円谷プロの特撮テレビドラマ『ウルトラセブン』(1967~1968年)放送55周年を記念し、東京都世田谷区の下北沢と祖師ヶ谷大蔵の商店街で『シモキタ ソシガヤ ウルトラタウンフェス』が11月末まで開催されている。

2023年11月3日には、円谷プロ創業の地だった砧(きぬた)社屋跡の近くにある「砧8丁目児童遊園」にて「ウルトラセブンモニュメント像」の除幕式が行われ、さらに同日、祖師ヶ谷大蔵駅前広場の「ウルトラセブン祝55th モニュメント建立記念イベント」では森次晃嗣、高峰圭二によるトークショー&『ウルトラセブン』第25話「零下140度の対決」上映会が催された。

  • 森次晃嗣(左)と高峰圭二(右)

『ウルトラQ』(1966年)『ウルトラマン』(1966~1967年)に続いて、円谷プロが作り出した空想特撮シリーズの第3弾『ウルトラセブン』は、地球防衛軍極東支部の精鋭チーム「ウルトラ警備隊」6人と、彼らに味方する「7番目の隊員」=ウルトラセブンが、地球を狙う恐るべき侵略者の魔手に挑むSF特撮ドラマである。本作に登場する数々の宇宙人は、巧妙な手段で人間標本を集める者、宇宙空間都市との衝突を回避するため地球を爆破しようとする者、地球人による超兵器実験で母星を奪われた悲しき怪獣など、さまざまな事情や目的を備えていた。それぞれのユニークな外見や、自らの計画を雄弁に語る個性が深みのあるストーリーを作り上げたことで、『ウルトラセブン』は半世紀を過ぎた現在でも多くの人々の心に残り、愛され続けている。

「ウルトラマン商店街」は2005年、祖師ヶ谷大蔵駅が踏切から高架に変わったのを機に、3つの商店街が連合して誕生。1963年の創業以来、この地にあった円谷プロ砧社屋は2008年に閉鎖されたが、その後もウルトラマン商店街は「特撮の神様」と呼ばれ世界的にも有名な円谷英二特技監督(円谷プロ初代社長)のもとで数々の特撮作品を送り出した若きクリエイターの魂や情熱がこもった場所として、多くのファンから「聖地」と呼ばれ親しまれている。駅前広場にそびえる「ウルトラマン像」(2006年設立)、祖師谷ふれあいセンター前で愛嬌をふりまく「カネゴン像」(2019年設立)に続き、このたび円谷プロ社屋があった場所に近い「砧8丁目児童遊園」にて、ウルトラセブン像が建立される運びとなった。

『ウルトラセブン』(1967~1968年)で地球防衛軍「ウルトラ警備隊」のモロボシ・ダン隊員を演じた森次晃嗣。55周年を祝うモニュメントが建立されたことについて森次は「円谷英二さんもきっと喜ばれていると思います。ウルトラマンとウルトラセブンでウルトラマン商店街を盛り上げていきたい」と晴れやかな笑顔で語り、駅前広場の初代ウルトラマン像と同じくウルトラセブン像も多くの人々に親しまれてほしいとアピールした。

『ウルトラマンA(エース)』(1972~1973年)で超獣攻撃隊TACの北斗星司隊員を演じた高峰圭二。高峰は20年ほど前から祖師ヶ谷大蔵近くに住んでおり、ウルトラマン商店街に立ち寄る機会も多いという。今年は『ウルトラマンA』放送終了から50年という節目でもあり、高峰は「かれこれ50年ほど、世田谷、砧にはお世話になっています」と、円谷プロ作品の撮影拠点だった「東京美術センター/東宝ビルト(2008年閉鎖)」から続く、世田谷・砧との縁をふりかえった。

『ウルトラマンタイガ』(2019年/メイン監督)などニュージェネレーション「ウルトラマン」シリーズを手がける市野龍一監督は、23年住んでいる地元・祖師ヶ谷が舞台の配信SFドラマ『エンジェルシンク333』の脚本・監督を務めるなど、精力的に活動を続けている。

現在好評放送中『ウルトラマンブレーザー』(2023年)や『ウルトラマントリガー』(2021年)『ウルトラマンデッカー』(2022年)で印象的なエピソードを多く手がける辻本貴則監督もまた、5~6年前から祖師谷の住民であるという。

森次、高峰、祖師谷みなみ商店街振興組合理事長・黒田康裕氏、世田谷区長・保坂展人氏、そして世田谷区の子どもたちが除幕式に参加。森次演じるダンがウルトラアイを目にかざしてウルトラセブンに変身するときのかけ声「デュワッ!」を合図に、4人がロープを勢いよく引っ張った。

