「ご提示いただけますでしょうか」のように、ビジネスシーンでよく使用される「ご提示」という言葉。今回は、この「ご提示」について、敬語表現や自分に対して使えるのかといった使い方、類語・言い換え表現、英語表現などを解説します。

「ご提示」の意味とは

  • 「ご提示」の意味とは

    「ご提示」について

提示とは、差し出して相手に示すという意味です。 以下、『広辞苑 第七版』掲載の「提示」の意味です。

てい‐じ 【提示】
差し出して相手に示すこと。「妥協案を―する」
[広辞苑 第七版]

「提示」は、「相手に見せて理解させる」という意味合いで使用します。ビジネスシーンでは「お見積もりをご提示いただけますでしょうか」といったように使用しますが、「見積もりを見せてもらえますか」という意味合いです。

「ご提示」は多くの場合尊敬語として活用されますが、自分自身の動作を指して表現する場合は、謙譲語として用いられることもあります。

「ご提示」と「ご呈示」との違い

「ご提示」と混同しやすい言葉に、「ご呈示」があります。「呈示」の意味は以下の通りです。

てい‐じ 【呈示】
差し出して見せること。「旅券を―する」
[広辞苑 第七版]

つまり、かみ砕くと二つの意味の違いは以下の通りです。

  • 提示=見せたうえで理解させる

  • 呈示=相手に見せる

「提示」は相手に見せて理解をさせると意味合いで使用されますが、「呈示」はただ単に見せるというニュアンスです。

「ご提示」は自分に使える?

先述した通り、「ご提示」は尊敬語として使用されますが、謙譲語として自分に対して使用することも可能です。以下は謙譲語として使う場合の例文です。

  • こちらの件のお見積もりは、次回ご提示させていただきたく存じます

「ご提示」の使い方・例文

  • 「ご提示」の正しい使い方・例文

    状況ごとの「ご提示」の使い方・例文を紹介します

ここからは、文章に用いる際にどのような状況で使うのかを、例文とあわせて解説します。

正しく理解し、適切に使用しましょう。

相手に依頼するとき

「ご提示」は、相手から提示をしてほしいときに「ご提示をお願いいたします」と依頼する形で使われます。

「ご提示願います」と表現される場合もありますが、「お願いいたします」に比べて少し砕けた印象を与えるため、ビジネスの場では「ご提示お願いいたします」を使いましょう。

例文は以下の通りです。

  • お手数ですが本人確認のため、身分証のご提示をお願いいたします

  • ご希望の日時のご提示をお願いいたします

相手に提示されたとき

「ご提示」は相手から見せられたときに使う場合もあります。この場合は「ご提示いただいた○○」という形が適切です。

また、相手が提示した提案や日程に意見する際には、「ご提示いただいた○○のうち~」という表現が使われます。

例文は以下の通りです。

  • ご提示いただいた内容で問題ありません

  • ご提示いただいた日程で問題ありませんので、このまま予定通りに進めていきましょう

  • ご提示いただいた日程のうち、後半の3日間なら全日空いております

自分が相手に何かを見せるとき

「ご」には尊敬語だけでなく、謙譲語や丁寧語など敬語全般の意味が含まれます。そのため、自分が動作するときの謙譲語としても「ご提示」の表現が可能です。

自分に対して「ご提示」を使うときは、「ご提示いたします」と続けると丁寧な印象を与えます。

例文は以下の通りです。

  • 本件の詳細については、後ほどこちらからご提示いたしますので、お手数ですがご確認をお願いします

  • こちらの商品につきまして成分表をご提示いたしますので、アレルギーなどあればお知らせください

ビジネスシーンで使える「ご提示」の敬語表現・丁寧な表現

  • 「ご提示」の敬語表現

    ビジネスシーンで使える「ご提示」の敬語表現を紹介します

「ご提示」は、ビジネスの場において広く活用できる正しい敬語です。さらに丁寧な表現にしたい場合、以下のような敬語に言い換えましょう。

  • 「ご提示いただきたいです」

  • 「ご提示いただきたく存じます」

  • 「ご提示いただけますと幸いです」

  • 「ご提示いただけますでしょうか」

「ご提示」の類語・言い換え表現

  • 「ご提示」の類義語表現

    「ご提示」と似た表現を解説します

ここでは、「ご提示」の類語・言い換え表現を紹介します。

「ご呈示」

「ご呈示」は「差し出して見せる」ことを表し、「相手に見せる」という意味の「ご提示」とほぼ同じニュアンスで使えます。

ただし、「相手に理解させる」というニュアンスは無いため、全ての「ご提示」をそのまま言い換えることはできません。

「ご教示」

「ご教示」は「相手に教える・教えてもらう」という意味であり、「考えを示す」「考えを教えてもらう」ことを表す「ご提示」とほぼ同じニュアンスで使えます。

ただし、「相手に見せる」「差し出す」というニュアンスは無いため、「ご呈示」と同様に、全ての状況において「ご提示」の言い換えとして用いられる言葉ではありません。

「ご提案」

「ご提案」は「考えや意見を相手に示す」という意味であり、「考えを教える・教えてもらう」という意味の「ご提示」と同じニュアンスで使えます。

ただし、書類や身分証明書など、形のあるものに対しては使えません。「提案」と言い換えて適切かどうかを確認したうえで使用しましょう。

「ご提示」の英語表現

英語にも「ご提示」と同じ意味で使える表現があります。

「見せる」という意味を伝えたいときは、「show」を使います。「ご提示ください」や「ご提示をお願いいたします」などと同じ意味にしたいときは、「Please show me」と依頼する形にしましょう。

そのほか、「差し出す」や「提出する」の意味を持つ「present」や「give」なども「ご提示」と同じ意味で使える表現です。

  • Please show me your ticket.
    チケットをご提示ください

  • Show me your passport, please.
    パスポートをご提示ください

  • We will present you with an estimate.
    見積もりをご提示させていただきます

  • Could you give us an estimate?
    見積もりをご提示いただけますか

「ご提示」は相手に対しても自分に対しても使える敬語

「提示」とは、「相手に差し出して理解させる」という意味です。「ご提示」は、尊敬語として相手に対しても、謙譲語として自分に対しても使用できます。ぜひビジネスシーンで活用してくださいね。