ちなみに、実朝の相談を受けた歩き巫女のおどろおどろしい風貌は強烈なインパクトを放ったが、柿澤は直前まで大竹が演じことを知らされてなかったと言う。「台本をいただいた時に、歩き巫女のところは空白になっていたので、『誰なんだろう?』と言っていたら、大竹しのぶさんだと聞いてすごくびっくりしました」
柿澤と大竹は舞台『スウィーニー・トッド』以来の共演となった。「舞台が終わってからもすごく可愛がっていただき、お互いの舞台を観に行ったりしていました。コロナ前はかなり高い頻度で飲みに連れていってくれたり、ご飯に誘ってくれたりしました。僕が舞台でケガをして地方公演を降板してしまった時も連絡をいただいて、何かと気にかけてくださいますし、僕も芝居や舞台のことでたくさん相談に乗っていただきました」
奇遇にも、柿澤が資料として太宰治の『右大臣実朝』を読む際に、大竹からもらった御礼状のハガキをしおりとして使っていたそうだ。
「僕がしのぶさんの主演舞台『ザ・ドクター』を観に行った時にいただいたメッセージつきの御礼状ですが、それをブックマークとしてはさんでいたんです。やはりしのぶさんの芝居に対する集中力や、役への向き合い方は尋常じゃないので、僕もあそこまで深くいきたいという憧れがあり、今回の大河への懸ける思いもあったので、それを使っていました。それが、まさか実朝の悩みを一発で当てて、実朝の運命についても触れる役柄になるとは!」と、驚きを隠せなかったそう。
この2人の“伏線”があったことで、実朝と歩き巫女とのやりとりが、より深みのあるシーンになったのかもしれない。そして歩き巫女からの「雪の日は出歩くな」という意味深な忠告が、今度どう作用していくのかも気になるところだ。
常に思いやりを持って人と接することができる実朝だが、その優しさがあだとなり、義時たちに翻弄されていくことになる。でも、柿澤演じる実朝のピュアな魅力が際立つほど、彼が見舞われる悲劇もより色濃く描かれるに違いない。視聴者としては、懸命に、そして誠実に生きた実朝の奮闘をしっかりと見届けていきたい。
1987年10月12日生まれ、神奈川県出身。2007年に劇団四季の舞台『ジーザス・クライスト=スーパースター』で俳優デビュー。主な出演舞台は『スリル・ミー』『スウィーニー・トッド』『デスノート THE MUSICAL』『サンセット大通り』『フランケンシュタイン』など。2011年に『ピースボート -Piece Vote-』でテレビドラマ初出演、同年『カイジ2』で映画初出演。映画の近作は『すくってごらん』(21)、『鳩の撃退法』(21)など。大河ドラマは『平清盛』(12)、『軍師官兵衛』(14)に続いて『鎌倉殿の13人』で3度目の出演。
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