この記事では「小賢しい」の意味や語源、類語などを解説します。「小賢しい」はマイナスの意味を持つ言葉ですので、使い方には注意が必要です。この機会に意味や使用法など、しっかりと把握しておきましょう。
「小賢しい」の意味や読み方とは
「小賢しい」は、「利口ぶっていて生意気であること」や「悪賢くて要領がいい様子」を意味する形容詞です。
「小賢しい」の語源や歴史
「小賢しい」から「小」を除いた「賢しい(さかしい)」には、「小賢しい」に近い「才知のあるように見せかける様子」という意味もありますが、メインの意味は「才知に長け判断力があって、かしこい様子。優れて見える様子」です。
この「賢しい」に「わずか」や「小さなこと」を意味する接頭語「小(こ)」をつけることで、「賢さが足りない」「賢さが限定されている」ということで、つまり「利口ぶっている」などと、軽んじたりややばかにしたりするようなニュアンスのある表現が「小賢しい」です。
古語としても使われていて、1112年(天永3年)ごろ、平安後期に源俊頼が書いた歌論書である『俊頼髄脳(としよりずいのう)』には「このごろの人はこざかしとやにくまむ」という一節があります。
また1252年(建長4年)、鎌倉中期の教訓説話集である『十訓抄(じっきんしょう)』にも「従者のこざかしく差し過ぎたるは 」とあります。
「小賢しい」は基本的にネガティブな意味であり、褒め言葉としては使えない
「小賢しい」は基本的に悪い意味で使われる表現ですので、特にビジネスシーンで使用する際には注意が必要です。頭の回転が速く、手際がいい人を褒めるつもりで「小賢しいですね」などというのは大きな間違いです。くれぐれも使い方には気を付けましょう。
「小賢しい」の読み方
「小賢しい」は、「こざかしい」と読みます。
「賢」の字は、訓読みでは「賢い(かしこい)」と読むのが一般的ですが、この「賢しい(さかしい)」は、「盛んである様子」を意味する「盛し(さかし)」と同語源とされています。読み方を知らないと初見では戸惑うかもしれません。この機会にしっかりと覚えておきましょう。
「小賢しい」の使い方と例文
「小賢しい」は、「利口ぶっていて生意気であること」や「悪賢くて要領がいい様子」という意味を持つ言葉です。基本的にネガティブな意味で使います。
下記に例文を紹介します。
・彼は確かに優秀なのだが、時折見せる小賢しい態度が鼻につく
・その小賢しい物言いが、最終的には大きな失敗につながってしまった
・相手に小賢しいという印象を与えてしまっては、ビジネスの上では大きなマイナスです
・かわいらしいというより小賢しく思えてしまい、甥のことをどうも好きになれなかった
・彼はいつも小賢しく立ち回っていた
「小賢しい」の類語
「小賢しい」は、「利口ぶっていて生意気であること」や「悪賢くて要領がいい様子」という意味の形容詞です。
言葉の意味をより深く理解するためには、類語や言い換えを確認することも大切です。「小賢しい」にも似た意味を持つ言葉がありますので、いくつかご紹介しましょう。
あざとい
「あざとい」は、「やり方があくどい、抜け目がない」や「思慮が浅く浅はかである」などの意味を持った言葉です。漢字では「小聡明い」とも書きますが、これは意味から来た当て字です。
辞書には掲載されていませんが、最近では「(特に女性が男性に対して)媚びたような振る舞いをすること」を意味することも多いようです。
小生意気(こなまいき)
「小生意気」は、「いかにも生意気な様子、生意気で憎らしい様子」という意味の言葉。例文としては「出会った当時の彼女はあいさつもせず、小生意気な娘だった」などです。
おこがましい
漢字では「痴がましい」あるいは「烏滸がましい」と書きます。意味は「身の程をわきまえない、生意気である様子」や「ばかげている様子」。前者が「小賢しい」に近い意味です。
ちょこざい
「(ちょっとした才能があって)小生意気な様子、またそのような人」を表す言葉です。時代劇などで「なにを、ちょこざいな!」といったせりふを聞いたことのある人も多いかもしれません。なお、漢字では「猪口才」と書きますが、この「猪口」は当て字です。
小利口(こりこう)
「小利口」の意味は「小才があり、目先のことによく気が付き抜け目がない様子」。「利口」に接頭語「小(こ)」をつけることで、ややばかにしたニュアンスを込めている成り立ちは、「小賢しい」と共通していますね。
小癪(こしゃく)
「小癪」の意味は、「言動などがなんとなく憎らしく生意気であることや、その様子」です。「彼の小癪な言いぐさには、とても腹が立った」などの形で使用します。
抜け目がない(ぬけめがない)
「抜け目がない」は「注意深くよく準備されていて、やることに抜けたところがないこと。特に自分の利益になることに関してチャンスを逃さない様子」を意味する言葉です。
狡猾(こうかつ)
「狡猾」は、「悪賢くてずるいことやその様子」を表します。「その男の狡猾なやり方には、誰もが眉をひそめた」などのかたちで使用します。
狡知(こうち)
「狡知」は、「ずる賢い知恵、悪知恵」という意味です。「奸知(かんち)」もほぼ同様の意味です。「悪知恵がよく働く」という意味の慣用句「狡知に長(た)ける」や「奸知に長ける」もよく使われます。
計算高い(けいさんだかい)
「計算高い」は、「金銭の計算に細かくてけちである」の他、「損得に敏感であること」を意味する言葉です。例文は「部長は何事にも細かく、計算高いことで有名だった」などです。
悪賢い(わるがしこい)
「悪賢い」は、「悪知恵がよく働く、ずるい」という意味の形容詞。同様の意味を持つ表現として「ずる賢い」もあります。
「小賢しい」の意味を知って正しく使おう
「小賢しい」は、「利口ぶっていて生意気であること」や「悪賢くて要領がいい様子」という意味の言葉です。
基本的に「小賢しい」はマイナスの意味を持った表現です。特にビジネスシーンでは、「気が利いている」「頭の回転が速い」「手際がいい」などの褒め言葉のつもりで使用することは厳禁です。くれぐれも「小賢しい」の誤用には注意しましょう。
また仕事の現場では、利口ぶっていて差し出がましい人や、ずる賢く振る舞っている人によく出くわすかもしれません。そんな人こそがまさに「小賢しい」のですが、面と向かって指摘すると大きなトラブルにもなりかねません。「小賢しい」は比較的よく目にする表現ではありますが、現実社会では思いの外、使い方が難しい言葉と言えそうです。
「小賢しい」はよく見聞きするわりに、取り扱いが難しい言葉でもあります。皆さんもこの記事を参考に「小賢しい」という表現を正しく使いこなしてみてください。