フジテレビ系列のオンラインニュースメディア「FNNプライムオンライン」のYouTubeチャンネルが、BitStar社調べによる「2023年YouTubeチャンネル総再生数ランキング(通常動画)」で1位を獲得した。他局系列のチャンネルを大きく引き離す6億6,354万回再生という記録で、「東海オンエア」(2位)、「THE FIRST TAKE」(5位)、「Snow Man」(8位)といった名だたるエンタメ系チャンネルも抑えての結果だ。

なぜ、これだけの再生数を達成することができたのか。同チャンネルを担当するフジテレビ総合報道戦略局の瀬井貴之氏に、その背景や今後の展望などを聞いた――。

  • 「FNNプライムオンライン」YouTubeチャンネル

    「FNNプライムオンライン」YouTubeチャンネル

コンテンツ数で他局には勝てない…振り切って勝負

フジテレビ系列のニュースネットワーク・FNNでは元々、「FNN-News.com」としてYouTubeチャンネルを運営していたが、2018年4月に「FNNプライムオンライン」が立ち上がったことに伴い、YouTubeチャンネル名もブランドを統一。19年末からYouTubeの本格的な収益化を目指し、運用形態を変更することになった。

それまでは、全国向けに放送したストレートニュースを切り出して自動配信していたが、YouTubeのユーザーに親和性の高いニュースを中心に公開することに。選定基準の1つとして「映像としての力の強いもの」を重視し、平日は全国ニュースが80~120本が「FNNプライムオンライン」に掲載される中で、YouTubeにアップするのは10本程度だという。

当然、サムネイル画像もこだわって作っているが、「テレビ局の報道のチャンネルですので、奇をてらったものにはしません。何を伝えたいニュースなのかというのが、よりはっきり分かるというところにこだわっています」(瀬井氏、以下同)と意識。ニュースのタイトル(見出し)も、地上波向けのままでは長いため、「何のニュースなのかがシンプルに分かるように、多少削って短くすることで、縦スクロールでも瞬時に選んでいただけるようにしています」と狙っている。

YouTubeの運営は、スピード重視でひたすら本数をアップしていくのがセオリーというイメージもあるが、「そこまでスピードは重視していません。それと、フジテレビは他局に比べて平日夜のニュース番組の放送枠が短く、コンテンツの数では勝てないので、そこは振り切って数を絞り勝負しています」と、“量より質”の戦略を打ち出したのだ。

これが奏功し、2021年11月にはチャンネル登録者数100万人を突破。1月23日現在で187万人に達している。

  • 2023年YouTubeチャンネル総再生数ランキング(通常動画)=BitStar社調べ

10~20分程度の特集が人気コンテンツに

これまでの中で最多の再生数を記録しているのは、「皇后・雅子さま ある表情が話題【はてな】」(19年10月25日配信、1月23日現在で1,462万回)。天皇陛下の即位を祝う饗宴の儀での雅子さまの表情に着目したニュースだが、「皇室のニュースは、ドレスやティアラなどにも注目が集まるので、テキストよりも動画のほうがより見てもらえる傾向にあります」と解説する。

皇室の映像は、一般のYouTuberには絶対流すことができない、テレビ局ならではのコンテンツだけに、各局のチャンネルでも100万再生超を連発する人気ジャンルだそうだ。

  • 「皇后・雅子さま ある表情が話題【はてな】」=FNNプライムオンラインYouTubeより

ストレートニュース以外にも、情報番組『Mr.サンデー』の特集や、報道番組『Live News イット!』の「しらべてみたら」「ウラどり」といったコーナー企画など、10~20分程度の比較的長尺のコンテンツを展開している。

ネット動画は短尺のほうがウケやすいイメージもあるが、これらはチャンネルの中でも人気コンテンツだといい、「運用していく中で長い特集企画が人気だというのが分かってきたので、番組側にお願いして多くのコンテンツを出してもらっています」と充実化。ネット配信で別途権利処理が必要な音楽は番組側で消去して素材提供するなど協力体制が整備されている上、放送尺では入り切らなかった部分を追加して配信するという、ネットならではの取り組みも行われている。

こうしてYouTubeでの再生回数を回すことで、コンテンツを出す番組名の認知度向上という放送側への還元もある上、収益化にも主眼が置かれている。「FNNプライムオンライン」という名前からも分かるように、このYouTubeチャンネルはFNNで管理し、収益も系列局に分配するという方式を採っている。