朝ドラの現場で多くのことを学んだという前田。

「最初『ちむどんどん』の現場に入ったときは、天下の朝ドラの舞台だと思いすぎて自分自身にかなりプレッシャーをかけてしまったんです。肩に力が入りすぎちゃって空回りも多くて……。でも数カ月経って『このままじゃ多分持たないな』と感じて、役との距離感をしっかり保つことを意識したんです。そこから熱さは忘れずに、でも客観的に役に対して考えられるようになりました。ほかの現場でも少し見え方が変わってきたので、とても大きなことを得られたのかなと思っています」。

『ちむどんどん』の放送中に、前田の代表作の一つと言っても過言ではない「HiGH&LOW」シリーズの最新作映画『HiGH&LOW THE WORST X』の公開も迎える(9月9日公開)。本シリーズで前田は「漆黒の凶悪高校」と呼ばれる鬼邪高校でも最強の一人である轟洋介を演じる。『ちむどんどん』の智とは真逆とも言っていいほどのふり幅だが、2019年公開の前作『HiGH&LOW THE WORST』でも、鬼邪高校初代番長・村山良樹を演じた山田裕貴が、同時期に連続テレビ小説『なつぞら』では爽やかな好青年を演じ、そのギャップが話題になった。

「どちらも気づいてもらえるといいですね。どうやって伝えるといいのか考えなければいけませんね。でも山田さんは今回の『ちむどんんどん』にも出演されていますが、先日たまたま楽屋がご一緒のときがあって、質問攻めにしてしまったんです。熱い話もしていただいて、すごく刺激を受けましたし『裕貴くんすごい!』って驚くことが多かったです」

■30代は「より大切だと思えることに集中していきたい」

子役時代から芸能活動を行っている前田だが、「お芝居でご飯を食べて行きたい」と思えたのは16歳のときだったという。

「『ひぐらしのなく頃に』という映画で主演をやらせていただいたのですが、そのとき現場でテイクを何度も繰り返すような経験をして、お芝居というものの深さみたいなものに目覚めました。そのとき将来役者一本でやれたらいいなと思ったんです」。

そこから数々の映画やドラマに出演し、キャリアを重ねてきた前田。そして念願だったという朝ドラの現場を経て、いまどんな思いがいま心に宿っているのだろうか――。

「『ちむどんどん』で客観的な目線を意識するようになって、より自分の強みや弱点みたいなものが見えてきた気がします。30代はそのバランスを考えながら、仕事や友達との距離感をしっかり保っていきたいですね。この2年間で写真集もそうですが、オンラインサロンやブランド開発など、役者以外のこともたくさん経験させてもらいました。そのなかで、より自分にとって大切だと思えることに集中して時間をさけるような10年にしていきたいですね。しっかりゆとりをもって、智のように突っ走りすぎないように(笑)」

■前田公輝
1991年4月3日生まれ、神奈川県出身。6歳から子役として活躍し、2003~06年にはNHK教育の『天才てれびくんMAX』にレギュラー出演。2008年、映画『ひぐらしのなく頃に』で映画初主演して以降、多くのドラマや映画に出演。2019年は映画『HiGH&LOW THE WORST』やドラマ『貴族誕生 -PRINCE OF LEGEND-』で話題に。現在NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で、ヒロインの幼なじみ・砂川智役を好演中。9月9日に映画『HiGH&LOW THE WORST X』の公開を控える。

スタイリスト:千葉良(AVGVST) ヘアメイク:松田蓉子