一気にベールが解かれ、雄々しいウルトラセブンモニュメントが初披露された。

ウルトラセブンはM78星雲から地球へやってきた正義の超人。巨大化~ミクロ化と自在に身体の大きさを変えられるほか、透視(地球の物質ならば簡単に見通すことが可能)や飛行(マッハ7のスピードで空を飛ぶ)など数々の超能力を備えている。額のランプにはウルトラビームが輝いており、ここからエメリウム光線を発射する。また、頭部のアイスラッガーはセブンの念力によって自在に飛び回り、敵を切断する必殺武器となる。

今回のモニュメントで採用されたのは、セブンの最強光線と言われる「ワイドショット」の力強いポーズだった。ワイドショットは第13話「V3から来た男」で初使用され、エメリウム光線やアイスラッガーを防いだ強敵・アイロス星人を見事に打ち破っている。

ウルトラセブンモニュメントを別アングルからご覧いただこう。ビームランプと両目はふだん消えているが、毎時「30分」になると一定時間点灯する。ちなみに駅前広場の初代ウルトラマン像の目とカラータイマーの点灯は毎時「00分」から3分間。市野監督によれば、駅前広場から砧8丁目児童遊園までは徒歩7分程度で移動できるというので、ウルトラマン、ウルトラセブン双方の電飾ギミックを確認される際の目安にしてほしい。

ウルトラセブンモニュメントの前で、力強いポーズを決める辻本監督、森次、高峰、市野監督。高峰の指に、ウルトラマンエースへの変身アイテム「ウルトラリング」がはめられているのにご注目!

ウルトラマン商店街の街灯は、ウルトラマンタロウ(写真)やウルトラマン、ウルトラセブン、バルタン星人らがイメージされている。カラータイマーを模した丸い窓の中を覗くと、ウルトラヒーローや怪獣などのビジュアルを楽しむことができる。

祖師谷ふれあいセンターの前では、『ウルトラQ』(1966年)のコイン怪獣カネゴンが子どもたちを待ち受けている。このカネゴン像は2019年に建立されたもので、先ごろ補修を終えて復帰を果たしたばかりだという。

お金を食料とするカネゴンの口は財布(小銭入れ)のような形状。ただし、モニュメント像の口の中にコインを入れても食べることができないのでご注意。

食べたお金の金額が胸のカウンターに表示される。設定では、もしもこの数字がゼロになったらカネゴンは死んでしまう。じっとしているだけでカウンターの数字はみるみる減っていくので、カネゴンは生きるためにひたすらお金を食べ続けなければいけない宿命なのだ。

カネゴンの足には、歩行に合わせて点灯する丸い球が左右2つずつついている。モニュメント像は映像作品におけるカネゴンのユーモラスな造型、ポーズ、ディテール再現にとても力が入れられていることがうかがえる。

カネゴン像のすぐ近く、商店街の西側にはウルトラ兄弟の長男ゾフィーがさっそうと飛行ポーズを決める「ゾフィーアーチ」が設置されている。商店街の北端にはウルトラマンアーチ、南端にはウルトラマンジャック(帰ってきたウルトラマン)アーチもある。

祖師ヶ谷大蔵駅前広場に立つウルトラマンモニュメント。11月3日、4日は好天に恵まれ、ウルトラセブンやウルトラマンが大好きな子どもたちを中心に賑わっていた。

3日は駅前広場で「ウルトラセブンのグータッチ会」「超難関!?ウルトラセブンクイズ大会」「元トランプマン2号マジックライブ」などが催された。ウルトラセブンのクイズは「主題歌の歌詞に『セブン』はいくつ入っているでしょう?」という問題に代表されるように、「超難関」の名に恥じない凝った質問ばかりであった。出題のお兄さんが実際に『ウルトラセブン』主題歌を歌って「セブン」の数をカウントしていく趣向もあり、大いに盛り上がった。

モニュメント完成記念式典でも『ウルトラセブン』主題歌に合わせて見事なパフォーマンスを披露した、地元で活動するバトントワリングチーム「Kings(キングス)」によるバトンステージ。この後、市野監督が少年時代に熱中した『ウルトラセブン』の魅力を語るトークショーと、祖師ヶ谷大蔵ウルトラマン商店街の全面協力を得て製作した配信SFドラマ『エンジェルシンク333 シーズン1』第1話の上映が行なわれた。ステージ横の物販コーナーでは同作のDVDを販売しており、市野監督自ら作品の魅力をアピールしつつ、エキストラ参加もこなした商店街のみなさんへの感謝の気持ちを表していた。