現在公開中の、北野武監督による最新映画『首』。北野作品の大ファンである空気階段・鈴木もぐらは、キャストについて改めて全員が「バチハマり」と感じたという。天下統一を掲げる織田信長(加瀬亮)を中心に、羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)などの武将たちが様々な思惑で絡まり合っている。

自身のラジオでも同作について熱弁するほどの鈴木は、同作に出演していないにもかかわらず自ら「語らせてほしい」とやる気まんまん。キャストに感じた素晴らしさについて話を聞いた。

※編集部注:本記事は、公開中の作品に関する詳細なシーンの紹介を含んでいます。知らない状態で映画をご覧になりたい方はご注意下さい。

  • 鈴木もぐら

    鈴木もぐら

■映画『首』はキャスト全員が最高で「この人しかいない」

――今回、もぐらさんが観ていてまず心に残ったのはどなたでしたか?

(曽呂利新左衛門役の)木村(祐一)さんは、本当に心に残りました。木村さんは大先輩で、僕からはあまりどうこう言えないんですけど、めちゃくちゃ良かったです。全役者さんが血をたぎらせて演技されているんですが、木村さんと、それから(難波茂助役の中村)獅童さんを見ると、「実は主人公はあの2人なんじゃないか」と思えるというか。もちろん、それぞれが主人公として観られる映画になってるんですけど。

――たしかに、「武将」じゃないキャラクターで、観客が感情移入しやすいところでしたね。秀吉、信長、光秀についてはいかがでしたか?

あの秀吉って、やっぱり武さんですよね。カンヌの会見か何かで、もともと演じるつもりがなくて「秀吉、誰がやるんだ?」となった時に、「武さん、やってくださいよ」と言われたからやったというようなことをおっしゃってたんですけど、あの役はやっぱり絶対に武さんにしかできないだろうなと思いますね。ボケながら上に昇っていくけれども、残酷さも持っている。作品の非道さとか冷たさとか、優しさみたいものが、武さんを通して表現されるじゃないですか。だから僕は役者としての武さんもすごく好きです。

加瀬さんの信長も、初登場のシーンで「この映画、完璧に面白いじゃん!」と教えてくれる存在です。傍若無人ぶりと、トップにいる人間の孤独みたいなものを伝えてくれて、圧倒されました。西島さんの光秀も、耐えに耐える優等生の明智の部分もありつつ、織田軍の家臣No.2という汚い部分があって。「明智もやっぱり悪い奴なんじゃないか」という部分が見える演技が本当にすごかったと思います。信長に見立てた人を討っているところとか、信長がいたらできないんじゃないのかと思わせつつ大胆に悪いことしてたりして。

キャストの方全員が最高で、「この人しかいない」というくらいバチハマりしていると思いました。武さんの作品の魅力のは、そこにもあるかもしれないです。「この役、別の人が演じた方がいいんじゃないか」と思うことが1回もないんです。

■テレビではなかなか描かれないエピソードも

――武将同士の愛憎の部分も描かれていましたが、そこについてはいかがでしたか?

西島さんと遠藤(憲一)さんのラブシーン、もうめちゃくちゃ濃厚だったじゃないですか。僕、この間お会いする機会があった時に、西島さんに「撮影の時にケアとかされたんですか?」とお伺いしたんですよ。普通、女優さんとラブシーンがあったら、口臭が気になってケアしたりするじゃないですか。今回もしたのかなと思ってお伺いしたら「ケアしました」と教えていただきました。信長と蘭丸のシーンもあったし、信長が光秀から好かれて喜ぶところもあって、テレビではなかなか描かれないエピソードが面白かったです。

――例えばもぐらさんも、武さんにある種惚れているような気持ちもあるんでしょうか?

僕は本当には憧れてて好きですけど、おこがましいというか。やっぱり本当に武さんを君主として尊敬していらっしゃるのは、たけし軍団の方々じゃないですか?

――今後、自分も武さんの作品に出演したいという気持ちはあるんですか?

いやあ、出れないですよ! なんか……道でうんこ踏む役とかあったら(笑)。出たいなんて言えないですよ、やっぱり! 観ているだけで楽しませていただいています。

■鈴木もぐら
1987年5月13日生まれ、千葉県出身。2012年に水川かたまりとお笑いコンビ 空気階段を結成。2021年にはキングオブコントで優勝するなど話題に。俳優としても活躍の場を広げ、2023年にはドラマ『ゼイチョー~『払えない』にはワケがある~』にレギュラー出演。2024年には出演ドラマ『PORTAL-X ~ドアの向こうの観察記録~』放送が控えている。