嵐の松本潤と元SKE48で女優の松井玲奈の共演は見応えがあった。喪失が大きかった三方ヶ原合戦が終わり、精神的に疲れている徳川家康(松本潤)は、お万(松井玲奈)の献身についよろめき、その結果、子供ができる。知らせを聞いた瀬名(有村架純)は事情を確認しようと岡崎から浜松に出向き……。大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)第19回「お手付きしてどうする!」では、家康の、お葉に続いて2人目の女性関係が、硬軟取り混ぜながら描かれた。

  • お万役の松井玲奈(左)と徳川家康役の松本潤

風呂場で向き合って髪をすく場面の、松本と松井、2人の美しさは眼福であった。これが「お手付き」と言われる出来事へと転がっていく。いくらこの時代、側室を持つのは当たり前であったとはいえ、本妻に報告なしに、自由恋愛のようなやり方は許されない。

瀬名に内緒でお万と関わってしまうことは、ともすれば不潔な行為に見えそうでもある。が、松本と松井と演出(加藤拓)は行き過ぎないように抑制し、美しい画のように見せた。

「万の目には……殿は、天人様のように輝いて見えます」というお万のセリフに、松本はふさわしかった。風呂場で家康の髪を梳く松井の仕草も抜群で。風呂の蒸気で汗ばんだ肌やほつれ毛などが色っぽいのだが、下品に家康に迫っていく感じではなく、清潔感があり、家康がつい、瀬名のいない心の隙間を埋めようとしてしまった気持ちもわからなくもないと思わせるのは松井の魅力であろう。そして、松本が、家康をすぐ色香に惑わされるような軽さではなく、できるだけ落ち着いた演技で表現していたことも好感度が高かった。

家康とお万と瀬名のエピソードは一般的には、瀬名が猛烈に怒ってお万を木に縛り付けて折檻するという、瀬名=鬼嫁的なものが有名だ。が、『どうする家康』の瀬名はそうではない。木に縛られたのはお万が自主的にやったことで、瀬名は彼女の事情(戦で実家の神社が焼け落ちて経済的に困窮している)を理解して、穏便に解決する。

妊娠している女性を嫉妬のあまり折檻するとは、言い伝えとはいえあんまりだから、『どうする家康』のように理性的なほうがいい。とはいえ、瀬名の選択は、お金(手切れ金)で解決する方法で、正妻の余裕を醸している。お万は策士で、迂闊者を装いながら虎視眈々と家康を誘惑しようと狙っていた。女の戦いは怖いという印象もある。だが、お万には理念があった。戦の被害者として、戦ばかりする男性を批判し、「政(まつりごと)はおなごがやるべき」と瀬名を焚き付ける。ただの色仕掛けの人ではないのである。それがこの物語では重要だ。

迂闊者キャラを装う実は敏いお万は、作家活動も行っている知性派の松井には合っていたと感じる。松井は、家康ともゆかり深い愛知県出身で、2015年に徳川美術館の開館80周年のイメージキャラクターになったこともあるので、なおさら『どうする家康』にゲスト出演するにふさわしいだろう。ただ、お万の子は、史実的には家康の次男で、徳川家を継ぐことにはならないのだが……。『どうする家康』は三方ヶ原の件といい瀬名の件といい、どんどん別の世界線的になっているので、浜松城を出て行ったお万とその子がどうなるか、予想がつかない。

さて、松井玲奈である。ドラマの公式ホームページには“お万は池鯉鮒神社神主の娘。戦災を逃れ、瀬名仕えの侍女となり、やがて浜松城で暮らす家康のそばに仕えることになる。神秘的で妖艶な魅力が漂い”とある。神秘的で妖艶であるながら、ちょっとうっかりしたところもある人物を演じて、皆を油断させながら家康に近づいた。瀬名も最初は、おっとりして慎ましい人物と信じていたが、実は狙いがあったことに気づくのだ。そういう背景を持った役を、松井は的確に演じていた。

2008年から2015年までアイドルグループ・SKE48の一員として、大きなステージもたくさん経験してきた松井。2010年に女優デビュー以後は、映像でも舞台でも活躍している。NHKでは朝ドラ『まんぷく』ではヒロインの友人、『エール』でヒロインの姉を演じた。

最近は贅沢なバイプレイヤー的な役もやりつつ、ヒロインも堂々演じる。とりわけ、舞台ではキラキラしたザッツ・ヒロインである。例えば、5月1日まで上演していた劇団☆新感線の舞台『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』のヒロイン役は素晴らしかった。シェイクスピアの『オセロ』を下敷きに、1950年代の関西を舞台に置き換えた作品で、松井は、『オセロ』におけるヒロイン・デズデモーナの役割。病院の院長の令嬢モナ(松井)が、ヤクザの若頭オセロ(三宅健)と結ばれるも、周囲の反対や陰謀によって引き裂かれていく悲劇の物語。モナが聡明で純粋な真っ白な光のようであればあるほど、オセロはモナを愛し過ぎて悲劇が大きくなるのだ。その真っ白な人物を松井は見事に演じていた。スカートがきれいに翻るところも、ザッツ・ヒロイン感満載で、エンターテインメントでキラッキラに輝ける稀有な女優である。

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