藤井一強時代と呼ばれる現状をトップ棋士はどう研究し、どう戦っていこうとしているのか。

本稿では2023年12月28日に発売された、『将棋世界2024年2月号』(発行=日本将棋連盟、販売=マイナビ出版)掲載の新連載「私の戦い方」より、中村太地八段のコメントを一部抜粋してお送りいたします。

昨日の第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)で斎藤八段と対局し、23時を過ぎても両者ほぼ互角という死闘を制した中村太地八段は、現状をどのように考えているのでしょうか。

  • 『将棋世界2024年2月号』より

    『将棋世界2024年2月号』より

藤井さん以外の全棋士に課題が突きつけられている状態

――現在の将棋界は「藤井一強時代」といえると思います。この状況について中村先生は、率直にどのような感想をお持ちでしょうか。

「もちろん、同じ棋士としては羽生七冠誕生時の森下先生のお言葉じゃないですけど、藤井さん以外の全棋士に課題が突きつけられている状態ではあります。ただ、藤井さんが八冠を達成したことについては、全く違和感はありませんでした。あれだけ高いパフォーマンスで将棋を指していれば、八冠というのは自然な流れだよねと思ってしまうほどの強さです。

八冠という結果に対して誰も文句を言えないというか、運がよかったねっていう人は誰もいないじゃないですか。それは単純にすごいことだと思いますし、強い者が勝つという勝負の世界の鉄則の通りといえます。

 あの強さにたどり着くことが果たして可能なのか、どういう風に勉強したら、どういう風にやっていったらあそこまで強くなれるのか、というのは難しいところですね。例えば藤井さんの勉強法が全て公開されたとして、同じようにやったとして、果たして藤井八冠のようになれるのかと言われたら、そうでもないような気もします。

藤井八冠は努力もすさまじいですし、好きな将棋への好奇心、探究心も強い。もともと持っているポテンシャルもすごい。全てが備わっているという意味で、とても稀有な存在だと思います。

 藤井八冠の登場によって、将棋界が盛り上がって注目していただいている。これだけ広く一般の方にまで将棋が認知されたというのはほかでもない藤井八冠のおかげですので、そこはいまの将棋界にいる身としては感謝の気持ちはあります。

そうはいっても1人だけが強いままでは業界は盛り上がりませんので、私も含めて棋士がそれぞれに頑張っていく中で、自然と盛り上がりにつなげられればと思っています」

――誰が藤井八冠を破るのか、というのが、いま多くの人にとっての注目ポイントだと思います。どういう人が藤井八冠に勝つことができるのでしょうか。

「それは難しい話ですけど、でもやっぱり藤井八冠に勝つには序中盤でほんの少しのリードを奪って、そこを保ちきるっていうことしかないと思うんです。

藤井八冠は常に最先端にいますしスキがほぼない状態なので、奇をてらっていくよりは王道の勝ち方で勝てる人でないと、番勝負で勝つのは難しいのかなと思います。いつの時代も最後は中終盤力にいき着くので、将棋の力がある人が勝つということだ思います」

(私の戦い方・中村太地八段「ギアを上げて高い位置へ」より 記/島田修二)

『将棋世界2024年2月号』
発売日:2023年12月28日
特別定価:920円(本体価格836円+税10%)
判型:A5判244ページ
発行:日本将棋連盟
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