南雲役の鈴木と2人でやりとりするシーンも多いが、鈴木は同じ目線になって話をしてくれるという。
「奥寺(佐渡子)さんの脚本は、僕らが考える隙間がすごく多くて、このシーンとこのシーンの間に何があったんだろうというのを、どうとでも埋められるんです。そういうところを亮平さんは同じ目線で『根室はここまでにこういうことをしていたと思うんだよね』などと一緒に埋めてくださるので、一つ一つのシーンをすごく丁寧に撮れているなと思います」
そして、鈴木らのプロ意識の高さに刺激をもらっていると語る。
「フェリーで『野球やりたいんだと思っていたよ』と言われるシーンも、亮平さん自身いろいろ考えられていて、1カット撮り終わったときに監督と何十分も話してそのシーンを作ろうとしてくださって。主演でずっと出ずっぱりだと妥協してしまう瞬間ってあると思いますが、それが亮平さんは絶対になくて、塚原さんも絶対になくて、そういうプロ意識の高い2人を見て、すごいな、こうならないといけないなと感じています」
さらに、「亮平さんは僕らにこういう風にしたほうがいいというのはあまり言わないです。相談したら相談に乗ってくれますが、同じ目線でそのシーンについて話すだけで、お芝居をこうしたほうがいいというのはあまり言われないです」とも話した。
山住役の黒木については「みんなの寮母さんみたいです(笑)」と表現する。
「普段後ろにいても、『しっかりやれよ』みたいにパッと締めてくれる感じ。すごく優しい眼差しで僕らを見て、目が合うとにこってしてくれます。相談したら相談に乗ってくださったり、寮母さんみたいだなと。僕らの男子高生みたいな会話も、華さんは『何しゃべってんの!?』という感じで聞いてくださって、いい現場だなと思います」
■本作で多くの学び「一番は、お芝居しちゃダメなんだなと」
本作で俳優としてたくさんの学びがあるという兵頭。「一番は、お芝居しちゃダメなんだなと思いました」と語る。
「根室について、貧乏で親はいなくて、姉ちゃんと2人で住んでいて、貧乏だから野球できるかわからなくて、という役の説明を見たら、悲しい子だな、暗い子だなと。僕はどうしてもそうやって役を捉えがちでしたが、そういう人でもたくさん笑うし、明るいときは明るいし、そういう生っぽさを役で出すにはお芝居しちゃダメなんだなと、塚原さんの演出や亮平さんを見ていてすごく感じます」
ほかの球児キャストを見ていても、「お芝居したらダメ」ということを感じたという。
「僕は20歳から役者をしていて今5年目になりますが、初めてレギュラーでドラマに出ているメンバーもいて、この顔すごく自然だなと横で見ていて思う瞬間がたくさんあって、それを見た時に、自分も心からの表情……僕としてそこに立っていてもいいぐらいな、そう演じたいなと強く思いました。僕らの自然な表情を切り取るためにテストから回していたり、それぐらい力を抜いて本番でも演じないようにしようと心がけています」
■「いつか日曜劇場にもっと真ん中で帰ってこられるような役者さんに」
今後、さらに重要な役どころとなっていく根室を演じ、兵頭への注目度が高まりそうだが、兵頭自身も本作出演が今後の活躍につながっていくことを期待している。
「今年が初めて地上波のゴールデン帯の連続ドラマに出させてもらった年で、今回、日曜劇場というすごく大きなステージでお芝居させていただいていますが、見てもらった方々にどういう反応をされるのかとか、業界の方にいつか仕事したいなと思ってもらえるかというのは来年以降にわかってくることだと思うので、根室を一生懸命演じて、『下剋上球児』を見たから一緒に仕事がしたいと思ったんだよねと言ってもらって、いろんなところでまたお仕事して、いつか日曜劇場にもっと真ん中で帰ってこられるような役者さんになりたいなと思いました」
最後に視聴者に向けて、「根室は球も遅くて、野球部に入ろうか迷っているような子でしたが、後半になってどんどん成長していき、チームを支えるというか、翔という存在に対しても少しライバル心を持てるようになるぐらいまで成長していきます。根室の成長していく過程は見守ってもらいたいですし、この子がここまで成長してこういうプレーをするようになったんだというところにぐっときてもらいたいので、そこはすごく注目してほしいなと思います」とメッセージを送った。
1998年4月15日生まれ、福岡県出身。2018年、GYAOとアミューズが共同実施したオーディション「NEW CINEMA PROJECT」の「出演者」部門でグランプリを受賞。映画『五億円のじんせい』(2019)で俳優デビューを果たすと、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(2019~2020)のカナロ/リュウソウゴールド役で注目を集める。近年の出演作は、TOKYO MX『片恋グルメ日記』シリーズ(2020・2022)、カンテレ『ブルーバースデー』(2023)、WOWOW『ドラフトキング』(2023)、読売テレビ・日本テレビ『CODE-願いの代償-』、映画『レッドブリッジ』『レッドブリッジ ビギニング』(2022)、『消せない記憶』(2023)、『18歳のおとなたち』(2023先行上映)など。
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