1990年代~2000年代の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代を就職氷河期世代またはロスジェネ世代といいます。2022年現在では40代になっています。そこで、この世代に注目して、平均貯蓄額や給与など、40代の現在の状況をデータで見てみたいと思います。氷河期世代は他の世代と何が違うのか、その答えを探ってみました。

  • 氷河期世代は他の世代と何が違うのか、その答えを探りました。

    ※画像はイメージ

■氷河期世代40代の貯蓄額

就職氷河期世代は、バブル崩壊後に新卒で就職活動を行った1970年~1982年生まれ、2022年時点で40歳から52歳の人たちを指します。ここでは40代と括って、現在の状況を貯蓄額から見てみましょう。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和3年)」によると、40代の平均貯蓄額は891万円、中央値は200万円となっています。年代別に見てみると次のようになります。

  • 年代別の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)/出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和3年)」をもとに筆者作成

特別40代が低いわけではなさそうです。年齢が上がっていくに従って、貯蓄が増えていくのがわかります。このデータには金融資産を保有していない世帯、つまり貯蓄がない世帯も含まれています。

40代で貯蓄がない世帯の割合は27.6%となります。3割近い世帯が貯蓄ゼロという結果です。貯蓄がない世帯の割合は20代が38.5%と一番多く、これは勤務年数が短いことから理解できますが、30代が27.3%、50代が26.3%と20代を省くと40代が一番高くなっています。

  • ■金融資産を保有していない世帯の割合/出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和3年)」をもとに筆者作成

ただし、これについても大きな差があるわけではありません。そもそも40代は住宅ローンや教育費など支出が多くなる時期にあたります。中でも教育費は子どもが大きくなって本格的にかかってくる家庭は多いでしょう。氷河期世代の影響というよりも、家計に余裕がなくなるライフステージといえるのではないでしょうか。

■氷河期世代40代の平均賃金

厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、男性の平均賃金を見てみると、40~44歳は35万7600円、45~49歳は38万2800円となっています。男性の場合、年齢とともに上がっていき55~59歳の41万3600円がピークとなります。40代に特徴は見られません。平均にすると均されてしまうため、実態が見えなくなってしまうようです。 この調査では男女の賃金格差が顕著となっています。

氷河期世代は非正規雇用が多いというイメージがありますが、総務省の「労働力調査(2021年)」によると、35~44歳の男性では正規の従業員91.1%に対し非正規の従業員8.9%、45~54歳の男性では正規の従業員91.7%に対し非正規の従業員8.3%という結果になっています。正規の従業員が9割を超えるのはこの二つの年代のみとなっており、氷河期世代が含まれるこの年代はむしろ非正規は少ないといえます。女性の場合は正規、非正規が半々の割合となるので、年代よりも男女差が大きい結果となっています。

■氷河期世代は大企業勤めが少ない

ここまで、氷河期世代が他の世代に比べて変わった点は見られませんでしたが、もう少し踏み込んだデータを見てみると、ある特徴が見られました。

15~24歳の雇用者の推移を従業員規模別で見てみると、就職氷河期に入る1993年から500人以上の大企業に勤務する者の数が急激に減っている様子がわかります。構成割合では1996年から2007年にかけては1~29人の企業よりも低い割合となっています。大企業が新規採用枠を縮小したことで、大企業への就職を諦め、規模の小さい企業に就職した人が多かったのではないでしょうか。

大企業への就職が少なかったこの世代のその後はどうなっているでしょうか。総務省の同調査から、2008年と2018年の従業員規模別の構成割合を見てみましょう。

500人以上の企業に注目して、2008年に35~44歳だった層と2018年に35~44歳だった層(2022年時点では39~48歳)の割合の変化を比較してみると、男性はこの層のみ低下しています。女性は500人以上の企業の低下は見られないものの、35~44歳の層の上昇幅が小さいことがわかります。

もう少しわかりやすいデータとして、総務省の「就業構造基本調査」から従業員規模別の年齢構成をグラフにしてみました。

2017年のデータなので、氷河期世代は35~47歳にあてはまります。他の年齢層と比較して1000人以上の大企業では割合は低く、99人以下の小規模の企業での割合が高いことがわかります。

氷河期世代は非正規雇用が多いという印象でしたが、他の世代と比較してみるとむしろ正規雇用の方が多いことがわかりました。しかし、その実情は、大企業での雇用は少なく、企業規模が小さい会社での正規雇用となっていることが推察できます。

■おわりに

氷河期世代を取り上げて、貯蓄額や収入など、他の世代と比較してみましたが顕著な傾向は見られませんでした。これは、氷河期世代といっても、成功して豊かに暮らしている人も少なくないわけで、大きな括りで語るには無理があるということでしょう。データでは表れてこないところに目を向ける必要があるようです。

就職氷河期世代は現在40代となって、より深刻な状況におかれている人は多く存在します。こうした状況を鑑みて、政府は就職氷河期世代に向けてさまざまな支援プログラムを提供しています。しかし、周知に至っていない、効果に疑問があるなど、まだまだ多くの課題を抱えているのが実情です。ただ、このような施策によって、氷河期世代に社会の目が向けられることは前進です。今後の積極的な取り組みを期待したいと思います。