俳優・草なぎ剛が主演を務めるNHKの土曜ドラマ『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』(総合 BSプレミアム4K 12月16日・23日22:00~)のキービジュアルと予告ティザー映像が21日、公開された。

  • 『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』キービジュアル

公開されたキービジュアルのデザインを手掛けたのは、近年ドラマから映画まで数々の話題作のビジュアルデザインを担当している石井勇一氏。『デフ・ヴォイス』のキービジュアルでは、画像加工をしない実験的な撮影方法により、ハンドサインで型どった色彩の光をその場で撮影するポートレート写真に多重露光することで、くっきり見える部分と見えない部分をつくり「聞こえる・聞こえない」というドラマのテーマを視覚的に表現した1枚となっている。

また、ティザー映像では、所在なげに部屋をさまよう主人公・荒井尚人(草なぎ剛)をはじめ、橋本愛、松本若菜、遠藤憲一、さらには印象的な演技を披露する、ろう者俳優たちの姿も映し出され、いち早くドラマの世界観を知ることのできる内容となっている。

20人近い(エキストラも含めると30人以上)、ろう者・難聴者・コーダの役を実際の当事者が演じていることが大きな特徴でもある本作。撮影に手話監修・手話指導として関わった木村晴美氏、米内山陽子氏、江副悟史氏、制作統括の坂部康二氏、キービジュアルを担当した石井勇一氏がコメントを寄せた。

■キービジュアルデザイン 石井勇一

ビジュアルは、写真家の濱田祐史さんを起用し実験的な多重露光撮影を現場でトライいたしました。偶発的に重ねた色彩溢れる光の形状は“家族”を意味するハンドサインの断片で構成されており、本作の作品性に合わせたあらゆる世界における見えるもの・見えないものや無常感などを視覚的に体現したものになります。

■手話・ろう者監修 木村晴美

デフ・ヴォイスは、コーダが主役の物語ですが、オーディションで選ばれたろうの俳優さん達の演技も見逃せません! 草なぎさん演じる尚人さんと絡むシーン等で、名もなきろう俳優さん達が存在感を示しています。名もなき俳優と書きましたが、ろうコミュニティの中では有名な俳優さん達です。渡辺監督がオーディションで楽しそうにしていたのが印象的でした。どんなふうに展開されるのか、手話の入ったカメラアングルはどうなっているのか、ぜひ、最後までお楽しみください。

■コーダ考証・手話指導 米内山陽子

ろう者の役は、ろう者の俳優に演じて欲しい──。
私たちの長年の悲願が叶いました。
丸山さんの素晴らしい原作と、高橋さんの繊細な脚本、渡辺監督の温かなまなざしのもと、老若男女、さまざまなろう者がこの作品に集い、魅力的なお芝居をしています。
カメラの前で繰り広げられる彼らの演技に心が震えました。
それを受け止める草なぎさんをはじめとする聴者キャストの懐の大きなお芝居に胸があつくなりました。
手話監修の木村さんの的確さ、バディのように共に手話指導に挑んだ江副さんの頼もしさ、現場に手話通訳に入ったはせさん、小松さん、井本さんの仕事ぶりに助けられました。
私たちはそれぞれ違う人間で、それは当然尊重されるべきことです。
けれど同じ部分が間違いなくある。
悲しむこと、喜ぶこと、心を寄せること。
この作品をきっかけに、世界がもっと色を増していきますように。

■手話指導 江副悟史

手話界で大きな話題になった「デフ・ヴォイス」がドラマ化され、さらに手話指導としてオファーが来たときはとても驚き、ともに嬉しくなりました。
またろう者役を当事者に演じてほしいということは、喜びとともに不安も大きかったです。ろう俳優のほとんどが舞台経験者が多く、映画やドラマで演じたことが少なかったからです。
プロデューサーを始め、渡辺監督、スタッフの方々にお願いして、ろう俳優対象に「模擬撮影現場」というのを丸1日開催し、リアルな撮影現場を体験してもらいました。また私の方から撮影現場での行動、心構えなども色々と話した上で撮影に入りました。そのおかげでろう俳優もやりやすい環境で撮影に臨めたかなと思います。
ろう俳優の手話も十人十色で、個性的な手話表現も多く、手話指導としても、とても楽しかったです。それぞれ手話の「色」を尊重し、尚人役の草なぎさんも、ろう俳優の役柄に合わせて手話表現を変えていかないといけないので、自然な会話に見えるように調整しながら指導してきました。当初は大変だったと思いますが、撮影現場でろう俳優と絡んでいくうちに慣れてきて、きちんと使いこなせるようになりました。
手話指導するときは、自分の指導方法を形にはめて教えるのではなく、草なぎさんの覚えやすいやり方で、色々と試行錯誤しながらやってきました。草なぎさんに「ダンスの振り付けみたいだな」と言っていただいたのをきっかけに、手話の文法が壊れてしまわないよう、文脈に合わせて丁寧に指導しました。そこから草なぎさんも覚えやすくなってそのまま最後まで走ってくれました。
出演者のほかに裏方のスタッフさんとも私の方から積極的に交流して、ロケバスの運転手さんまで凄く仲良くなって(笑) ご飯も行ったり、通訳なしで2人で色んな会話をしたり、とても楽しい現場でした。
「デフ・ヴォイス」をぜひ多くの方々に見てもらいたいと思います。

■制作統括 坂部康二

聞こえるひと、聞こえにくいひと、聞こえないひと。たくさんのひとにドラマを楽しんでいただきたいと考えました。総合とBSプレミアム4Kでは、「字幕」ボタンを押すことなく、“同じ”番組を一緒に楽しんでいただけます。
またEテレでの放送では、ドラマに手話翻訳をつけて放送します。多様なひとを描くドラマだからこそ、多様なひとに楽しんでいただけるようにしたいと考えました。これによって、「エンターテインメント」としてこのドラマが持つ力が広く伝わったらうれしいです。普段、福祉番組を作っているチームによる、舞台裏を描いたドキュメンタリーも、ぜひご覧ください。

【編集部MEMO】
丸山正樹氏による小説『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』を原作とするこのドラマで草なぎ剛が演じる主人公・荒井尚人は、ろう者の両親の間に生まれた耳が聴こえる子ども、コーダ(Children of Deaf Adultsの略)であり、自身の生き方や他者との関わり方について悩み、現在と過去の事件を追う中で自身が果たして何者なのか周囲の人から問われ自分自身にも問いかけることになる人物。ドラマの中では手話を使って演じるシーンもあり、手話で会話する草なぎにも注目だ。

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