ここからは、3日18:00からスタートした森次晃嗣×高峰圭二トークショー&「零下140度の対決」上映会の模様をダイジェストでお伝えしよう。まずは森次がステージに現れ、広場に集まった大勢のファンを歓喜させた。

午前中に行われた「ウルトラセブンモニュメント」完成記念式典&除幕式を終えた感想を問われた森次は「駅前にウルトラマンのモニュメントが出来たとき、なんでセブンはいないの? と、ヤキモチみたいな思いがありました。口には出してないけどね。きょう除幕式を行って、立派なセブンのモニュメントを拝見しました。森に囲まれた、とても素敵な場所に立っていました。実物を見ると嬉しくなりますね」と語って、喜びをあらわにした。

モロボシ・ダンより愛をこめて

55年前『ウルトラセブン』を製作していたころ、祖師谷大蔵~砧にあった円谷プロの思い出については「あのころはウルトラセブンじゃなくて仮題の『レッドマン』と言っていましたけれど、ウルトラマンの次に作る番組の主役を探しているということで、国際放映のドラマ『天下の青年』に出ていた僕に声がかかったんです。そして砧にあった円谷プロへ連れていかれて、そこでモロボシ・ダン役に決めてもらいました。ダンはセブンがそのまま姿を変えた存在。つまり宇宙人の役です。前例がほとんどなかったですから、自分なりに演じるしかない。みなさん、どうでしたか?」と、主役を決定する面接の場として砧の円谷プロへ赴いたこと、宇宙人ヒーローという難役にとまどったことなどを話した。たちまち巻き起こる盛大な拍手を受けた森次は「みなさんが拍手をくださったということは、ダンを演じたのが森次で良かった、ということですね。僕はとてもラッキーだと思います」と、あたたかなファンの拍手に感謝の気持ちを示した。

かつて砧にあった『ウルトラセブン』の撮影拠点、「美セン」という愛称で呼ばれた「東京美術センター」のことを訊かれた森次は「最初はびっくりしましたね。ここが撮影所? と驚いたほど、掘っ建て小屋みたいな場所で撮影をしていました。壁も屋根も波板のトタンで出来ていて、雨が降ったりすると役者のセリフよりも『バラバラバラ……』と雨音のほうが大きいんだもの(笑)。それでも俳優陣みんな頑張りましたよ」と、最新鋭の科学設備という設定とは反対に、素朴な環境で撮影が行なわれていたことを明かした。

放送当時の人気について、森次は「渋谷の西武百貨店屋上でダンのサイン会をやろうとしたんだけど、ものすごい人数が押し寄せて、このままじゃ危険だからって中止になったことがありました。何もしないと申し訳ないから、高めの台を用意してもらって、隊員服を着て、ヘルメット抱えて『どうも!』って挨拶をして、サインせずにギャラをいただきました(笑)」と、あのころの『ウルトラセブン』の大人気ぶりを思い返していた。

祖師ヶ谷大蔵には、円谷プロ創設者・円谷英二特技監督の自宅もあった。英二監督との思い出を尋ねられた森次は「円谷英二さんは、あまり口数の多い方ではなかったですね。いつも帽子を被り、ネクタイをして現場に臨んでいた、紳士的な姿を思い出します」と印象をしみじみふりかえった。

「零下140度の対決」のひみつ

今回上映された「零下140度の対決」は、1968年3月24日に放送された『ウルトラセブン』第25話。全49話作られた『セブン』のちょうど中間地点のエピソードである。上映前に見どころを訊かれた森次は「この回は、地球防衛軍基地周辺が零下140度の冷凍ゾーンに入ってしまうのですが、かつてない猛吹雪を表現するため、美センのいちばん大きなセットの中にポインター(ウルトラ警備隊専用車)を入れ、大量の塩と細かく砕いたカポック(発泡スチロール)をしきつめて、巨大扇風機をブーン! と回していました。だから何かセリフを言おうとすると、塩やカポック粉が口の中に入ってきて、たいへんでした」という苦労話を明かした。さらに、上映前の合図として、ポケットに忍ばせていた「ウルトラアイ」を目にかざし「明けの明星が輝くころ、ひとつの光が宇宙へ飛んでいく……それが僕なんだ。……デュワッ!」と、第49話「史上最大の侵略 後編」での最高の名セリフを語りながらセブンへの変身を再現し、ファンの感動を誘った。

上映後、ふたたびステージに立った森次は「吹雪が収まり、晴れ渡った空の下でダンが雪の上を歩いていくシーンで終わりたいという狙いから、長野県の霧ヶ峰でロケ撮影を行いました」と、ラストシーンの裏話を語ってくれた。北海道出身の森次は、零下140度ならぬ「零下33度」という超低温を中学生時代、実際に体験したことがあるという。「零下33度といっても、どれくらい寒いのか、みなさん想像つかないでしょう。銭湯へ行って身体を芯まで温めるため、2時間くらい入っていた。家に帰るときには、濡れたタオルがカチカチに凍っていたりしました」と、北海道の過酷な寒さを懐かしそうに思い出していた。

見よ! 北斗星司只今参上!

