渡辺明名人への挑戦権を争う第81期順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、9月21日(水)にA級3回戦の豊島将之九段―稲葉陽八段戦が行われました。結果は140手で豊島九段が勝利し、リーグ成績を2勝1敗としました。

第81期A級順位戦のリーグ表

本局は相掛かりに。後手番の豊島九段は自身が指した前例をしばらく踏襲しますが、△3一角~△5三角と、角を中央に転回させて前例から離れました。豊島九段が二枚の銀を並べて中央を手厚くしたのに対し、稲葉八段はやや薄くなった3筋から動いて金を上ずらせることで後手陣を乱します。後手陣は居玉で金銀4枚がすべて三段目以上に配置される珍形になりました。後手は金銀の威力で押さえ込めれば成功、先手はその網を破れるかどうかという展開と言えます。

94手目△4四歩から本格的に局面が動き始めました。以下の順でお互いに角金銀を取り合います。それが一段落した110手目の局面を見ると、駒の損得はほぼありませんが、金銀が玉の上部を守りつつ、先手玉への攻め駒にもなっている後手に対し、先手は自陣にある二枚の銀の働きが弱いのが辛いところで、すぐ自玉に詰めろが掛かってしまう状況です。

稲葉八段は▲5六桂の両取りから、攻防手である▲3四角を打って頑張りますが、豊島九段の116手目、△2四金がカラい決め手。先手の角を取ってしまえば後手の勝ちは動かなくなります。最後は取った角を使って、先手玉を即詰みに追い込みました。豊島九段は数日前の将棋日本シリーズでの借りを返した形にもなりました。

本局でA級は3回戦までが全て終了しました。序盤戦を終えて、2勝1敗が6名、1勝2敗が3名で並ぶという混戦の様相を呈しています。最後に誰が笑うのかは全くわかりませんが、リーグ中盤の4~6回戦で、多少の行方は見えてくるのでしょうか。棋界の最高峰を争うリーグ戦から目が離せません。

相崎修司(将棋情報局)

豊島九段は数日前の雪辱を果たす勝利で勝ち星先行(写真は第42回将棋日本シリーズ準決勝のもの 提供:日本将棋連盟)
豊島九段は数日前の雪辱を果たす勝利で勝ち星先行(写真は第42回将棋日本シリーズ準決勝のもの 提供:日本将棋連盟)