JR東日本は8日、輸送障害の発生時にAIを活用し、設備の状態確認を実施すべき箇所や原因の絞り込みを行う復旧支援システムを日本で初めて開発し、首都圏で導入を開始すると発表した。2022年度内に山手線など首都圏の在来線へ導入する。

  • AIを活用した復旧支援システムのイメージ(JR東日本提供)

現在、鉄道の信号設備は線路沿線に設備された多くの機器を組み合わせたシステムとなっている。自然災害や設備故障に伴う輸送障害が発生した際、早期の運転再開を図るため、技術者のノウハウをもとに、マニュアルに定められた手順に従って装置ひとつひとつの状態を確認しながら確実に原因を絞り込み、復旧作業を進めている。輸送障害の発生原因によっては、係員が多くの箇所のデータを測定する必要のあるケースもあり、原因の特定に時間がかかり、運転再開まで時間を要することがあるという。

新たに導入するAIを活用した復旧支援システムでは、障害の発生状況の時系列を入力することで、AIにより過去のデータベースの中から類似する事例を抽出し、障害の原因や復旧方法の提案を行い、現地係員を指揮する指令員が早期に障害原因の特定や復旧方法を指示できるという。これまで行っていた技術者のノウハウやマニュアルによる復旧方法に比べて、AIの提案により調査箇所や原因の絞り込みが可能となるため、調査時間の短縮を図ることが可能だという。

技術者が経験を積むことが難しい発生頻度の低い事象についても、AIにより障害の原因や復旧方法の提案ができる特徴があるため、長時間の輸送障害削減が期待できる。このシステムを活用してシミュレーションを実施したところ、復旧に約2時間を要した事象に対して、1時間程度まで復旧時間を短縮できる結果が得られるなど、約50%程度の復旧時間削減が見込まれている。

  • 復旧支援システムの画面イメージ(JR東日本提供)

今回開発した復旧支援システムは、今年度内に山手線など在来線の首都圏各線区へ導入。今後は導入エリアの拡大を図るとともに、引き続きデジタル技術の活用について検討を進め、輸送安定性のさらなる向上をめざすとしている。

なお、輸送障害が発生した際に係員が早期に復旧するため、係員のスキル向上としてMR(Mixed Reality)技術を使用したゴーグルによる復旧手順の習得訓練や現地映像を活用した遠隔復旧支援など、輸送安定性の向上に向けた取組みも進めていく。このゴーグルは、工事完成時の検査において現地確認を実施する際に使用し、業務変革にも活用しており、現在、電気関係職場に100台を配備している。