ここで、「先輩! 待ちくたびれましたよ。俺にもしゃべらせて!!」と、『ウルトラマンA』でウルトラマンエースに変身する北斗星司隊員を演じた高峰圭二が元気よく登場。本来は、MCのお姉さんの呼び込みによって登場するはずが、待ちきれずに段取りをぶっちぎっての登場だった。まさに『ウルトラマンA』第1話で、初出動の直前にトイレに行った今野隊員(演:山本正明)を置き去りにして、タックスペースで単独発進した北斗を思わせる型破りな行動で、大勢のファンから熱い拍手が巻き起こった。

高峰は「もうこのあたりに住んで20年以上になります。祖師谷の商店街には、自転車に乗ってよく通りがかります。ときどき駅前にウルトラセブンやウルトラマンエースが来て、ファンのみんながたくさん並んでるなあ、なんて見かけることがありましたが、僕が北斗だって気づかれたことがありません。でも、気づかれないほうが気軽にお惣菜とかを買いに行けるから、いいんです(笑)。だからこれまで、祖師谷のウルトラマン関連のイベントには出ないと言っていたのですが、このたびウルトラセブン像が建つと聞きまして、先輩の森次さんから『せっかく近くに住んでるんだから、お前も協力してよ』と声をかけてもらって、はい! わかりました!! と引き受けました」と、地元でのトークイベント出演の「解禁」経緯を明かした。

『ウルトラマンA』では、ゾフィー、初代ウルトラマン、ウルトラセブン、ウルトラマン2世(帰ってきたウルトラマン)がエースを助けに地球へやってくることがたびたびあり、中でもウルトラセブンがエースの窮地を救うことがもっとも多かった。高峰は『ウルトラマンA』の撮影で、森次と同じく美センへ通っていた50年前の日々について「森次さんは『セブン』の撮影がたいへんだったと苦労をお話ししていたけど、僕が『A』に出ていたときは、毎日が運動会みたいというか(笑)。遊びのような楽しさがありました」と朗らかな笑顔をのぞかせつつ、当時のことを懐かしそうに語った。

ウルトラ兄弟 永遠の絆

変身前のダンと北斗が直接顔を合わせたのは、次作『ウルトラマンタロウ』(1973~1974年)の第33話「ウルトラの国 大爆発5秒前!」第34話「ウルトラ6兄弟最後の日!」でハヤタ(演:黒部進)、郷秀樹(演:団時朗)、東光太郎(演:篠田三郎)を交えた「ウルトラ兄弟」大集合のスペシャルなエピソードが初となる。その後、京都で時代劇を撮影中に森次と高峰が出会っても「同じ作品で一緒に芝居をしたことはなかったね(森次)」「合間に挨拶をしていても、ウルトラマン時代の話をする機会もありませんでしたね(高峰)」という状況だったそうだ。黒部、森次、団、高峰の交流が深まったのは、2006年9月に公開された映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』の神戸ロケでの「共演」が大きかったという。

話題が『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』に移ると、高峰は「4人で神戸のホテルに10日間くらい泊まり込んでいましたね。部屋が黒部さん、森次さん、団ちゃん、僕と横並びでね。撮影が終わってホテルに戻ったら、まず黒部さんが『晃嗣、いる?』って言って森次さんの部屋に入っていって、その後に僕と団ちゃんもそこに合流し、みんなで酒盛りが始まるんですよ」と今から17年前の楽しい思い出をふりかえった。これを受けて森次も「僕の部屋には、夜になると『BARダン』って貼り紙がしてあるんだ(笑)。ウルトラマンメビウスの五十嵐(隼士)くんはあのころ未成年だったからお酒が飲めず、誘えなくて残念だった。代わりに冷たい飲み物を買ってあげました」と、若いメビウス/ヒビノ・ミライ役の五十嵐とも仲良く接していたことも明かした。

『帰ってきたウルトラマン』で郷秀樹をスマートかつ熱く演じ上げ、熱烈なファンを獲得した団時朗は、惜しくも今年3月にこの世を去った。高峰は「団ちゃんとは住んでいるところが近くて、ちょこちょこ会っては一緒に飲んでいました。よく話していたのは、『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』とシリーズが続いていったのは、原点のウルトラマンである黒部さんや、ウルトラセブンの森次さんたち先輩が頑張って、基礎を作ってくれたおかげだよねってこと」と、いわゆる第1期シリーズ(ウルトラQ、ウルトラマン、ウルトラセブン)の功績を称えながら、団との思い出をしみじみ語ってくれた。森次も「いまだに黒部さんから電話がかかってきます。『晃嗣、元気かい~? ヤッホー!』ってね(笑)」と黒部の近況をファンに知らせ、昭和ウルトラ兄弟の絆の強さを今一度強調した。

トークショー終盤、スペシャルゲストとして「ウルトラセブンの息子」ウルトラマンゼロがさっそうとステージに登場。森次はゼロを見て「いつの間にかセブンに息子が……」とつぶやき、場を大いに沸かせていた。

最後にマイクを手にした高峰は「先輩に誘われて、最初はわりと消極的な気持ちでしたけど、今は誘ってくれてよかったなと思っています。森次さん、ありがとうございました。小さなお子さんから大人の方たちまで、上映作品も一生懸命観ていてくださり、嬉しいですよね!」と、ウルトラマンシリーズを愛するたくさんの人々と森次に感謝の気持ちを伝えて、さわやかな笑顔を見せた。

森次は「ウルトラセブンのモニュメントが完成し、祖師谷の商店街にいっそう親しみがわいてきた気がします。今日は寒い中……って言おうとしたけど、いい天気でそんなに寒くないですね(笑)。今後、祖師ヶ谷大蔵駅前にはウルトラマン、砧8丁目児童遊園にはウルトラセブンがずっとみなさんを見守っています。みなさんの力でウルトラマン商店街を盛り上げていただければ、と思います。今日はどうもありがとうございました!」という挨拶を行ったあと、「デュワッ!」とふたたび変身の決めゼリフを放ち、イベントを見事に締めくくった。

(C)円谷プロ