2019年12月からはじまった新型コロナウイルスの流行から3年、感染者数の減少とともにマスク着用義務も解除され、日本国内では収束ムードが高まっている。生産現場のロックダウンや、半導体などの原材料不足による納期遅れも一部の車種以外は徐々に改善しつつあるようだ。

しかし、それらの問題と入れ替わるようにして、国内ではあらゆる物価の高騰がはじまり、消費者の財布のひもは堅くなっている。3月は年間でもっとも新車が売れる時期だが2023年はどうだったのだろうか? 自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)が発表した2023年3月の販売台数をもとに、ランキング形式で人気車種の特長を紹介する。

【2023年3月】人気車種販売ランキング

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    2023年3月の人気車ブランドトップ10をチェック

順位 ブランド通称名 ブランド名 販売台数
1 トヨタ ヤリス 22,322
2 トヨタ カローラ 21,404
3 日産 ノート 16,167
4 トヨタ シエンタ 14,326
5 トヨタ ルーミー 12,669
6 ホンダ フリード 12,192
7 トヨタ ハリアー 11,028
8 トヨタ ノア 10,984
9 トヨタ アクア 10,945
10 トヨタ ヴォクシー 10,931

※軽自動車および海外ブランド車を除く

1位: トヨタ「ヤリス」

「ヤリス」はトヨタがグローバルコンパクトカーとして展開しているモデルで、現行モデルはTNGAプラットフォームを小型車として初採用したことで、デザイン・走行性能・安全性を大幅に向上させている。エンジンも新設計の3気筒1.5Lダイナミックフォースエンジンとハイブリッドの組み合わせでパワーと省燃費性能を両立。ほかに市街地でも乗りやすい中低速トルク型の1.0Lも加えている。

ラインナップはベーシックな小型ハッチバック「ヤリス」に加え、同じ「GA-B」プラットフォームを使用するものの、3ナンバーのボディを与えられたクロスオーバーモデル「ヤリスクロス」や、WRC(世界ラリー選手権)参戦のホモロゲーションモデルとして、200kW(272PS)のパワーを発生させる1.6Lターボを搭載した4WDバージョンを持つ「GRヤリス」も加わっている。

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2位: トヨタ「カローラ」

昭和の時代から“日本のファミリーカー"の代名詞として親しまれてきたトヨタ「カローラ」。その歴史は55年にもおよび、世界累計販売は5000万台を突破してギネスにも認定されているベストセラーモデルだ。現行の12代目ではほかのトヨタ車と同様、TNGAプラットフォームによって完全に新設計され、デザインもキーンルックフェイスと呼ばれるフロントマスクなど、若々しく精悍なものに生まれ変わっている。

かつての「カローラ」のメインストリームはファミリータイプのセダンだったが、現在はほかにもハッチバック、ツーリングワゴン、SUVのようにさまざまなバリエーションを展開することで、幅広い年齢層やライフスタイルのことなるユーザーを獲得している。「ヤリス」同様、ベースモデルとは外観が大きくことなるクロスオーバーモデル「カローラクロス」や、3気筒1.6Lターボで224kW(304ps)の強心臓力を与えられた「GRカローラ」のようなスペシャルモデルも追加された。

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  • トヨタ「カローラ」

    トヨタ「カローラ」

3位: 日産「ノート」

トップ10の多くをトヨタ車が占めるなか、3位に食い込んでいるのが日産「ノート」。トヨタの「ヤリス」や「アクア」をライバルに持つ小型車で、2018年には登録車全体で、2022年は電動車(ハイブリッドを含む)の販売台数で1位を獲得している。最大の特徴は後述の「e-POWER」だが、ほかにも手放しができる「プロパイロット2.0」や「360°セーフティアシスト」など、日産自慢の運転支援システムも充実させている。

