「自分の将棋の理解度は、1割にも満たない」。東京将棋記者会・関西囲碁将棋記者クラブの報道各社に対する、藤井聡太竜王・名人への合同取材が、11月21日に東京都港区の日本青年館ホテルで行われた。前人未到の八冠という偉業を達成した時代の寵児が、2023年の振り返り、2024年の展望について語った。

  • 新春向けの取材とあって、記念撮影では獅子舞を手に取りポーズを決める藤井竜王・名人(令和5年11月21日、日本青年館ホテルにて)

記者会見では、まず代表者による質問が行われたあと、希望者の挙手による質疑応答が行われた。(一問一答は要旨抜粋)

2023年の対局を振り返って

【代表者による質問】

――この1年を振り返っていただきます。
藤井 2023年は棋王戦、名人戦、王座戦と3つのタイトル戦で、挑戦することができたので、自分が思っている以上に成果が出せた1年だったと思います。また八冠については、自分でも達成できるとは思っていなかったので驚きもありましたし、多くの反響をいただけたのもうれしく思いました。

――盤上、盤外で成長した点は?
藤井 盤上では依然として課題が多いと感じる1年でしたが、全体としては少し苦しい局面になっても、粘り強く指すことができた点は、成長だと思います。盤外では、少し体重が増えたことは成長ではないので(笑)、少し戻していきたいなと。体力作りはなかなかうまくいっていないので、そちらは引き続き取り組んでいきたいです。

――2023年でいちばん印象に残った一局と一手を挙げてください。
藤井 一局は竜王戦第3局。序盤から前例の少ない形になりましたが、積極的な手を積み重ねて、勝ちに結びつけることができたことは印象に残っています。一手のほうは棋聖戦第3局で中盤で7六から▲8六玉と寄った手があります。いい手というわけではないのですが、先が見えない中で自分から崩れない一手を指せたので、自分の中では印象に残っています。

  • 驚愕の玉寄りが出現した印象深い一手は、佐々木大地六段の挑戦を迎えた棋聖戦第3局で現れた【写真・田名後健吾】

――2023年は北海道、特に小樽(王位戦第3局、竜王戦第4局)に縁があった1年でした。今後はどのような場所に訪れてみたいですか。
藤井 北海道は対局で呼んでいただく機会が多く、うれしく思います。王位戦で訪れる機会が多いので夏のイメージですが、まだ冬に行ったことがないので、いずれは冬の北海道も楽しみたいです。また今後は、まだ訪れたことのない場所にも行ってみたいです。

――竜王戦は同世代の伊藤匠七段の挑戦を受けました。
藤井 伊藤七段とは子どもの頃に将棋大会で対戦したこともあったので、竜王戦という最高の舞台で戦えることは、とてもうれしく思っていました。伊藤七段は序盤の知識が非常に深くて、そのあたりで悪くしないことがポイントだと思っていました。その点では後手番の第1局と第3局で、難しい形勢のまま中盤戦、終盤戦に持ち込むことができたことが大きかったと思います。

――2023年でパワーアップした点はどこですか?
藤井 技術的な点でいえば、先ほどと同じになりますが、苦しい局面での指し方が、これまでよりもよい指し方ができたかなという点です。