日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’23』(毎週日曜24:55~)では、生まれつき体を自由に動かすことができないサウンドクリエイターの井谷優太さんを追った『好きなことを貪欲に 脳性まひの僕が創る音楽』(日本海テレビ制作)を、きょう18日に放送する。

  • コロナ後初のオンラインライブにて

井谷さんは生まれつき、体を自由に動かすことができない。出産の際、産道に長くいたことで酸欠状態となり、「脳性まひ」と診断された。高校までは地元・鳥取県の特別支援学校に通学、卒業後は実家から近い社会福祉協議会でパソコン入力などの事務作業を担っていた。

しかし、「毎日作業所に同じように行ったりするだけではつまらない。なにか他のことをやりたい」と父・憲人さんに懇願。「自分が社会から認めてもらえてるかどうか計るのは一人では無理なこと。だから、社会と交わることを望んだ」という。

25歳で退職し、サウンドクリエイターとして音楽作りを行うように。現在は鳥取県倉吉市で一人暮らしし、障害者年金と楽曲制作報酬で生計立てている。

作曲に使うのはパソコン。マウスを使い、様々な音がプリセットされた音色からほしい音を選んだり、シンセサイザーを使ったりしながら曲を作っていく。作られた曲は、幻想的でありながら優しさがある作風が特徴。オーケストラを交えた曲や、EDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック))得意。2015年には、障害を持つミュージシャンによる 国際音楽コンクール「ゴールドコンサート」でグランプリを獲得し、21年には東京パラリンピックの開会式にも出演を果たした。

取材を通して見えてきたのは、人を引き込む「人柄」だ。幼いころから彼の髪を切り続けている理髪店の店主によると、昔は優太さんが話している言葉を聞き取るのが難しかった。社会と関わる上でコミュニケーションが大事なため、劇団に入り、発声も練習。理髪店店主との会話で「この間婚活パーティ行ってきた」と、包み隠さずカメラの前で話す。

また、昔からゲームが好きで、多くのゲーム音楽に触れてきた経験が曲作りの礎となっている。しかし優太さんは迷うことなく、イメージを具現化。大枠のメロディやリズム、伴奏などを作った後で微調整を繰り返していく作り方だ。

昨年9月、車イスユーザーでも機能的でファッショナブルなオシャレを楽しめる服をデザインする「日本障がい者ファッション協会」が、パリコレに出展。協会内に優太さんの知り合いがいたことから、OPムービーやショー中のランウェイで流す楽曲制作を依頼された。「アンニュイな曲に」「フランス映画のような雰囲気に」など、映像に沿った世界観を表現してほしいというオーダーがあったが、優太さんは迷うことなく、一気に曲を作り、少しずつ微調整を加えていく。

依頼した平林さんは「彼に障害があるかどうか、気にしたことがない。ただ音楽において才能がある。それだけ」と高く評価。今年9月に東京ビックサイトで行われるファッションショーの音楽も依頼した。

障害者が社会と共存するカタチとは。いち音楽家として世界を舞台に活躍する優太さんの2年間を、柳原可奈子のナレーションで追っていく。

  • 小学4年生頃の高知への家族旅行

  • 自宅での作曲作業

  • 昔から通う理髪店

  • 曲が流れたパリコレファッションショー

  • 「鳥の劇場」舞台出演