有象無象の商品情報が手に入る時代になり、ベストな商品選びはますます難しくなっている。そんな消費者の悩みに答えるかのように商品比較サービス「mybest (マイベスト)」は登場した。mybestが支持される理由を、代表取締役社長CEO 吉川徹氏のお話から探ってみたい。

  • "最高の選択体験"を目指すマイベストの吉川氏

月間約3,000万以上のユーザーが見る商品比較サービス

近年、インターネットで商品について調べると、高確率で検索の上位に上がってくるサイトがある。緑色の星マークでおなじみの商品比較サービス「mybest」だ。

家電製品やコスメはもちろんのこと、食品や生活雑貨、金融や保険など、ありとあらゆる商品やサービスを比較しランキング化している。創業は2016年。まだ会社が立ち上げられて7年ほどだが、現在の月間ユニークユーザーは約3,000万以上、日本人の4人に1人が使うサービスへと急成長している。

  • 商品比較サービス「mybest (マイベスト)」

国内には数多くの商品比較サイト、情報まとめサイトが存在するが、「mybest」はどのようにして誕生したのか。そしてどのようなサービスを目指しているのか。マイベスト代表取締役社長CEOの吉川徹氏にお話を伺った。

きっかけは「商品比較にはまだ決定的なソリューションがない」

吉川氏は現在38歳。もともとは証券会社で公開引受の業務に当たっており、財務のプロとしてキャリアを積もうと考えていたという。だが、業務の中でベンチャー企業のCEOたちと話をするうちに、事業を立ち上げたいという思いが次第に強くなる。

そんな吉川氏の転機となったのが、ITメガベンチャーで働く友人からの誘いだ。6年働いた証券会社を辞めてそのベンチャー企業に転職し、新規事業開拓を担当する。ここでの仕事は、まさに「ゼロから新しい事業を作る」ものだったという。こうして2年間経験を積み、吉川氏はついに独立。2016年10月にマイベストを設立した。

吉川氏は、「mybest」という商品比較サイトを立ち上げたきっかけを、次のように話す。

「モノを買うとき、多くのユーザーはまず検索サイトで検索しますよね。でも、『どのサイトもなんかピンとこない』と感じた方は多いのではないでしょうか。これはユーザーのライフスタイルが多様化したこと、スマホの登場によってデジタルコンテンツの供給量・消費量が増えたことが大きな要因です。いろいろな商品が氾濫し、ユーザーはなにを選んだらいいかわからなくなったんです」

  • マイベスト代表取締役社長CEO 吉川 徹氏

商品を比較するサイトはインターネット上に数多く存在している。だが、商品購入というアクション直前に行うことは"価格比較"だけではない。「"商品比較"にはまだ決定的なソリューションがない」と吉川氏は考えた。

「商品比較雑誌は僕も好きでよく読んでいました。でも誌面だと検索性がありませんし、更新性もありません。パーソナライズもできません。こういった点がWebサービスなら解決できると思いました。一方で、検索サイトではユーザーのペインポイントは解決できないと考えました」

近年、インターネットでは"ユーザーの検索離れ"が進んでいる。だからこそSNSで商品について調べたりする人が増加しているのだが、いまや口コミも"やらせ"などが増え、信用が低下気味だ。ユーザーは商品の選択をする前に情報を精査しなくてはならない。

「『どの情報を信頼してよいか?』みたいなところから精査するのは、選択コストが高いんですよ。もちろん好きなモノを買うのであればしっかり調べると思いますが、例えば洗剤のような日用品を買うために貴重な時間を使って調べる人は少ないでしょう。こういった選択を負担なく能動的にできると、もっと人生を豊かにすることができると思いました」

目標は「その人に対して最適な選択肢を掲出する」こと

こうして誕生した商品比較サイト「mybest」。吉川氏は「ユーザーがモノを購入するときの悩みを解決するサイト」と説明する。

一見すると商品比較記事が載っている記事型サイトだが、実は裏側では商品のデータを蓄積し続けているデータ型サイトであり、常に最新の情報を得ることができる。このデータベースこそが、mybestの最大の強みだ。

「構築に当たっては『価格.com』を参考にしました。『価格.com』は日本一稼いでいる商品比較サービスといっても過言ではありません。なぜかというと、購入というアクションの直前にいるからです。価格を比較したらその先はもう購入です。だから収益性も高くなる。稼げる事業を目指したわけではありませんが、大いに学ばせていただきました」

  • スタッフが商品の検証や撮影に明け暮れるマイベスト社内

最初の1年間は吉川氏が一人でサイトを構築していったという。事業が軌道に乗ってからは徐々に人を雇っていったが、つねに順風満帆だったわけでもないようだ。

「一人でやっていたときも精神的にはすごく大変でしたが、がむしゃらに働くことでなんとか乗り切れました。一番つらかったのはやっぱり人間関係ですね。最初に3人のスタッフを雇ったのですが、そのうちの一人が横領をしていました。もちろんクビにしたのですが、そうしたら残った二人との関係もなんだかギスギスしちゃって。いまはもうなんとも思わないんですけど、当時は3日間ほど眠れなかったりしました」

大きな転機となったのが、2020年のZホールディングス (現:LINEヤフー)との資本業務提携。それまでは吉川氏の100%資本で経営してきたため、決断にいたるまで大いに考え抜いたという。

「かなり悩みましたが、僕らが最終的にやりたいのはユーザー情報を使ったパーソナライズであり、『その人に対して最適な選択肢を提案する』ということです。そのためにはユーザーデータが必要でした。LINEヤフーさんは日本で一番のインターネット企業ですから、途中の過程をショートカットできると思ったんです。実際には提携実行まで約一年かかっています。提携によってどのようなシナジーが生まれるのか、ずっと検証していました」

もっとも重要なのは「中立性」「嘘がないこと」

「mybest」は現在も成長を続け、そのデータベースは広がり続けている。今後はどのような発展を遂げていくのだろうか。

「僕らは"選択"を"ユーザーと選択肢のマッチング"と捉えています。短期的には、このマッチング精度をより向上させなくてはなりませんから、選択肢のデータベースを積み上げていきたいと思います。現在、月間2,000商品を購入してデータ化していますが、これを月間20,000商品にしたいですし、将来的にはさらに増やしたいです。つまり、完全な『選択のデータベース』を作ることです」

「ですが、『選択のデータベース』を作ること自体は目的ではありません。重要なのはユーザーが"自分に最適な選択ができる"ということ。そのためにユーザー情報を学習して最適な選択肢を提案するプロダクトを作りあげないといけないと思っています」

  • さまざまな商品が所狭しと並んでいるが、吉川氏はさらなる拡充を目指している

吉川氏は最後に、現在の「mybest」を支えるマインドを次のように語った。

「『mybest』のDNAは"ユーザーファースト"です。会社にはさまざまなステークホルダーがいますが、従業員の健康を除けば、一番優先すべきはユーザー。僕らが胸を張って言えることは『ユーザーに対して誠実にサービスを作っている』ということ。もちろん人間がやる以上間違いはありますが、ユーザーと商品の間に立つサービスとしてもっとも重要なのは『中立性』や『嘘がないこと』だと思っています。すごく難しいことですが、それをやり切りたいと思っています」