「ノート」が他車と大きくことなるのは、走行はモーターで行うが、発電専用のガソリンエンジンを搭載する「e-POWER」を採用している点だ。現在は電動化がブームだが、電池だけで走るBEVのような電欠や充電の時間待ちといった心配もない。第二世代「e-POWER」では、ロードノイズを検知してエンジンの始動タイミングを行うなどで、さらに静粛性を進化させた。

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4位: トヨタ「シエンタ」

トヨタ「シエンタ」は3列シートに後席スライドドアを備えた5ナンバーサイズの小型ミニバン。現行モデルは2022年8月にモデルチェンジした3代目で、3列7人乗りと2列5人乗りが選択可能になり、エクステリアもファミリー層を意識した優しいデザインに変更された。車体は「TNGA-B」プラットフォームを採用し、エンジンも新設計の1.5Lを軸にハイブリッドやE-Four(電気式4WD)のラインアップを持つ。

安全面では2種類のセンサーを用いた次世代の予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(トヨタ セーフティ センス)」により、衝突回避や被害軽減、標識や信号の見逃し防止などのほか、レーダークルーズコントロール、レーントレーシングアシスト、パノラミックビューモニターなど、ドライバーのミスや疲れをカバーする機能も充実させている。

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  • トヨタ「シエンタ」

    トヨタ「シエンタ」

5位: トヨタ「ルーミー」

長年、ランキングの上位につけている「ルーミー」は全長3.7mの小さなボディの小型ハイトワゴン。トヨタの子会社であるダイハツが設計した「トール」のOEM車だが、軽自動車を主力とする同社のクルマ作りのノウハウが活かされ、小さくて小回りの利くボディにゆったりとした室内スペースを確保している。

「ルーミー」がモデルチェンジもせずに何年もベストセラーである理由は、実際の利用では軽自動車で事足りるとしても、小さすぎる軽に対して不安を持っているユーザー層に受けている点だ。価格も150~200万円台と軽自動車に近く、現在の乗用車に標準とされる安全性能もしっかり装備している。地味で小さいが、実用性の高さやコスパの点ではとても堅実的なモデルといえるだろう。

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コロナ収束ムードのなか、小型・中型ミニバンも復調の傾向に

半導体不足や部品供給は完全に解消していないものの、コロナに関しては季節性インフルエンザと同じ5類への移行が進められると同時に外出自粛の雰囲気も薄まり、今年の3月に入るといよいよマスクも解禁となる。今年のゴールデンウィークは、行動制限が3年ぶりに解除された2022年よりも多い人の移動が予想されているようだ。

これを見越していたとは思えないが、トヨタでは小型の「シエンタ」や中型の「ノア」と「ヴォクシー」のミニバンがモデルチェンジをして台数を伸ばしている。小型ではモデル末期のホンダ「フリード」が奮闘し、中型では日産の「セレナ」も4月20日から待望のe-POWERモデルが加わった。納期との関係もあるが、行楽シーズンがコロナ以前に戻るとなると、ミニバン需要も高まって競争が激化するはずだ。

また、SUVはブームも落ち着いてきたのか、2020年の上半期には1位を獲得していたトヨタ「ライズ」はトップ10圏外に後退している。トヨタの人気モデルとしては、大胆なモデルチェンジを行ったハイブリッドの「プリウス」や「クラウン」もそれぞれ前年比で約200%近い伸び率を見せているものの、半導体を多く使う車両のためか、それぞれ11位、20位に沈んでいる。

コロナが落ち着いたとしても、それ以前から続く半導体や鉱物資源による車載部品の供給不足は解消されず、ウクライナ情勢がそれをさらに悪化させている。これらはヨーロッパの全面EV化に急ブレーキをかけるほどで、世界中の自動車メーカーの戦略にも大きく影響してくるはずだ。ヨーロッパに比べれば日本はBEVの普及率も少ないため、電気代や物価の高騰が解消されないかぎりは、今まで同様に燃費のよい小型車やハイブリッドが主流になるのではないだろうか。

※ブランド通称名とは、国産メーカーの同一車名を合算したものであり、海外生産車を含む
※上位台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含む(例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含む)