなどでレギュラー放送されている。公式YouTubeチャンネル「NHK MUSIC」は、これら豊富にあるNHKの音楽番組をキュレーションしながら紹介するツールとして開設された。

多様化するコンテンツの視聴方法に合わせて番組を知ってもらうきっかけ作りをYouTube上で展開していると言えばそれまでだが、X(Twitter)やインスタグラムを通じた情報発信以上の効果を期待し、満を持して始めたYouTubeチャンネルでもある。

NHKの音楽番組制作も数多く手がける羽村氏は「音楽とYouTubeは相性が良い。いまや切っても切り離せない関係と言えます」と言い切った上で、「自身を含めて制作スタッフは、番組が(視聴者に)十分に届いてないかもしれないという焦りや、“もっと届けたい”という思いを日頃から持っています。コロナ禍以降、世の中のコンテンツ視聴のあり方が劇的に変わり、NHKの音楽コンテンツをもっと多くの方に知ってもらう最適な手段の一つとして、YouTubeでチャレンジしてみようということになりました」と経緯を話す。

NHKは総合的な番組広報活動の一環として、登録者数423万人(※24年3月現在、数値データは以下同)のNHK公式YouTubeチャンネルを持つが、「NHK MUSIC」はこれとは独立した音楽番組専門チャンネルとして位置づけられる。ジャンルに特化したYouTubeチャンネルは、NHKでは初の試みだった。取りまとめる羽村氏をはじめ、30人ほどの体制でチャンネル運営しているという。

また、総合チャンネルと同様に収益化はされておらず、あくまでも番組認知を上げることが最大の目的にある。ともすれば、YouTubeチャンネルとして面白みに欠けるものになりかねないが、制約の中で可能な限り、攻めている印象だ。