今回は、「戦う」と「闘う」の違いを解説します。スポーツ・病気・眠気には、どちらの「たたかう」を使うのが適切なのかご存知でしょうか。意味の違いや使い分けがよく分からないという人は、ぜひチェックしてください。

「戦う」「闘う」の違いとは

  • 「戦う」・「闘う」の違いとは

    「戦う」と「闘う」の違いはどのような点でしょうか。

「戦う」と「闘う」読み方は同じですが、使い方や意味は異なります。

「戦う」とは、武力を用いた争いや競技・選挙など、直接目に見える形で優劣を決めるために、争ったり競ったりすることを意味します。

一方の「闘う」とは、直接目には見えないものと争うことを意味します。例えば、権利や利益を守るために武器でなく言論で争うことや、障害・困難・苦しみなどに立ち向かうことなどが該当します。

どちらも「何かと争う」ことを意味する言葉ですが、争う内容によって使用する漢字が変わることを覚えておきましょう。

「戦う」と「闘う」の意味

  • 「戦う」・「闘う」の意味

    「戦う」と「闘う」の意味についての解説です。

前述の通り、「戦う」と「闘う」は、どちらも「何かと争う」ことを意味しますが、言葉が持つニュアンスは異なります。

ここでは、それぞれの言葉の意味について詳しく説明します。

「戦う」の意味

「戦う」という言葉の意味は、主に2つあります。

1つ目は、軍事上の力・兵力を使って紛争を解決して、相手を服従させようとすることです。2つ目は、競技や選挙などで相手と力を競って、優劣を決めることです。

どちらも、直接目に見える争いとなり、「相手に勝つことを目的」にしている争いであることが共通しています。

また、「戦」の字には、「戦、試合、競争」の意味があります。「戦」の意味を見ても、「争う」意味を含む言葉であることが分かるでしょう。

「闘う」の意味

「闘う」という言葉には、権利や利益を守るために争うことや、障害や困難、苦しみなどに挑むことの意味があります。

「闘」の漢字は、「たたかう、争う」の意味があり、2人の人間が道具を手にとり向かい合う様子から成り立っています。

つまり、「闘う」はあからさまな争いではなく、張り合うもの同士が向かい合い、対抗心を燃やし合うイメージといえます。「自分の要求を相手にのませるため」「自分の利益を求め続けるため」の争いを意味しており、武力や身体能力での争いは含みません。

障害や困難、苦しみなど目視できないものとの争いについて、負けないよう努力したり、乗りきろうとしたりするときもに使われます。

スポーツ・病気・眠気の場合は「戦う」と「闘う」どっちを使う?

「直接目に見える形で競い合い、優劣を決める争い」のときに使う漢字は「戦う」となるため、スポーツなどの競技の場合は「戦う」を使います。

  • ベスト8進出をかけた戦いが始まる

一方で、病気や眠気などは、目に見える争いをするのではなく、自分自身で何とかしようとするものなので、「闘う」を使います。

  • 彼は今まさに眠気と闘っているところだ
  • 彼女は長い期間病気と闘っている

「戦う」の使い方・例文

  • 「戦う」の正しい使い方・例文

    「戦う」の正しい使い方について、例文での解説です。

前述の通り、「戦う」は「軍事上の力・兵力を使って争うこと」や、「競技・選挙で互いに競い合うこと」を意味します。

ここでは「戦う」の正しい使い方を、例文を用いて紹介します。

彼は国を守るために命がけで戦うつもりだ

彼が国を守るための争いに身を投じようとしていることが分かる例文です。

争いの相手は明言されていませんが、「戦う」としているため、この争いが軍事力や兵力を用いた直接的なものであることが読み取れます。

この例文で「戦う」でなく「闘う」を用いた場合、政治的な言論による水面下での争いのような異なるニュアンスの文章になるため、使い分けに気をつけましょう。

選挙で戦ううえで、必要な心構えを学んだ

この例文は、選挙での争いを意味しています。前述の通り、選挙で争う際には、「戦う」という言葉が使用されます。

選挙戦は兵力を使わずに戦いますが、目に見える争いで互いに張り合い、どちらが優れているかを決める争いのため、「戦う」を用いることが一般的です。

一回戦で強豪校と戦うことになった

この例文からは、スポーツなどの団体競技での争いが読み取れます。前述の通り、競技で競い合う際には「戦う」という言葉を使用します。

「試合」という、直接目に見える形で互いの力を競って勝ち負けを決める争いのため、選挙と同様に競技にも「戦う」を用いることが相応しいといえます。

「闘う」の使い方・例文

  • 「闘う」の正しい使い方・例文

    「闘う」の正しい使い方について、例文を用いて解説します。

前述の通り、「闘う」は「権利や利益を守るために争うこと」や「障害、困難、苦しみなどの直接目に見えないものに立ち向かい努力すること」を指します。

ここからは、「闘う」の正しい使い方を例文とともにご紹介します。

彼は病魔と闘い続けている

この例文では、彼が病魔との争いを続けていることが表現されています。

「闘う」としているため、武器を手に「病魔」と直接争っているのではなく、病気を「病魔」を捉え、それに挑んでいる様子が読み取れます。

彼女は権利拡大のために闘った

彼女が権利拡大のための争いに身を投じていたことを表現した例文です。「闘う」としているため、直接的に武力や選挙で権利を勝ち取ろうとしたのではないことが分かります。

このように、目に見える力での争いでなく、自分にとって妨げになるものや困ることに打ち勝つため努力することを表すときは「闘う」を使います。

今日は眠気と闘い続けた1日だった

眠気との争いを表現した例文です。眠気とは直接的には争えません。「闘う」と記載することで、眠気という障害や困難を乗り越えようと努力したことが表れています。

「戦う」「闘う」の類語・言い換え表現

  • 「戦う」・「闘う」の類語・言い換え表現

    「戦う」と「闘う」の類語や言い換え表現の紹介です。

ここでは、「戦う」と「闘う」の類語・言い換えの表現について説明します。

どちらも、争いの内容やどこに重きを置くかによって言い換え表現が変わります。

「戦う」の類語には、以下が挙げられます。

  • 交戦する:戦闘を交えること

  • 競う:負けないように張り合うこと

  • 勝負する:勝ち負けを決めること

「闘う」の類語は以下の通りです。

  • 奮闘する:力のかぎり闘い努力すること

  • 闘争する:争い・闘うこと

「戦う」と「闘う」の違いや使い分け方を知っておこう

「戦う」と「闘う」2つの言葉には、はっきりとした違いがあります。

「戦う」は軍事上の力・兵力を使う争いや、選挙・試合ではっきりと決着をつける争いのときに使う言葉です。

一方の「闘う」は、権利や利益を守るための言論による争いや、障害・困難・苦しみなどに立ち向かい努力するときに使います。

「戦う」と「闘う」それぞれの違いを覚えて、正しく使い分けできるようにしましょう。