日本テレビ系ドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’23』(毎週日曜24:55~)では、「トラベルドクター」の伊藤医師を取材した『最後に見たい景色 旅行を処方するドクター』(中京テレビ制作)を、きょう14日に放送する。

  • 旅行者に海を見せるため砂浜に移動

人生の最期を迎えようというとき、「思い出の場所に行きたい」「家族と旅行がしたい」と考える人は少なくない。しかし旅先で何かあったら…と断念してしまう人がほとんどだ。こうした諦めていた旅行を医療の力で叶えるのが「トラベルドクター」。旅行を願う人とその家族の思いが詰まった旅で、目に焼き付けた景色とは。そして伊藤医師が“旅行を処方”する原点には、自分らしい生き方を制限する医療への疑問があった――。

保田正さん(75)は2021年、がんで余命数日と告げられ、家族から父の大好きな海を見せてあげたいと依頼が来た。伊藤医師はすぐに旅先を下見し、旅館や医療機関と連携。主治医は、“不要不急”の旅行ではないと判断して了承され、保田さんは、海の景色を目に焼き付けることができた。

2週間後、保田さんは逝去。旅行に同行した家族は、最後に親孝行ができたと語る。伊藤医師は「病気があっても医療の力で背中を押すことができれば、これが僕にとっての医療じゃないかな」と話した。

伊藤医師は、旅行を叶える「仕組み」を作りたいと、トラベルドクター株式会社を起業。理念に賛同した理学療法士、看護師、カメラマンを雇い、トヨタ車体から技術者を期間限定で迎え入れる。医療の展示会に出展し、営業活動も開始。ソニーなど大手企業が関心を示し、ニーズの高さを再確認する。

今年、同期の医師が高級外車を乗り回すなか、伊藤医師が初めて買った車は福祉車両。車いすや寝たままでも乗り込め、移動の負荷も低い。車を使った旅行プランを実現させるためだった。車両を開発するトヨタ車体にも出向き、旅行専用の車両作りを目指すなど車旅行に期待をかける。

旅行に備えて散髪する諸熊英伸さん(62)は、がんが進行し、医療麻薬で痛みをこらえていた。伊藤医師はあの福祉車で旅行を叶えようと、依頼が来た1週間後に旅先へ出向いて下見。その最中、「諸熊さんが転倒した」との連絡が入り、翌日に控えた旅行は中止になってしまう。

「あと1日早ければ…」を何度も経験し。悔しさで涙を流す。旅行は実現できず、1カ月後に逝去。今後は1日でも早く叶えたいと、拠点と車両を増やす決意をする。 

通帳を見ると、融資などで得た1,900万円が、福祉車両の購入や人件費などで5万円にまで減少。着実な収入を得るため、都内で高級老人ホームを展開する会社と業務提携を実現した。しかし、“富裕層だけのサービス”にはしたくないとジレンマを抱えていた。

伊藤医師はクラウドファンディングで車両購入費と旅行資金を集め始めるが、なかなかお金が集まらない。終了直前、応援する知り合いからの寄付が相次ぎ、目標を超える1,118万円に達した。病気で諦めていた旅行に行ける“仕組みづくり”がようやく見えてきた…。

ナレーションは、篠原ともえが担当する。

  • 念願の海を見る旅行者

  • 旅行中に健康を管理する伊藤医師(左)

  • 念願の温泉に入り、孫が見つめる

  • 旅行を終えて談笑