新入社員として会社に入社しお金をもらう事は、自立した社会人への第一歩です。自分でお金を稼ぐ事によって、できる事も増えるでしょう。一方で、自分の力で生活をする責任も同時に発生します。そのため、将来の老後生活に向けた資産形成を視野にいれて早めに行動をしておくことはとても重要です。今回は、新入社員が定年退職まで毎月2万円積立たらいくら貯まるかを紹介します。

新入社員も資産形成を考えなくてはならない

新入社員のみなさんは、これまで老後生活の資金の根幹として考えられていた「年金」「退職金」の受給額が、将来高い確率で減少していく可能性がある事をご存知でしょうか。

社会に出たばかりの状態で、40年以上先の事をイメージをするのは難しいかもしれませんが、自立した社会人として将来の事に目を向ける事はとても重要です。

以下の具体的な内容を参考にして、新入社員の段階から老後に向けた資産形成をする事を考えてください。

〇年金受給額の減少
平均的な所得と比較した時の年金受給額の割合を表す指標を「所得代替率」といいます。2019年厚生労働省が公開した情報によると30年後にはこの指標が2割〜3割減少する事が予測されています。

〇退職金の減少
退職金は20年間(1997年〜2018年)で、約1,000万円近く減少しています。勤続年数や職種、学歴などで変動するため一概には言えませんが、厚生労働省が公開している情報によると、今後も退職金が減少することが予測されるでしょう。

就労条件総合調査|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

このように、現代の新入社員が老後生活を送る時には現代の仕組みに期待することは難しいでしょう。現制度のメリットを一番享受できるのは、おそらく今の50代〜現在の老後世代がギリギリかもしれません。 それ以外の世代は、自分自身で資産形成をして老後生活に備える必要があるという事です。

資産形成では「長期的に行う」ことで安全にお金を増やす確率を高めますので、新入社員の早い段階から考え始めるようにしましょう。

新入社員25歳が定年退職65歳まで毎月2万円積立てたら?

資産形成のスタートは早ければ早いほど良いですが、この記事では25歳からスタートして退職する65歳までの期間で毎月2万円積立を行う場合について紹介していきます。

資産形成スタートの25歳という年齢は、浪人・留年・大学院卒の可能性を考え、多くの人が25歳前後には新入社員として社会に出ると仮定して設定しています。 そのため25歳はあくまで参考基準と考え、自分自身の新入社員時の年齢から考えるようにしてください。

色々な方法がある

新入社員の皆さんは、資産形成と聞いてどんな方法を思い浮かべるでしょうか。定期預金や株式投資、不動産投資など様々な方法がありますが、この記事では次の3つの方法をおすすめします。

(1)貯金
(2)NISA/つみたてNISA
(3)iDeco

これらは全て、25歳~65歳までの40年間長期的に行う事を前提として詳しく紹介をしていきます。 (2)(3)に関しては、資産運用での資産形成になるのでその点も意識して確認するようにしてください。

貯金箱

お金を長期的に貯めるという事を考えるときに、多くの新入社員の方は「貯金をする」という事を思い浮かべるのではないでしょうか。

シンプルに40年間毎月2万円ずつ貯金箱に、貯金した場合どれだけのお金が貯まるのかを考えてみましょう。

【最終的な貯金額】

〇2万円×12ヶ月×40年間=960万円

貯金は確実にお金を貯められるため、資産形成の手段としておすすめです。

一方で、ただ貯金箱にお金を入れるだけでは元本(自分が投資した金額)が増える事は決してないという事も覚えておきましょう。

NISA/つみたてNISA

この制度は国が国民の投資意欲を高め、個人で資産形成を活発化的に行う事を目的として作られた少額非課税投資制度です。

【NISA/つみたてNISA概要】
※2024年からの新制度にて記載しています。

概要 成長投資枠(現NISA) つみてたて投資枠(現つみたてNISA)
年非課税投資枠 240万円 120万円
非課税期間 無期限 無期限
投資額上限 1,200万円(つみたて投資枠と合わせて1,800万円) 1,800万円
投資商品 国内外株式・投資信託... 国が定めて一定の基準をクリアした投資信託
制度利用選択 つみてたて投資枠と併用可 成長投資枠と併用可

この制度の最大のポイントは、非課税投資枠内の投資額から発生した利益が非課税になるという点です。 ※通常株式投資等で得た利益に対しては、20.315%の税率がかけられる。

次に月2万円を30年間平均利回り3%で運用した場合、どのような運用実績になるかを確認しましょう。

〇積立元本:960万円
〇運用益:879万円(非課税)
〇積立総額:1,839万円

投資による資産運用を行えば、運用益を再投資する複利の力を使う事ができるため、利益を最大化することができます。

NISA/つみたてNISAを利用することは効率的に資産形成をする上ではとても有効であるという事が分かるでしょう。

iDeCo

企業型確定拠出型年金と呼ばれるiDecoも、個人で老後資金を形成する上で人気の方法です。

【iDeco概要】
加入者は自分で決めた掛金を毎月積立・運用を行います。その運用で得た利益を含めた掛金を60歳以降に一括または分割で受け取る事が出来る制度です。掛金の最大額は、会社員や公務員・自営業者など働いている形態によって上限が決まっています。
iDeco最大の特徴は、運用益だけでなく掛金(元本)に対しても非課税が適応されるという点です。仮に、利回り3%で40年間毎月2万円ずつ投資した場合、運用実績と節税効果がどれくらいになるかを確認してみましょう。

〇積立元本:960万円
〇運用益:879万円
〇積立総額:1,839万円
〇節税効果:178万円

この場合は積立総額より178万円多く資産形成をしたと考える事が出来るでしょう。

NISA制度と同じように、利益を再投資する複利の力を利用することで最大限の運用益を得る事ができるため、新入社員の資産形成におすすめと言えます。

注意点

ここまで貯金・NISA/つみたてNISA・iDecoの3つの方法を紹介してきました。
ただ貯金をするだけでなく、資産運用や非課税制度を使う事で効率的に資産形成をする方法についても理解出来たはずです。
一方でこれらの方法で注意しておかなければいけない事があります。それは、途中で資産運用をやめないと言う事です。
長期投資では、利益を再投資する複利の力を利用することで得られる利益を最大化するという特徴があります。そのため、40年間一度も途切れることなく継続することが、最大限の運用益を受け取るポイントです。

そういった意味でも、生活を安定させた上で資産形成を行う事はとても重要と言えるでしょう。

まとめ

新入社員の段階で老後生活を見据えて、資産形成を考え始める事の重要性が今回の記事で分かったはずです。
社会に出てからの3年間は、知らない事も多く大変な時期が続くかもしれませんが、この期間にお金の知識をつけ将来にわたって自分で自分を経済的に守る方法を身に着けてください。自分自身で知識をつけ資産形成を行う自信がない人は、お金と生活のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーに相談することをおすすめします。

この記事を執筆したカウンセラー紹介


小峰一真(こみねかずま)
所属:株式会社マネープランナーズ

2級FP技能士/証券外務員2種/住宅ローンアドバイザー| 明治大学政治経済学部卒業

大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。 資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。 趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。