市井監督と言えば、前作の『台風家族』では草なぎ剛とタッグを組んだ。

「今回香取さんとご一緒して近しいものがあると感じました。お二人ともしっかり役について考えてこられると思うのですが、いざ現場に入ってカメラが回ると本能的になるというか、その場にただいてくださるんです。ずっとアイドルとして活躍していたのに、そこはすごいなと。どうしてもアイドルというのはきれいなところを見せるものじゃないですか」

2人とも「とても好きなタイプの俳優さんです」と語った市井監督は「あれだけの大スターであるのに、ちゃんと人間として生きている。普段の日常から普通の部分を大切にされているというのがにじみ出ている」と舌を巻く。

今回、香取と作品を共にして、「アイドルではない香取さん、平凡な香取さんを捉えることができたというのは、本当に感慨深かったです」と笑顔を見せると「夫婦を描く作品というのは、絶対答えが出ないんです。ところが、もがいている姿を切り取っただけでも、映画として成立する。そこが映画の豊かさだと思うんです。そんな作品の一翼を香取さん、岸井さんに担っていただけたのは、本当にありがたかったです」と感謝を述べていた。

■市井昌秀
1976年4月1日生まれ、富山県出身。劇団東京乾電池を経て、ENBUゼミナールに入学し、映画製作を学ぶ。2004年のゼミナール卒業後に制作した長編が立て続けに映画祭の賞を受賞し、注目を集める。初の長編作品となった『隼』(05)は第28回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリと技術賞、香港アジア映画祭コンペティション部門「New Talent Award」グランプリを、続く『無防備』(07)は第30回ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを、第13回釜山国際映画祭では新人監督作品コンペティション部門最高賞を受賞した。2013年には、初の商業映画『箱入り息子の恋』が公開。第54回日本映画監督協会新人賞を受賞した。ドラマ作品では、『十月十日の進化論』(15/NHK)で東京ドラマアウォード2015単発ドラマ部門優秀賞などを受賞。直近の映画作品に監督と脚本を務めた『台風家族』(19)がある。

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