アイドルグループ・SixTONESの松村北斗となにわ男子の西畑大吾がW主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『ノッキンオン・ロックドドア』(毎週土曜23:00~)でメイン監督を務める堤幸彦氏。2014年1月放送の『トリック新作スペシャル3』以来、9年半ぶりにテレビ朝日のドラマでメガホンを取り、『トリック』(20年~)、『ケイゾク』(99年~)、『SPEC』(10年~)など、唯一無二の“バディものミステリー”を次々と大ヒットさせてきた堤監督は、今作にどんな思いを込めたのか。

このたび行われた囲み取材では、堤監督にW主演を務める松村と西畑の俳優としての魅力、それぞれの所属グループ・SixTONESとなにわ男子に抱いていた印象、レギュラーキャストたちとの役作りについて話を聞いた。「一生の思い出になると思います」――堤監督が『ノキドア』をそう表現した理由とは。

  • 堤幸彦監督

    堤幸彦監督

■主役の2人が強い存在感を放つ骨太のミステリーに

――『ノッキンオン・ロックドドア』の制作が決定したとき、どんなドラマにしたいと考えていましたか。また、実際に制作されてからの手応えも教えてください。

30分の枠なので、お遊び要素は控えてコンパクトで質の良いミステリーを作りたいと考えました。物語が始まり、混乱が起き、気付きがあり、最終的に謎を解くという事件の流れがあって、さらに倒理(松村)、氷雨(西畑)、穿地(石橋静河)、美影(早乙女太一)が持つ秘密がサブストーリーとして展開され、それが後にメインとなっていくという構成をやりきるには、脇にそれずに真面目なミステリーにしなきゃいけないと思いまして。クスッとできる部分も多少は入れましたが、あくまで刺身の“つま”のようなもの。主役の2人が強い存在感を放つ骨太のミステリーに仕上がったなと自負しています。

――青崎有吾先生の同名小説が原作ですが、どんなところに魅力を感じましたか。

「これ誰だっけ?」とちょっと戻って読み直して進めていくという推理小説もある中で、『ノッキンオン・ロックドドア』はとても理解しやすく、サクサクと読めるポップな作品だと感じました。原作者の青崎(有吾)先生に一度お会いしたのですが、“ロックなリズム感”をお持ちの方でして。ドラマには盛り込めなかったのですが、名バンドのチープ・トリックがモチーフになっているくだりが出てきて、ポップカルチャーのリズム感が筆のノリとリンクしているような印象を受けました。その原作のリズム感を、ドラマを作るうえでヒントにできればと思っていました。

――演出面でこだわったところを教えてください。

ジャズをベースにしたfox capture planという、非常に名うてでスゴテクのバンドに劇中音楽を作っていただきました。たとえば1時間のドラマですと、方向性の違う音楽を40曲くらいオーダーして、どう貼り付けていくかというのが作品のリズムを生むうえで非常に重要な要素になるのですが、今作は30分に凝縮されたミステリーと過去の秘密という2軸を、原作小説、非常に理知的で的を射た浜田(秀哉)先生の脚本をベースに、fox capture planという音数は多くないけど主張の強いバンドの音楽、そしてSixTONESとなにわ男子のドラマにぴったりとはめて作っていただいたようなW主題歌のみで構成できたので、シンプルで明快なパズルのようでした。これらのピースがガチッとハマったので、楽とは言いませんが、ほとんど悩んでいないです。

■SixTONESは「MVがかっこいい」なにわ男子は「ライブが面白い」

――SixTONESとなにわ男子にはどんな印象を持っていましたか。

SixTONESは、ミュージックビデオがとにかくかっこよくて、誰が監督をしてるのかなと興味を持っていました。LEDや光の使い方、カットワーク、そして振り付けも魅力的で。経験談ですが、こういう作品の制作現場は、曲のオーダーを受けてから、コンテやアイデア出しにかけられる時間ってほとんどないと思うんです。その中で非常に都会的でポップで、クオリティの高い映像を生み出すのはすごいなと思っています。なにわ男子の皆さんは、メンバーの個性が強いですよね。やっぱりライブが面白いので、関ジャニ∞とは違うかわいさや愛らしさを含め、ちゃんと自分たちの“売りポイント”が分かっている、面白い方々だなという印象を持っていました。

  • テレビ朝日提供

■レギュラーキャストへ役作りについて伝えたこと

――レギュラーキャストの皆さんには、「こう演じてほしい」というお話をされましたか。実際に演じたところを見ての感想も教えてください。

松村くんは無言でも画が成立するくらい見ての通り素晴らしい顔立ちの方ですが、「早口でガシガシ言ったあと、それがどう広がっていくかは考えず、言いっぱなしでいいよ、ちょっとわがままキャラでいてほしい」「上から目線な奴で」というイメージは伝えました。こういうキャラが壁にぶち当たって悩む姿が面白いですよね。松村くんが事前に台本を読んで考えてきてくれた倒理が、僕の考えとそんなにずれていなかったので、彼を後押しする形になりました。主要メンバーが並んだところを見ると、背が高くてすっきりとしていて、黒いファッションで謎めいていて、氷雨くんとはっきり違いをつけられたので良かったなと。

氷雨については西畑くんへ「一拍飲み込んでから話し始める、丁々発止ではない、自分だけのリズム感を持っている人にしてほしい」と伝えました。「倒理がガッと来ても、キャッチボールのように受け止めるのではなく、変化するリズムを持っていてほしい」と。ただメガネキャラでもあるので、言葉は理知的であってほしいと思いましたし、最初はちょっと控えめなキャラで、倒理が話すことを受ける立ち位置になるかもしれないけど、徐々に変化していくから理解してねとも言いました。リズム感の微妙に違う2人が、成立しているのかしていないのかよくわからないコンビとして登場する面白いドラマになりましたし、松村くんも西畑くんもぴったりハマったなと思っています。

石橋さん演じる穿地は、実は一番難しい役どころ。目の前で展開されていて見れば分かるだろっていうことに対して「えっ!? 何してるんだお前ら」と言わなければいけない、横溝正史作品にも必ず出てくる「ボケ刑事キャラ」なのですが、それをスッとしたビジュアルの石橋さんがやっているのが面白くてしょうがなくて、大正解だったなと。無表情だったり、大食いキャラになったり、「自分の利にならないことはやらない」と言いながらも最終的に刑事の性でW探偵の話に乗ってきたり……今作において、変化球の魅力的なキャラクターになりました。

その助手役の駒木根(隆介)くん演じる小坪が私はもう大好きで、存在するだけでドラマとしての幅を広げてくれたと感じています。畑(芽育)さん演じる薬子ちゃんもとにかくかわいらしくて、ツッコミ要員として探偵事務所にいてくれて本当に良かったなと。角田(晃広)さんが演じる仲介屋の神保も、ストーリーを引っ掻き回しながら、視聴者と同じ客観性を持つキャラクターとして面白いと思います。そして大好きな渡部篤郎さん。主役のかっこよくて若い男の子2人が縦横無尽に活躍し、かっこいい男をしっかりとかっこよく演じられる渡部さんが締めるという映像は、“演出得”ではないですが、目がうれしいという感覚になりますね。早乙女くん演じる美影は、登場から最終回に至るまでの立ち振る舞いが今作の大きな鍵になる役どころ。今ここでは細かく説明しないので、ただただこれからの展開を楽しみにしていていただきたいです。