女優の松本まりかが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、10月1日に放送される『私がつながりたいもの ~スマホがないと生きられない時代~』。スマホを持てない人たちが駆け込む格安スマホ店「誰でもスマホ」にやってくる人たちに密着した作品だ。

スマホによって様々なものとつながることができるが、それをきっかけに依存してしまうことの恐ろしさも目の当たりにした松本。決して特別な事例ではなく、「自分事として感じられました」と受け止めたという――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した松本まりか

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した松本まりか

■ホストにのめり込む女性に心痛

今回登場するのは、客がツケを支払わないまま姿を消したことで借金を抱え、スマホが使えなくなった歌舞伎町のホスト・礼人さん(27)。ホストクラブへ通うために歌舞伎町で夜の仕事に就き、ストーカー行為に及ぶ客から逃げるために2台目のスマホを契約するアヤさん(仮名・20代)。そして、薬物使用で服役していた刑務所から出所し、社会復帰の第一歩としてスマホを手に入れた石川さん(仮名・48)だ。

この3人の姿に、ナレーション収録中に思わず「切ない…」とつぶやいたり、つらそうにため息を漏らしたりしていた松本。「私は基本的に、事前に原稿を読まないで本番に臨むことが多いのですが、そうすることで、視聴者の人と同じ気持ちで読むことができるんです。だからとても集中できるし、“次に何が起こるんだろう?”というライブ感で自分の気持ちを連れていってもらえるのですが、今日は本当に連れ回されました」と、感情が揺さぶられた。

特に、心を痛めたのが、スマホからつながってホストにのめり込み、「ホストクラブに行ってこその生きがいだから」と断言するアヤさんの姿だった。

「ホストの人から『連絡する』と言われて満たされたように見えましたが、きっと本当の意味で満たされたのではなくて、そう思い込むことで自分を安心させているように感じました。それは、とても危ういなと」

だが、それは決して彼女だけに起こり得ることではなく、「自分事として感じられました。もしかしたら、私も心が弱っているときに、別のものに依存してしまうかもしれない。そう考えると、物質的には豊かな国だけれど、現代の日本人が幸せではないと感じてしまうことの象徴が見えた気がするんです。これはホストにハマる女の子の話だけど、いろんなことに置き換えられるのを感じて、“ズン”と重いものが心にきました」と痛感。

だからこそ、「今、幸せではないとか、なぜ自分が幸せでないか分からない人、そして『生きがいがあるから大丈夫』と自分に言い聞かせている人や、むしろそうでない人にもより、この番組を見てほしいですね。“こうしたらいいんですよ”という答えは言っていないけど、この現実を見ることで、答えを見つけるチャンスを与えてくれる。それが、アヤさんのお話にあったと思います」と呼びかけた。

■私たち自身が“どう生きますか?”と問われる話

薬物の使用を繰り返し、これまで5度も服役した過去を持つ石川さんは、スマホを手にすると早速、就職先を見つけて働き始めることができた。その姿に、松本は「顔にモザイクはかかっていますが、すごく晴れ晴れとしているのが分かって、こんなふうに立ち直れるんだなと思ったんです」と印象を語る。

就職先の社長は、元受刑者の支援を積極的に行っている人物。その姿勢に、「本当に素敵だなと思いました。そういう心のある人がもっともっと増えればいいなと思うんですが……みんな余裕もないし、難しいんですよね。でも信じてあげようとすることでしか石川さんを救えないし、信じてみることで自分も救われると思うんです。“彼のために何かしてあげる”というよりも、そういう連鎖が起きる社会になったらいいなと思います」と願った。

  • 刑務所から出所してスマホの契約に来た石川さん(仮名) (C)フジテレビ

格安スマホ店には他にも、経済的理由や過去の不正行為など、様々な事情を抱える人たちが集まってくる。

「社会の表舞台で生きている人たちや、キラキラと加工された世界の情報は世の中に出てくるけど、こういう人たちが現実に多くいらっしゃるということは、あまり表に出てこないじゃないですか。スマホがないだけで社会に入っていけない人たちを弾(はじ)くのではなく、そういう人たちがいることを私たちから理解しなくちゃいけないと思うんです。今回の番組は彼らの話ではなくて、私たち自身が“どう生きますか?”と問われているお話だと思いました」