二宮正明氏によるサスペンスコミックをディズニープラス「スター」の日本発オリジナルシリーズとして実写ドラマ化した『ガンニバル』。狂気の世界を描く衝撃作で、吉岡里帆が家族を必死に支えようとする母親役を熱演している。2023年の1月に誕生日を控え、30代に足を踏み入れる彼女だが「30代は攻めの姿勢で行きたい」と晴れやかな笑顔で意欲を告白。本作で味わった充実感や、今後への展望を明かした。

  • 吉岡里帆 撮影:加藤千雅

本作の主人公となるのは、都会から遠く離れた山間の“供花村”に、家族と共に駐在として赴任した阿川大悟(柳楽優弥)。美しい村には「人が喰われているらしい…」との噂があり、大悟がその真相を探る中、次々と不可解な出来事に遭遇。友好的だがどこか不気味な村人たちに囲まれ、次第に狂気の淵へ追いつめられてゆく姿を描く。吉岡が演じたのは、大悟の妻・有希。彼女も不気味な村の恐怖に巻き込まれていく。

文明社会における最大の禁忌というべきセンセーショナルなテーマを題材に、村のおぞましい慣習や巻き起こる事件を緊迫感とゾクゾクとするような描写と共につづった原作は、累計発行部数210万部を超える人気作となっている。吉岡も原作に釘付けになったそうで、「絵力の強い漫画で、村の人たちの表情も印象的。笑っているんだけれど、その笑顔の奥が一番怖い…と思わせるような雰囲気があって。大悟や妻の有希にとっては、村人の誰もが疑わしく感じられてくる。そうやって疑心暗鬼に陥っていく様もとても面白くて、物語に潜む危うさが魅力だと感じています」と目を輝かせる。

実写ドラマの監督を務めたのは、『岬の兄妹』や『さがす』など、繊細な心理描写やサスペンスフルな展開に定評のある片山慎三監督。ディズニープラスで本作のような衝撃作が配信されることには新鮮な驚きもあるが、吉岡は「地上波などではなかなか挑戦しづらい内容。配信ならではのチャレンジだなと思いますし、私自身、参加できて本当によかったなと思っています」としみじみ。「世界を舞台として戦えるクオリティの作品をつくり上げたんだという、チームの一員としての誇りがあります」と胸を張る。

さらに「片山監督は、人間の感情に寄り添った演出をされる方。片山監督が本作を手がけたことによって、人間の凶暴性や業のようなものが生々しく描かれた作品になっている。実写ドラマでの村人の表情も、とても怖いです!」と片山監督の手腕に惚れ惚れ。「霧が立ち込める山の中、村人たちが白装束を着てお葬式に向かっていくシーンなどは『ミッドサマー』(アリ・アスター監督による大ヒットホラー)のような雰囲気も感じて。本作は“ヴィレッジ・サイコスリラー”というジャンルですが、閉ざされた村の恐ろしさを描くことには、日本的な一面としての面白さ、そして海外の方にも共鳴していただけるような感覚があるなと思っています。すごく面白く観てもらえるような気がする」と海外に向けても反応を期待していた。

  • (C)2022 Disney

■母親役を熱演 “娘”志水心音との時間が癒やしに

吉岡が演じた有希は、恐怖に巻き込まれながらも、夫と娘を必死に支えようとする女性だ。「有希は、力強くて明るいけれど、子育てに対して孤独感を抱えている女性でもあります」と役柄を分析した吉岡。

有希の娘・ましろには、ある事件をきっかけに話すことができなくなり、笑うこともなくなってしまったという背景もある。「自分の子どもが、突然話せなくなってしまったなんて、母親としてもその不安はいかばかりだろうと。演じる上では、その感情を一番大切にしていました」と母としての想いを注ぎ込み、「キャラクターとしてはずっと無力感を覚えるような役柄でした。有希の心の動きは、『ましろがいるから踏ん張ろう』ということの連続。“家族を想う気持ちだけでそこに立っている”という感覚は、本作で初めて味わった感覚です」と語る。

撮影現場では、ましろ役の志水心音と「コミュニケーションを取ることを最優先にしていました」という。

「ましろは言葉を話せず、暗い表情をしている女の子。演じる心音ちゃんも、とても大変だろうなと思いました。心音ちゃんがのびのびできて、お芝居に集中できる環境を作れたらいいなと願いつつ、何よりも『現場に来たら楽しいことがある』と感じてもらえたらうれしいなと思って。子ども向けのおもちゃをリサーチして現場に持って行ったり、心音ちゃんが『スライムが好き』だというので、柳楽さんも巻き込んで一緒にスライム作りをしたりしていました。その日は、ものすごく楽しかったです!」と語りつつ、「私自身も、心音ちゃんとの時間にものすごく癒やされていました」と楽しそうに微笑む。