オリックスグループは2月4日、仕事と家庭や育児の両立支援の一環として、「夫婦で考える両立セミナー」をオンライン形式で実施した。

グループで働く「子どもを持つ夫婦」を対象に、仕事と家庭の両立や働き方について見直す機会を提供し、子育て世代が自分らしく生き生きと働き続けることへの支援が目的だ。当日の内容をレポートする。

「産後パパ育休」の取得を検討する社員と配偶者約40名が参加

同セミナーは、2016年から毎年実施され、今年で7回目。今回は、一昨年6月に育児・介護休業法が改正され、男性の育児休業取得促進のための「子の出生直後の時期」における柔軟な育児休業の枠組み、いわゆる「産後パパ育休」の創設に伴い、グループ内でいかに男性育休の取得を促進するかをテーマとした。

同グループ主要12社で「男性育休」の取得を検討している社員とその配偶者より約40名が参加。自宅から子どもと一緒に参加する参加者の姿も見受けられ、アットホームな雰囲気のなかプログラムは進行した。

  • オリックスグループ主要12社の「男性育休」の取得を検討中の社員とその配偶者の皆さん 提供:オリックスグループ

開始に先立って人事部より、オリックスにおける男性育休の普及に向けた取り組みの現状が紹介された。配偶者の出産を予定している男性社員の所属長との面談、社員本人との個別面談、職責者向けの産後パパ育休に関するeラーニングの実施などにより、対象となる男性社員のほとんどが育休を取得する予定だという。

パートナーの気持ちに寄り添い一緒に子育てをスタートすることが重要

セミナーは2部構成で、第1部では、育児支援事業を手掛けるパパライフサポート代表の池田浩久氏を講師に迎え、産前産後の家族のコト、育休取得の重要性、育休制度の概要を中心に講演が実施された。

池田氏は、自らの育休、育児経験をベースに、妊娠中や産前産後の母体の変化に応じて、どのタイミングでどのようなサポートが必要とされるかを詳細に解説。一緒に子育てをスタートすることの重要性や、その後の人生における関係性への影響などについても説明した。

さらに、出産後に育児に集中するあまり、孤独感を感じがちなパートナーの気持ちに寄り添い、話を聞いて共感することが大切であること。また、育児作業を男性がサポートすることで、パートナーの睡眠時間を確保することが重要であると指摘する。

育休取得経験者が語る育休取得のメリット&デメリット

第2部では、育休取得経験のある男性社員2名によるパネルディスカッションを実施。2週間の育休を2回取得した新規事業開発に従事する社員と、半年間の育休を取得したエンジニア職の社員が登壇した。

  • 半年間の育休を取得したエンジニア職の社員 提供:オリックスグループ

最初にテーマとしてあがったのは、「育休取得が家庭にもたらすメリット&デメリットと取得前後で意識の変化」。

これについてエンジニアの男性は、子どもを前に同じ時間軸で、夫婦で一緒に子育てに取り組む経験でパートナーとの理解が深まり関係性がよくなった。また、家事・育児に対する理解が深まり、パートナーの大変さを思いやることができるようになったと自らの経験を振り返った。

新規事業開発に従事する男性は、育休にともなう仕事の引き継ぎを通して自ら業務を棚卸しできたこと、育休を経験したことでさまざまな価値観を共有できる意識が芽生えたことを仕事上のメリットとして紹介し、家庭においては、出産後に疲れのピークを迎えたパートナーをサポートでき、新生児の貴重な時間を共有できたと喜びを語った。

育休を取得することで感じた心配や懸念

育休を取得するに際しては、社内の理解、上司のサポートがあったとはいえ、取得することに対する心配や懸念はなかったのだろうか。

二人からは、こういった不安を少しでも軽減するために、日頃から自らの業務を整理し、見える化し、オープンにしておくことや、事前に取引先や社内の関係者としっかりコミュニケーションを取っておくこと。そして、上司にはなるべく早めに育休の予定を共有し、前倒しできる業務は可能な限り前倒しで着手するなど、業務計画を見直すことが重要だとの指摘があった。

また、業務を離れることで昇進への影響がないか、業務に関する知識に遅れが出ないかなどの不安もあったものの、上司のサポートやチーム内での信頼関係が構築されていたことで、まったく問題なくスムーズに業務に復帰でき、育休に対する不安はまったくの杞憂に過ぎなかったという。

長期の育休については収入源についての心配も無視できないが、半年間の育休を経験したエンジニア職の社員の話では、給付額は下がるものの、給与から差し引かれる税金が少なくなったり、場合によって翌年の住民税が軽減されたりするケースもあるようで、心配するほどの影響はなかったそうだ。

第1部の講師を務めた池田氏によると、日本の出生数は2016年に100万人を切り、2022年には80万人を割り込む見通しだという。日本経済の停滞を防ぐために、政府が掲げる「異次元の少子化対策」というのは、まさに待ったなしの状況に突入しつつある。

しかしながら、「産後パパ育休」の普及には、法制度や企業内制度の整備に加え、育休取得者や職責者の意識改革、職場の理解が不可欠であろう。

その意味で、男性育休の具体的な取り組みやノウハウを共有する今回の「夫婦で考える両立セミナー」は非常に有意義なものだと感じた。このようなセミナーが広くオープンな形で実施される機会が増えれば、「産後パパ育休」の普及にもはずみがつくのではないだろうか。