テレビ東京系で好評放送中のウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンデッカー』は、前作『ウルトラマントリガー』の世界観を受け継ぎ、新たな光の巨人・ウルトラマンデッカーが謎の宇宙浮遊物体スフィアから人々の平和と未来を守る物語が描かれている。物語の主人公は、地球平和同盟TPUのエキスパートチーム「GUTS-SELECT」の隊員アスミ カナタ(演:松本大輝)。カナタはウルトラDフラッシャーにウルトラディメンションカードを装填し、ウルトラマンデッカーに変身する。
人類の脅威となる侵略者・怪獣に対抗するメカニックの開発を担当しているのが、TPU技術部に所属する科学者アサカゲ ユウイチロウである。TPU最高技術の結晶といえるロボット兵器「電脳魔人テラフェイザー」はウルトラマンデッカーと共に地球の守りとして活躍するが、アサカゲはテラフェイザーを使って「別の目的」を果たそうと考えていた。
第14話で明かされるアサカゲの正体、それは時空を超えてやってきたバズド星人アガムスだった。果たしてアガムスは、地球で何を行おうとしているのだろうか。ここでは『デッカー』の物語のキーパーソンというべきアサカゲ/アガムスを演じる小柳友にインタビューを行い、『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(2010年)以来12年ぶりとなるウルトラマンシリーズ出演に込めた思いや、アサカゲ/アガムスを演じるにあたっての心がまえ、そして人の生き方を変えるほどの影響力を備えた「ウルトラマン」の持つパワーについて語ってもらった。
――当初のアサカゲ博士はGUTS-SELECTメンバーを後方から支える穏やかな科学者、という印象でしたが、実は時空を超えてやってきた宇宙人だったという意外な正体が中盤から明かされます。出演オファーがあったときから、このことは聞かされていたのですか。
そうです。番組開始のころの取材や製作発表ではずっと隠していましたが、オファーをいただいた時点で「ヴィラン(悪役)ですから」と聞いていました。最初のころの台本を読むと、あれ、普通の科学者役だなあって(笑)。初めに聞いていたヴィランと、穏やかな博士とのギャップが凄いな、と思っていたんです。エピソードが進むとともに、この人(アサカゲ)にはこんな生い立ちがあって、最終的にこうなるんだなと理解していきました。
――かつて『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』でウルトラマンゼロに変身するランを演じられた小柳さんとしては、いわゆるヴィラン役になることについてどう思われましたか。
役者として、悪役は面白いですし、やりがいがあります。以前ウルトラマンを演じた俳優が、ウルトラマンシリーズで「悪」を演じるのも、わりと珍しいのではないかと思っています。アサカゲの正体について、脚本を読んでいくと一本筋が通っていて、これだからこうなるよねと納得できる内容でした。テレビを観ているみなさんにとっては「急展開」になるのですが、僕としてはいよいよか、という心がまえがありました。アガムスの行動についての理由が、僕の中ではしっくり来ています。非常にドラマチックなキャラクターなんです。
――いま身に着けられているバズド星人の衣装の着心地はいかがですか。
体にフィットしてとてもカッコいい、素敵な衣装だと思いました。撮影では微妙に暑い時期と寒い時期の両方を経験しましたけれど、この服は暑さも寒さも防いでくれないという、外の空気とまったく合わない素材だったので参りました(笑)。
――アサカゲ博士はメカの開発を担当している設定で、小柳さんもオンライン製作発表のときにはGUTSファルコンとGUTSホークの玩具商品を使って「GUTSグリフォン」に変形・合体させていました。「玩具を合体させるのは苦手」とおっしゃっていましたが、実際にはどうだったのですか。
子どものころから、こういう合体玩具はだいたい壊してしまうタイプです(笑)。発表会見のときも事前に合体の段取りをひととおりやってみましたけれど、本番で一回、鳴ってはいけないような「パキッ」という音が鳴ったので、ちょっとビクビクしながら変形させていました。GUTSグリフォンがどんな形をしているか、直前まで知らなかったので心配でしたが、どうやら上手くできたようです。
――小柳さんの最初のウルトラマン体験はどの作品だったのですか?
僕が幼かったころは、ちょうどテレビでウルトラマンシリーズの新作が放送されていなくて、どちらかといえば『ミュータントタートルズ』や『トランスフォーマービーストウォーズ』といったアメコミ作品が好きで、フィギュアもたくさん集めていました。ウルトラマンの思い出といえば『ウルトラマンUSA』(日本では1989 年公開/アニメ作品)のビデオが家にあったので、それをよく観ていたことを思い出します。
――『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』のラン役に決まったときのお気持ちはいかがでしたか。
それはもう、オーディションで何百人もの中から選んでいただいたので、とても光栄でしたし、嬉しかったです。面接の段階で、アベユーイチ監督となんとなく雑談みたいな感じになり、いいのかなと思っていたら、監督が満足そうなお顔をされていたんです。その時点で僕に決めてくださっていたと、後になって知りました。ランは意識を失っていて、ウルトラマンゼロが体を借りている設定でしたから、撮影前は僕なりに「ウルトラマンをどう演じるのか」について真剣に考えていました。
前作の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説THE MOVIE』(2009年)を観てウルトラマンゼロのキャラクターを研究したり、ゼロの声を演じられた宮野真守さんの口調を真似してみたり、いろいろやることでゼロを自分の体に慣れさせていった感じです。劇中、ラン=ゼロが涙を流すシーンがあって、どう演じればいいか父(ブラザートム)に相談したことがありました。そうしたら父は「宇宙人の涙ってどこから出るんだろう。地球人じゃないから、目とは違う場所から出るかもしれないな」って言ったんです。「この人はすごいことを言うなあ」と驚くばかりでしたが、宇宙人を演じるのならそれくらい幅広い考え方でもいいんじゃないかって、アイデアをくれたんでしょうね。俳優デビューしてまだ何年も経っていないころで、父と一緒に取材を受けたりしました。今もなお、思い出深い作品です。