サントリーは、アルミニウム圧延メーカーのUACJ、大手金属製品メーカーの東洋製罐グループとの共同で、通常のアルミ缶と比較してCO2排出量を60%削減するリサイクルアルミ材100%使用缶を実現。

これを採用した「ザ・プレミアム・モルツCO2削減缶」「同〈香る〉エールCO2削減缶」を9月6日より数量限定で全国発売。今回はオンラインで実施された記者発表会に参加した。

  • 発売中の「ザ・プレミアム・モルツCO2削減缶」「同〈香る〉エールCO2削減缶」

■販売量トータルで約43トンのCO2削減

水や農作物など自然の恵みに支えられた食品酒類総合企業として、創業以来、持続可能な社会の実現を目指してきたサントリーグループ。

2030年までにGHG排出量を自社拠点で50%削減、バリューチェーン全体で30%削減(いずれも2019年の排出量を基準)する「環境目標2030」を掲げ、容器・包装の商品設計から輸送、消費後のリサイクルまで、商品のライフサイクル全体で環境配慮を実践。

2050年までにバリューチェーン全体で、温室効果ガス(GHG)排出の実質ゼロという大きな目標の達成に向け、さまざまな取り組みをグローバルに進めている。

各生産拠点などでの省エネ技術の導入、再生可能エネルギーの活用のほか、環境負荷を低減する容器・包装の積極的な活用も大きなアプローチのひとつに位置付けており、ペットボトルではサントリー独自の「2R+B(Reduce・Recycle+Bio)」戦略などに基づき、循環型かつ脱炭素社会の実現に努めているという。

2021年植物由来原料100%ペットボトルの開発に成功。2030年までにグローバルで使用するペットボトルをリサイクル素材あるいは植物由来素材100%に切り替えることで、新たな化石由来原料の使用ゼロ実現を推進する。

「ボトル to ボトル」の水平リサイクルに取り組みにより、約60%のCO2排出量を削減。工程のさらなる効率化技術により約70%のCO2排出量を削減につながるという。

サントリーグループではこうしたGHG排出量削減目標の達成に取り組むなかで、日本国内使用量の2021年実績で、ペットボトルの約12.4万トンに次いで、使用量の大きい約7.2万トンのアルミ缶に着目。「ザ・プレミアム・モルツ CO2削減缶」「同〈香る〉エール CO2削減缶」という新たな挑戦の背景となった。

UACJと東洋製罐グループが共同で製造した、リサイクルアルミ材を100%使用した缶を、「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドに採用。約3万ケース(約70万本、容量350ml)の数量限定で発売している。

缶材由来のリサイクルアルミのみを使用し、商用化されたSOT(ステイオンタブ)缶としては世界初(2022年7月東洋製罐グループ、UACJ調べ)。

東洋製罐グループがUACJ製のアルミ材を使用して製缶する通常のアルミ缶(350ml缶)と比較してCO 2排出量を約60%削減することが可能で、約3万ケースの販売量トータルでは約43トンのCO2削減ということになるという。

■3社の技術連携で実現した世界初の試み

アルミ缶製品のサプライチェーン2社との技術連携により、国内循環可能な『水平循環向上』に向けた海外に100%依存する「新地金」なし(リサイクル100%)でも品質担保するというこの度の試み。

リサイクル材の調達と管理と100 %リサイクル缶に適した材料設計・工程設計はUACJが、リサイクルアルミ100%材に合わせた容器設計の最適化と製缶加工は東洋製罐が担った。

「すでにリサイクル地金自体は通常の製造工程の中で使われており、業界全体の認識としては50~60%ぐらいの割合で再生地金が混ぜられています。そのなかで今回は100%にこだわって挑戦したというかたちです」とは、サントリーホールディングスの藤原正明氏。プレゼン後の質疑応答に応じた。

サントリーは最終製品化における充填工程での品質確認と、販売等による流通と取り組み認知の獲得を担当しており、技術的に難しかった点を「アルミ缶は缶胴と缶蓋で材質が厳密には少し違うところがあり、リサイクルする上で大きな課題となりました」と紹介。

今回の2商品の販売価格は従来と同価格での提供となるが、通常のアルミ缶と比べてコストは「正直申し上げると上がるのは間違いない」とコメント。「プレミアムモルツ」ブランドでの100%缶材由来のアルミ缶の定番化、2商品以外への展開など今後の予定については次のように語った。

「お客様の用途、飲用シーンにおいて適切な容器で提供していくことが我々のミッションですので、現時点では約束をなかなかできないところがあるかと思います。今後の量産については全体の伸長を見ながら、お客様の受け止めなど総合的に評価していくことになります。今後の課題のポイントとしては量産するスピードに少し制限があるので、この辺りをどう改善していくかというところです。今回の製品がお客様、社会の受け入れが非常によろしければ、量産に向けてなんらかの対応をとれる可能性はあると思っています」