新型コロナウイルス感染症も5類に移行し、2023年のゴールデンウィークは4年ぶりに行動制限のない大型連休を迎えたが、その後も大規模な感染拡大は報じられていない。自動車業界も半導体不足や部品供給の課題も改善しつつあるようだ。
しかし、世界経済に大きな影響を与えているウクライナ情勢はいまだに解決の糸口が見えず、エネルギーから食料品、サービスに至るまで値上げラッシュが続いている。
このような中、国内ではどんなクルマが売れたのだろうか? 自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)が発表した2023年5月の販売台数をもとに、ランキング形式で人気車種の特長を紹介する。
【2023年5月】人気車種販売ランキング
順位 | ブランド通称名 | ブランド名 | 販売台数 |
---|---|---|---|
1 | トヨタ | ヤリス | 12,714 |
2 | トヨタ | プリウス | 9,233 |
3 | トヨタ | シエンタ | 9,109 |
4 | トヨタ | カローラ | 8,771 |
5 | トヨタ | ノア | 7,077 |
6 | トヨタ | ヴォクシー | 6,913 |
7 | 日産 | セレナ | 6,655 |
8 | トヨタ | ルーミー | 6,405 |
9 | トヨタ | アクア | 6,292 |
10 | トヨタ | ハリアー | 6,193 |
※軽自動車および海外ブランド車を除く
1位 トヨタ「ヤリス」
近年は1位の座を守り続けているのが「ヤリス」。トヨタの顔ともいえる世界戦略車で、かつては国内では「ヴィッツ」として販売され、名車「パブリカ」や「スターレット」にルーツを持つ5ナンバーサイズの小型ハッチバックだ。現在は2020年に発売された4代目になるが、TNGAプラットフォームを採用して、車体性能からデザインに至るまで、トヨタを代表するクルマにふさわしい基本性能を備えている。
「ヤリス」のパワートレインは3気筒1.5Lのハイブリッドで、近代の小型車に必須の省燃費と動力性能を両立している。また、2020年8月にはSUVブームにこたえるようにエクステリアをガラリと変えた「ヤリスクロス」を追加し、こちらも大ヒットを記録。ほかにも世界ラリー選手権 (WRC) のホモロゲーションモデルとして、200kW(272PS)を発揮する1.6Lターボエンジンを搭載した「GRヤリス」もファミリーに加えてモータースポーツファンから注目された。
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2位 トヨタ「プリウス」
日本国内はもちろん、世界でも市販ハイブリッドカーの元祖として知られるのがトヨタの「プリウス」。初代が登場したのは1997年なので、もう四半世紀の歴史を持つことになる。2023年に登場した5代目では2代目から継承される“モノフォルムシルエット"を磨き上げ、フロントマスクはLEDヘッドライトを採用したトヨタ車のトレンドでもある“ハンマーヘッド"と呼ばれるデザインを採用した。
車体の方もTNGAプラットフォームは第2世代に進化し、2.0Lエンジンのプラグインハイブリッドと1.8/2.0Lのハイブリッドを用意。電気式4WDシステム「E-Four」や、プラグインハイブリッドにはオプション装備にソーラーパネルのルーフを設定している。このほか、移動できる電源としての給電システムや、後席ドアのハンドルにトヨタ初のスイッチ式を採用するなど、随所に電動車らしいこだわりをみせている。
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3位 トヨタ「シエンタ」
トヨタ「シエンタ」は5ナンバーサイズの車体に3列シートを備えた7人乗りのコンパクトミニバン。2022年8月に登場した3代目でも基本コンセプトは踏襲されているが、デザインはスポーティでアグレッシブだった2代目に対し、初代に近い「シカクマルシルエット」といわれるフレンドリーなものに立ち返っている。
3代目では車体性能を向上させるTNGAプラットフォームも採用され、エンジンも新設計の1.5Lを軸にハイブリッドやE-Four(電気式4WD)も追加。2種類のセンサーを用いた次世代の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタ セーフティ センス)」や、衝突回避や被害軽減などの運転支援システムも充実させている。また、3列7人乗り以外にも、後席と荷室に余裕のある2列5人乗りが全グレードで選択できるようになった。
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4位 トヨタ「カローラ」
「ヤリス」と並ぶトヨタの主力モデル「カローラ」は55年の歴史を持ち、昔から大衆車の代名詞として知られてきた名車。その世界累計販売は5,000万台を超え、現在もギネス記録を更新している。一時期はミニバンやコンパクトカーの台頭によって人気も落ちていたが、2018年に登場した現行の12代目はTNGAプラットフォームによってクルマとしての基本性能を向上させ、ボディも3ナンバーに拡大して若々しいデザインにリニューアルされた。
昔から「カローラ」はファミリーカーとしてのセダンをメインモデルとするが、ワゴンやハッチバック、クーペなどのスポーツモデルもバリエーションに加えてきた。12代目でもこの手法は継承され、さまざまな年齢層やライフスタイルにマッチするボディを展開している。このほか、「ヤリス」同様にエクステリアを大きく変えたSUV版の「カローラクロス」や、ハイパワーモデルの「GRカローラ」もラインアップに加えるほか、水素を燃料とした耐久レースカーも注目を集めた。
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5位 トヨタ「ノア」
トヨタの「ノア」は「ヴォクシー」を姉妹車に持つ人気のミドルサイズミニバン。2022年1月に現行の4代目にモデルチェンジし、TNGAに基づいたGA-Cプラットフォームの採用によって全グレードで3ナンバーサイズになった。パワートレインは1.8L+モーターのハイブリッドと、スポーティな10速シーケンシャルシフトマチックを備えた2.0Lの2本で、それぞれ2WDと4WD、7人乗り/8人乗りの仕様をそろえている。
トヨタを代表するファミリー層向けのミニバンとして、広い室内や多彩なシートアレンジ、パワーバックドアといったラゲージの使い勝手のよさはもちろん、予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」も最新のものが与えられている。この性能が高く評価され、2022年度JNCAP総合評価で最高ランクの「自動車安全性能2022ファイブスター大賞」も受賞した。
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2023年5月の新車販売ランキングのトップはあいかわらず「ヤリス」だが、5代目にモデルチェンジした「プリウス」が一気に2位まで浮上してきた。「プリウス」は初代から一般的なエンジン車とは異なる独自のデザインを宿命づけられてきたが、先代は少し奇抜すぎたためか、マイナーチェンジでフロントやリアを大きく修正している。そのためか、今回の5代目は爆発的に売れた2代目や3代目が正常進化したようなクリーンなスタイリングになっている。
このデザインの傾向は3位の「シエンタ」も同様で、2022年8月に登場した3代目は挑戦的だった2代目よりも初代に近いフレンドリーなデザインに戻している。どちらのモデルも「EV」や「小型ミニバン」のカテゴリーで大ヒットした有名モデルなので、より多くの人に好まれるデザインは販売面でも有利なはずだ。
また、SUVブームも少し落ち着いたようで、再びミドルクラスのミニバンが販売台数を伸ばしている。中でも2022年に登場した4代目のトヨタ「ノア」(5位:7,077台)と姉妹車の「ヴォクシー」(6位:6,913台)が強く、合算では13,990台となって1位「ヤリス」の12,714台を超えるほどだ。また、ライバルである日産「セレナ」も4月にはe-POWER版が加わり、7位(6,655台)につけている。
トップ10ではあいかわらずトヨタ車が9台を占めるという強さで、一時期はトップ3に食い込んでいた日産「ノート」も5月は12位にまで落ち込んだ。「ノート」のプラットフォームを利用してe-POWERを備えた小型ミニバンや、モデル末期になるホンダ「フリード」のモデルチェンジも今秋~来年といわれているが、まだ噂の域を出ていない。しばらくはトヨタ一強の時代が続きそうだ。
※ブランド通称名とは、国産メーカーの同一車名を合算したものであり、海外生産車を含む
※上位台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含む(例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含む)